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ゲームのようにいかないけれど
京都への旅
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Coming soon!
東京駅から出発する高速バス、京都行きは午後11時に出発しました。
京都へ行く方法は、飛行機で伊丹空港へ行ってそこから電車で行く方法、新幹線で行く方法などいろいろありましたが、夜遅い時間の高速バスが一番安かったです。
大学生のシャルマは、できるだけ安くしようと思ってバスを選びました。
金曜日に大学の授業が終わった後、シャルマはひろ子さんと一緒に東京駅まで行きました。高速バスに乗って、土曜日の朝に京都に着いて、京都の紅葉を見て、土曜日の夜、京都からまた高速バスに乗って、日曜日の朝に東京駅に到着する。それが今回の旅のスケジュールです。ちょっと忙しいけれど、高速バスの中で寝られるし、安く京都へ行けるし、一番いい方法だとシャルマは考えました。
目的地は京都の嵐山です。
インターネットで調べたら、紅葉で有名な場所と書いてありました。
「ひろ子さん、さむくない?」
「いいえ、大丈夫。たくさん着てきたから。」
出発するとバスの中はすぐにくらくなりました。
夜のバスはなれていないので、シャルマはなかなか寝られませんでしたが、周りのバスに乗っているお客さんの寝ている息が聞こえてくると、シャルマも寝てしまいました。
朝、目がさめると、もう京都駅でした。
駅前のバス停に高速バスが着きました。
朝早い時間から営業しているラーメン屋があり、そこで朝ご飯を食べました。
ひろ子さんは少しねむそうな顔で、
「シャルマさん、寝られた?」
とシャルマに聞きました。
「うん、思ったよりもゆっくり寝られた。」
シャルマは答えました。
「このラーメン、しょうゆ味だけど大丈夫?ちょっと塩の味が強いね。」
心配そうにひろ子さんが聞きました。
「大丈夫。おいしいよ。これが京都のラーメンなんだね。」
ひろ子さんは
「京都のラーメンもいろいろあるみたいだけれど、ここのラーメン屋は、ずいぶん前から営業しているみたいだよ。」
と言いました。
「へえ、京都だから歴史があるラーメン屋なんだね。」
シャルマがそう答えると、二人は顔をおたがいに見て笑いました。
ラーメン屋を出ると、二人はJR京都駅へ向かいました。
JR 嵯峨野線(電車の名前)で嵯峨嵐山駅まで行くと、朝の早い時間なのに、もう旅行にきた客がたくさんいて、二人はびっくりしました。
二人は駅から渡月橋(橋の名前)をめざして、歩き始めました。
ひろ子さんが言いました。
「この橋ができたのは834~848年ごろなんだって。だから、1200年くらい前からこの橋があるんだね。」
「そんなに前からあるんだ。」
シャルマはびっくりして言いました。
「やっぱり、京都の歴史はすごいね。」
ゆっくりと流れる大きな川に渡月橋はありました。
橋に着くと、ひろ子さんは
「あっ。」
と短く言って、その後は何も話しませんでした。
シャルマも一言も話さないで、ただ渡月橋からの景色を見つめていました。
「すごい。」
シャルマは思いました。
渡月橋から見る紅葉は言葉にできないほどのうつくしさでした。
どのくらい時間が経ったかわかりません。
ひろ子さんが、
「そろそろ行こうか。」
と言いました。
トロッコ列車の時間になりそうだからでした。
JR 嵯峨嵐山駅までもどると、そこから歩いて1分くらいに、トロッコ列車の駅がありました。
シャルマはひろ子さんに聞きました。
「トロッコ列車って何?」
京都へ来る前にシャルマもいろいろしらべたんですが、わからないこともたくさんありました。トロッコ列車もその一つでした
「ふつうの列車やトラックが入れないようなところに、にもつを運ぶために作られた小さい列車らしいよ。むかしは荷物を運んでたみたいだけれど、今は観光用に使っているみたい。」
とひろ子さんが教えてくれました。
トロッコ列車も観光客でいっぱいでした。
ゴトン、ゴトンと大きな音を立てて、トロッコ列車が走り始めました。
ちょっと速い自転車くらいの速さです。
紅葉の中をトロッコ列車が走っていきます。
燃えるような色の紅葉が、列車のまどいっぱいに広がっています。
特に景色がうつくしい場所では、速度をおとして走るので、ゆっくりと景色を楽しむことができました。
二人はまた何も話さなくなりました。
トロッコ列車には25分くらい乗っていましたが、時間をわすれて景色< rt>けしきを見ていました。
列車をおりると、ひろ子さんが言いました。
「本当にきれいなものを見ると、何も言えなくなるんだね。」
シャルマはうなずいて
「本当だね。」
と言いました。
それから二人は、船にのって嵐山に戻りました。
「保津川下りって言うんだよ。この川は保津川っていうの。」
ひろ子さんが教えてくれました。
保津川下りは、約 16 ㎞の谷の川の流れを約 2 時間で下る刺激的な舟下りです。
船には船頭さん(船をこぐ人)が乗っていて、船頭が長い棒を使って、せまい岩と岩の間を船がぶつからないように動かしてゆきます
ところどころに流れがはげしいところがあって水がはねるのをよけるために防水シートを持って自分でガードします。船頭さんは、
「ここは流れがはげしいから水がかかるよ。」
と教えてくれます。
「わあっ。」
二人は大きい声をあげて、水がかからないようにがんばりました。
でも、船が着くと、かみにも顔にも水がかかっていました。
「シャルマさん、顔もシャツもぬれている。」
「ひろ子さんのかみもすごい。」
二人は顔を見て、笑いました。
それから二人は京都駅に戻って、近くのお寺(宗教のための建物)を見て回りました。
シャルマの生まれたタミル・ナードゥ州にも、ヒンズー教の古いお寺がたくさんあります。でも、京都のお寺とは全然違います。ヒンズー教のお寺は石で作ったものが多いですが、京都のお寺は木で作られたものが多いです。また、ヒンズー教のお寺にはすごく色がきれいでりっぱな像が多いですが、京都の仏像は色をたくさん使っていません。木を彫っただけで何も色を付けていない仏像もありました。形もぜんぜんちがいました。
インドの文化を勉強しているひろ子さんは、そんなちがいにとても興味があるようで、シャルマにいろいろ質問しました。
二人で、そんなことを話しながら京都の町を歩いているうちに、すぐに時間がすぎて、帰りの高速バスの時間になってしまいました。
バスの中で飲むペットボトルのお茶とサンドイッチを買って、二人はバスに乗りました。
京都へ行く方法は、飛行機で伊丹空港へ行ってそこから電車で行く方法、新幹線で行く方法などいろいろありましたが、夜遅い時間の高速バスが一番安かったです。
大学生のシャルマは、できるだけ安くしようと思ってバスを選びました。
金曜日に大学の授業が終わった後、シャルマはひろ子さんと一緒に東京駅まで行きました。高速バスに乗って、土曜日の朝に京都に着いて、京都の紅葉を見て、土曜日の夜、京都からまた高速バスに乗って、日曜日の朝に東京駅に到着する。それが今回の旅のスケジュールです。ちょっと忙しいけれど、高速バスの中で寝られるし、安く京都へ行けるし、一番いい方法だとシャルマは考えました。
目的地は京都の嵐山です。
インターネットで調べたら、紅葉で有名な場所と書いてありました。
「ひろ子さん、さむくない?」
「いいえ、大丈夫。たくさん着てきたから。」
出発するとバスの中はすぐにくらくなりました。
夜のバスはなれていないので、シャルマはなかなか寝られませんでしたが、周りのバスに乗っているお客さんの寝ている息が聞こえてくると、シャルマも寝てしまいました。
朝、目がさめると、もう京都駅でした。
駅前のバス停に高速バスが着きました。
朝早い時間から営業しているラーメン屋があり、そこで朝ご飯を食べました。
ひろ子さんは少しねむそうな顔で、
「シャルマさん、寝られた?」
とシャルマに聞きました。
「うん、思ったよりもゆっくり寝られた。」
シャルマは答えました。
「このラーメン、しょうゆ味だけど大丈夫?ちょっと塩の味が強いね。」
心配そうにひろ子さんが聞きました。
「大丈夫。おいしいよ。これが京都のラーメンなんだね。」
ひろ子さんは
「京都のラーメンもいろいろあるみたいだけれど、ここのラーメン屋は、ずいぶん前から営業しているみたいだよ。」
と言いました。
「へえ、京都だから歴史があるラーメン屋なんだね。」
シャルマがそう答えると、二人は顔をおたがいに見て笑いました。
ラーメン屋を出ると、二人はJR京都駅へ向かいました。
JR 嵯峨野線(電車の名前)で嵯峨嵐山駅まで行くと、朝の早い時間なのに、もう旅行にきた客がたくさんいて、二人はびっくりしました。
二人は駅から渡月橋(橋の名前)をめざして、歩き始めました。
ひろ子さんが言いました。
「この橋ができたのは834~848年ごろなんだって。だから、1200年くらい前からこの橋があるんだね。」
「そんなに前からあるんだ。」
シャルマはびっくりして言いました。
「やっぱり、京都の歴史はすごいね。」
ゆっくりと流れる大きな川に渡月橋はありました。
橋に着くと、ひろ子さんは
「あっ。」
と短く言って、その後は何も話しませんでした。
シャルマも一言も話さないで、ただ渡月橋からの景色を見つめていました。
「すごい。」
シャルマは思いました。
渡月橋から見る紅葉は言葉にできないほどのうつくしさでした。
どのくらい時間が経ったかわかりません。
ひろ子さんが、
「そろそろ行こうか。」
と言いました。
トロッコ列車の時間になりそうだからでした。
JR 嵯峨嵐山駅までもどると、そこから歩いて1分くらいに、トロッコ列車の駅がありました。
シャルマはひろ子さんに聞きました。
「トロッコ列車って何?」
京都へ来る前にシャルマもいろいろしらべたんですが、わからないこともたくさんありました。トロッコ列車もその一つでした
「ふつうの列車やトラックが入れないようなところに、にもつを運ぶために作られた小さい列車らしいよ。むかしは荷物を運んでたみたいだけれど、今は観光用に使っているみたい。」
とひろ子さんが教えてくれました。
トロッコ列車も観光客でいっぱいでした。
ゴトン、ゴトンと大きな音を立てて、トロッコ列車が走り始めました。
ちょっと速い自転車くらいの速さです。
紅葉の中をトロッコ列車が走っていきます。
燃えるような色の紅葉が、列車のまどいっぱいに広がっています。
特に景色がうつくしい場所では、速度をおとして走るので、ゆっくりと景色を楽しむことができました。
二人はまた何も話さなくなりました。
トロッコ列車には25分くらい乗っていましたが、時間をわすれて景色< rt>けしきを見ていました。
列車をおりると、ひろ子さんが言いました。
「本当にきれいなものを見ると、何も言えなくなるんだね。」
シャルマはうなずいて
「本当だね。」
と言いました。
それから二人は、船にのって嵐山に戻りました。
「保津川下りって言うんだよ。この川は保津川っていうの。」
ひろ子さんが教えてくれました。
保津川下りは、約 16 ㎞の谷の川の流れを約 2 時間で下る刺激的な舟下りです。
船には船頭さん(船をこぐ人)が乗っていて、船頭が長い棒を使って、せまい岩と岩の間を船がぶつからないように動かしてゆきます
ところどころに流れがはげしいところがあって水がはねるのをよけるために防水シートを持って自分でガードします。船頭さんは、
「ここは流れがはげしいから水がかかるよ。」
と教えてくれます。
「わあっ。」
二人は大きい声をあげて、水がかからないようにがんばりました。
でも、船が着くと、かみにも顔にも水がかかっていました。
「シャルマさん、顔もシャツもぬれている。」
「ひろ子さんのかみもすごい。」
二人は顔を見て、笑いました。
それから二人は京都駅に戻って、近くのお寺(宗教のための建物)を見て回りました。
シャルマの生まれたタミル・ナードゥ州にも、ヒンズー教の古いお寺がたくさんあります。でも、京都のお寺とは全然違います。ヒンズー教のお寺は石で作ったものが多いですが、京都のお寺は木で作られたものが多いです。また、ヒンズー教のお寺にはすごく色がきれいでりっぱな像が多いですが、京都の仏像は色をたくさん使っていません。木を彫っただけで何も色を付けていない仏像もありました。形もぜんぜんちがいました。
インドの文化を勉強しているひろ子さんは、そんなちがいにとても興味があるようで、シャルマにいろいろ質問しました。
二人で、そんなことを話しながら京都の町を歩いているうちに、すぐに時間がすぎて、帰りの高速バスの時間になってしまいました。
バスの中で飲むペットボトルのお茶とサンドイッチを買って、二人はバスに乗りました。
東京駅発の高速バス、京都行きは午後11時に出発しました。
京都への行き方は、飛行機で伊丹空港へ行ってそこから電車で行く行き方、新幹線で行く行き方などいろいろありましたが、深夜の高速バスが一番安かったです。
大学生のシャルマは、できるだけ節約しようと思って高速バスを選びました。
金曜日に大学の授業が終わった後、シャルマはひろ子さんと一緒に東京駅まで行きました。高速バスに乗って、土曜日の朝に京都に着いて、京都の紅葉を見て、土曜日の夜、京都からまた高速バスに乗って、日曜日の朝に東京駅に到着する。それが今回の旅のスケジュールです。ちょっと忙しいけど、高速バスの中で寝られるし、安く京都へ行けるし、一番いい方法だとシャルマは考えました。
行先は京都の嵐山です。
インターネットで調べたら、紅葉の名所と書いてありました。
「ひろ子さん、寒くない?」
「ううん、大丈夫。たくさん着てきたから。」
出発するとバスの中はすぐに暗くなりました。
夜のバスは慣れていないので、シャルマはなかなか寝られませんでしたが、周りの乗客の寝息が聞こえてくると、シャルマも寝てしまいました。
朝、目覚めると、もう京都駅でした。
駅前のバス停に高速バスが到着しました。
早朝から開店しているラーメン屋があり、そこで朝ご飯を食べました。
ひろ子さんは少し眠そうな顔で、
「シャルマさん、寝られた?」
とシャルマに聞きました。
「うん、思ったよりもゆっくり寝られた。」
シャルマは答えました。
「このラーメン、しょうゆ味だけど大丈夫?ちょっとしょっぱいね。」
心配そうにひろ子さんが聞きました。
「大丈夫。おいしいよ。これが京都のラーメンなんだね。」
ひろ子さんは
「京都のラーメンもいろいろあるみたいだけど、ここのラーメン屋は、ずいぶん前から営業しているみたいだよ。」
と言いました。
「へえ、京都だから歴史があるラーメン屋なんだね。」
シャルマがそう答えると、二人は顔を見合わせて笑いました。
ラーメン屋を出ると、二人はJR京都駅へ向かいました。
JR嵯峨野線で嵯峨嵐山駅まで行くと、朝早いのに、もう観光客がたくさんいて、二人はびっくりしました。
二人は駅から渡月橋を目指して、歩き始めました。
ひろ子さんが言いました。
「この橋ができたのは、橋ができたのは834〜848年頃なんだって。だから、1200年くらい前からこの橋があるんだね。」
「そんなに前からあるんだ。」
シャルマはびっくりして言いました。
「やっぱり、京都の歴史ってすごいね。」
ゆったりと流れる大きな川に渡月橋はありました。
橋に着くと、ひろ子さんは
「あっ。」
と短く言って、その後は何も話しませんでした。
シャルマも一言も話さないで、ただただ渡月橋からの眺めを見つめていました。
「すごい。」
シャルマは思いました。
渡月橋から見る紅葉は言葉では言い表せないくらいの美しさでした。
どのくらい時間がたったか分かりません。
ひろ子さんが、
「そろそろ行こうか。」
と言いました。
トロッコ列車の時間が近づいていたからでした。
JR嵯峨嵐山駅まで戻ると、そこから歩いて1分くらいに、トロッコ列車の駅がありました。
シャルマはひろ子さんに聞きました。
「トロッコ列車って何?」
京都へ来る前にシャルマもいろいろ調べたんですが、わからないこともたくさんありました。トロッコ列車もその一つでした
「普通の列車やトラックが入れないようなところに、荷物を運ぶために作られた小型の列車らしいよ。昔は荷物を運んでたみたいだけど、今は観光用に使っているみたい。」
とひろ子さんが教えてくれました。
トロッコ列車も観光客でいっぱいでした。
ゴトン、ゴトンと大きな音を立てて、トロッコ列車が走り始めました。
ちょっと速い自転車くらいの速さです。
紅葉の中をトロッコ列車が走っていきます。
燃えるように色づいた紅葉が、列車の窓いっぱいに広がっています。
特に景色が美しい場所では、速度をおとして走るので、ゆっくりと景色を楽しむことができました。
二人はまた何も話さなくなりました。
トロッコ列車には25分くらい乗っていましたが、時間を忘れて景色を眺めていました。
列車を降りると、ひろ子さんが言いました。
「本当にきれいなものを見ると、何も言えなくなるんだね。」
シャルマは頷いて
「本当だね。」
と言いました。
それから二人は、船に乗って嵐山に戻りました。
「保津川下りって言うんだよ。この川は保津川っていうの。」
ひろ子さんが教えてくれました。
保津川下りは、約 16 ㎞の渓流を約 2 時間で下るスリル満点の舟下りです。
船には船頭さんが乗っていて、船頭が長い棒を使って、狭い岩と岩の間をすり抜けてゆきます
所々に急流があって水しぶきをよけるために防水シートを持って自分でガードします。船頭さんは、
「ここは流れが激しいから水がかかるよ。」
と教えてくれます。
「わあっ。」
二人は大きい声をあげて、水がかからないように頑張りました。
でも、船が到着すると、髪にも顔にも水がかかっていました。
「シャルマさん、顔もシャツも濡れてる。」
「ひろ子さんの髪もすごい。」
二人は顔を見合わせて、笑いました。
それから二人は京都駅に戻って、近くのお寺を見て回りました。
シャルマの生まれたタミル・ナードゥ州にも、ヒンズー教の古いお寺がたくさんあります。でも、京都のお寺とは全然違います。ヒンズー教のお寺は石で作ったものが多いですが、京都のお寺は木で作られたものが多いです。また、ヒンズー教のお寺にはすごく色鮮やかで立派な像が多いですが、京都の仏像は色をたくさん使っていません。木を彫っただけで何も色を付けていない仏像もありました。形も全然違いました。
インドの文化を勉強しているひろ子さんは、そんな違いにとても興味があるみたいで、シャルマにいろいろ質問しました。
二人で、そんなことを話しながら京都の町を歩いているうちに、あっという間に時間が過ぎて、帰りの高速バスの時間になってしまいました。
バスの中で飲むペットボトルのお茶とサンドイッチを買って、二人はバスに乗り込みました。
京都への行き方は、飛行機で伊丹空港へ行ってそこから電車で行く行き方、新幹線で行く行き方などいろいろありましたが、深夜の高速バスが一番安かったです。
大学生のシャルマは、できるだけ節約しようと思って高速バスを選びました。
金曜日に大学の授業が終わった後、シャルマはひろ子さんと一緒に東京駅まで行きました。高速バスに乗って、土曜日の朝に京都に着いて、京都の紅葉を見て、土曜日の夜、京都からまた高速バスに乗って、日曜日の朝に東京駅に到着する。それが今回の旅のスケジュールです。ちょっと忙しいけど、高速バスの中で寝られるし、安く京都へ行けるし、一番いい方法だとシャルマは考えました。
行先は京都の嵐山です。
インターネットで調べたら、紅葉の名所と書いてありました。
「ひろ子さん、寒くない?」
「ううん、大丈夫。たくさん着てきたから。」
出発するとバスの中はすぐに暗くなりました。
夜のバスは慣れていないので、シャルマはなかなか寝られませんでしたが、周りの乗客の寝息が聞こえてくると、シャルマも寝てしまいました。
朝、目覚めると、もう京都駅でした。
駅前のバス停に高速バスが到着しました。
早朝から開店しているラーメン屋があり、そこで朝ご飯を食べました。
ひろ子さんは少し眠そうな顔で、
「シャルマさん、寝られた?」
とシャルマに聞きました。
「うん、思ったよりもゆっくり寝られた。」
シャルマは答えました。
「このラーメン、しょうゆ味だけど大丈夫?ちょっとしょっぱいね。」
心配そうにひろ子さんが聞きました。
「大丈夫。おいしいよ。これが京都のラーメンなんだね。」
ひろ子さんは
「京都のラーメンもいろいろあるみたいだけど、ここのラーメン屋は、ずいぶん前から営業しているみたいだよ。」
と言いました。
「へえ、京都だから歴史があるラーメン屋なんだね。」
シャルマがそう答えると、二人は顔を見合わせて笑いました。
ラーメン屋を出ると、二人はJR京都駅へ向かいました。
JR嵯峨野線で嵯峨嵐山駅まで行くと、朝早いのに、もう観光客がたくさんいて、二人はびっくりしました。
二人は駅から渡月橋を目指して、歩き始めました。
ひろ子さんが言いました。
「この橋ができたのは、橋ができたのは834〜848年頃なんだって。だから、1200年くらい前からこの橋があるんだね。」
「そんなに前からあるんだ。」
シャルマはびっくりして言いました。
「やっぱり、京都の歴史ってすごいね。」
ゆったりと流れる大きな川に渡月橋はありました。
橋に着くと、ひろ子さんは
「あっ。」
と短く言って、その後は何も話しませんでした。
シャルマも一言も話さないで、ただただ渡月橋からの眺めを見つめていました。
「すごい。」
シャルマは思いました。
渡月橋から見る紅葉は言葉では言い表せないくらいの美しさでした。
どのくらい時間がたったか分かりません。
ひろ子さんが、
「そろそろ行こうか。」
と言いました。
トロッコ列車の時間が近づいていたからでした。
JR嵯峨嵐山駅まで戻ると、そこから歩いて1分くらいに、トロッコ列車の駅がありました。
シャルマはひろ子さんに聞きました。
「トロッコ列車って何?」
京都へ来る前にシャルマもいろいろ調べたんですが、わからないこともたくさんありました。トロッコ列車もその一つでした
「普通の列車やトラックが入れないようなところに、荷物を運ぶために作られた小型の列車らしいよ。昔は荷物を運んでたみたいだけど、今は観光用に使っているみたい。」
とひろ子さんが教えてくれました。
トロッコ列車も観光客でいっぱいでした。
ゴトン、ゴトンと大きな音を立てて、トロッコ列車が走り始めました。
ちょっと速い自転車くらいの速さです。
紅葉の中をトロッコ列車が走っていきます。
燃えるように色づいた紅葉が、列車の窓いっぱいに広がっています。
特に景色が美しい場所では、速度をおとして走るので、ゆっくりと景色を楽しむことができました。
二人はまた何も話さなくなりました。
トロッコ列車には25分くらい乗っていましたが、時間を忘れて景色を眺めていました。
列車を降りると、ひろ子さんが言いました。
「本当にきれいなものを見ると、何も言えなくなるんだね。」
シャルマは頷いて
「本当だね。」
と言いました。
それから二人は、船に乗って嵐山に戻りました。
「保津川下りって言うんだよ。この川は保津川っていうの。」
ひろ子さんが教えてくれました。
保津川下りは、約 16 ㎞の渓流を約 2 時間で下るスリル満点の舟下りです。
船には船頭さんが乗っていて、船頭が長い棒を使って、狭い岩と岩の間をすり抜けてゆきます
所々に急流があって水しぶきをよけるために防水シートを持って自分でガードします。船頭さんは、
「ここは流れが激しいから水がかかるよ。」
と教えてくれます。
「わあっ。」
二人は大きい声をあげて、水がかからないように頑張りました。
でも、船が到着すると、髪にも顔にも水がかかっていました。
「シャルマさん、顔もシャツも濡れてる。」
「ひろ子さんの髪もすごい。」
二人は顔を見合わせて、笑いました。
それから二人は京都駅に戻って、近くのお寺を見て回りました。
シャルマの生まれたタミル・ナードゥ州にも、ヒンズー教の古いお寺がたくさんあります。でも、京都のお寺とは全然違います。ヒンズー教のお寺は石で作ったものが多いですが、京都のお寺は木で作られたものが多いです。また、ヒンズー教のお寺にはすごく色鮮やかで立派な像が多いですが、京都の仏像は色をたくさん使っていません。木を彫っただけで何も色を付けていない仏像もありました。形も全然違いました。
インドの文化を勉強しているひろ子さんは、そんな違いにとても興味があるみたいで、シャルマにいろいろ質問しました。
二人で、そんなことを話しながら京都の町を歩いているうちに、あっという間に時間が過ぎて、帰りの高速バスの時間になってしまいました。
バスの中で飲むペットボトルのお茶とサンドイッチを買って、二人はバスに乗り込みました。