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ゲームのようにいかないけれど
ひろ子さんの病気
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Coming soon!
いつものように、シャルマは大学から帰るとゲームを始めました。最近、シャルマが熱中しているのは、恋愛ロールプレイングゲーム(Love Role-Playing Game)です。
恋愛の相手のキャラクターは自分で選ぶことができます。ゲームの中にはいろいろな場面やイベントがあります。そんな場面で自分がどんなことをするかで、キャラクターとの関係や物語がどのように進むかが変わります。自分がどう行動するか、どんな行動を選ぶかによって物語の最後が変わります。恋がうまくいったり、うまくいかなかったりします。
ゲームから流れるすばらしい音楽を聞きながら、うつくしい画面を前にゲームをつづけました。
その時、ゲームでとても大切な選択をしなければならない時に、電話がかかってきました。
ゲームに熱中していたシャルマは、電話が鳴っているのに気が付きませんでした。
シャルマが選んだキャラクターは、ひろ子さんにとても似ていていました。かみが長くて背が高くて、目が少し大きくて、かわいいキャラクターでした。だから、どうしてもこのゲームは成功したかったんです。
大切な選択が終わると、シャルマは休んでコーヒーを飲みました。
今、何時かなと思って、スマートフォンを見ると、電話がかかってきたことがわかる赤いランプがついていました。
4件もあったので、誰だろう?と思って見てみると、全部ひろ子さんからでした。
その時、シャルマは思い出しました。今日はひろ子さんとインドの食事の材料を売っている店に一緒に行く日だったんです。大学の近くの駅で、ひろ子さんと待ち合わせをしていました。
チャパティの粉とダールの豆がもう少なくなったので、一緒に買い物に行こうとひろ子さんと約束していました。ゲームに夢中になっていたシャルマは、すっかりその約束を忘れていました。約束の時間から、もう3時間もたっていました。
シャルマはすぐにひろ子さんに電話をかけました。でも、ひろ子さんは電話に出ませんでした。
もう一度、かけてみましたが、また出ません。
30分後、一時間後にまたかけてみましたが、ひろ子さんは電話に出ませんでした。
シャルマは部屋の外を見ました。外は雨がふっていました。
シャルマは部屋を急いで出ました。そして雨の中を歩いて、ひろ子さんのアパートへ向かいました。30分くらい歩いてひろ子さんのアパートの前に着いて、ひろ子さんの部屋がある2階を見上げると、ひろ子さんの部屋の電気は消えていました。
また、30分歩いて、シャルマは自分の部屋に戻りました。そして、ため息をつきました。
「どうしよう…。」
「ひろ子さんは怒っているだろうな。約束したのに忘れたんだから…。」
約束の時間にいつも5分とか10分とか遅れるシャルマに、ひろ子さんはいつも言いました。
「日本人は時間にきびしい人が多いから、気をつけてね。」
その時はいつも、
「すみません。次は時間に遅れないようにします。」
とあやまりました。
「何度も時間に遅れる人はきらわれてしまうよ。」
そう何回言われても、シャルマの遅刻のくせは、なかなかなおりませんでした。
何度遅れても、ひろ子さんは
「また遅刻!!仕方ないな。」
と一度は怒るのですが、すぐに機嫌を直してくれました。
しかし、今日は秋の冷たい雨の中で長い間待たせてしまったんです。
「今度こそ、許してくれないかもしれない。」
そう思うと、シャルマはその夜、寝られませんでした。
次の日、朝はやくから大学へ行きました。
大学で、いつもひろ子さんが勉強している教室や、時々昼ご飯を一緒に食べる食堂へ行きました。
ひろ子さんに会いたかったんです。そして、あやまりたかったんです。
でも、大学の中のどこへ行っても、ひろ子さんはいませんでした。
自分の部屋に戻ると、シャルマはまた、ひろ子さんに電話をかけてみました。
でも、ひろ子さんは電話に出ませんでした。
「待っている間か帰っている時に交通事故にあったのかもしれない。」
「悪い人にどこかへつれていかれたのかもしれない。」
悪いことばかり考えました。
心配で、心配で毎日あまり寝られない日が続きました。
ひろ子さんに会えないままで4日が経ちました。
その間、シャルマは一度もゲームをしませんでした。
こんなに長い間、ゲームをしなかったのは、子供の時から初めてでした。
それくらいシャルマはひろ子さんを心配していたんです。
ひろ子さんから電話があったのは、約束の日から5日後でした。
「何度も電話をしてくれたのに出られなくてごめんなさい。」
ひろ子さんの声は、いつもより小さくて、元気がありませんでした。
「かぜをひいてしまって、熱があってずっと寝ていたの。」
シャルマは
「ぼくのせいだ。ぼくが雨の中をずっと待たせたから…。」
そう思いました。
「ぼくの方こそごめん。約束の時間に遅れて…。それでひろ子さん、かぜをひいちゃったんじゃないんですか?」
「ううん、最近、レポートの宿題が多くて、少し寝る時間が少なかったんだ。それで、あまり体の調子がよくなかったの。だからシャルマさんのせいじゃないわ。」
「元気になったら、また会おうね。」
そう言って、ひろ子さんは電話を切りました。
シャルマは思いました。
「やっぱり、ぼくのせいだ。ぼくがゲームをしていなかったら…、時間をしっかり守っていたら、ひろ子さんがかぜでずっと寝ていることはなかったんだ。」
なみだが出てきました。
シャルマは泣いていました。
それから1週間後、シャルマはひろ子さんに会いました。
「久しぶりね。」
ひろ子さんは元気な声で言いました。ひろ子さんの顔色はいつもの通りでしたが、少しやせていました。
「シャルマさん、少しやせたんじゃない?」
「ひろ子さんこそ…。かぜはもう大丈夫なんですか?」
「治るまでだいぶかかったけれど、もう大丈夫。食欲も出てきたし、せきももう出ないし。」
そして、シャルマはひろ子さんと一緒にチャパティの粉とダールの豆を買いに行きました。
シャルマもあまり食べる気分ではなくて、チャパティの粉もダールの豆もあまり減らなかったんです。
買い物の後、いつもはひろ子さんの部屋でインドの料理を作るんですが、ひろ子さんは
「かぜで寝ていたから、部屋のそうじをあまりしていないの。あまり部屋がきれいじゃないから今日は部屋に来ないで。」
と言いました。
ひろ子さんと別れた後、部屋に戻ったシャルマは一人でチャパティを焼いて、ダールと一緒に食べました。
久しぶりにゆっくりと食べることができました。
何より、ひろ子さんとまた話すことができて安心したのかもしれません。
食後にインドの紅茶、チャイを飲みながらシャルマは考えました。
「ひろ子さんをもっと大切にしよう。」
それから1週間後、ひろ子さんの部屋でインド料理を食べている時にシャルマは、また聞いてみました。
「ひろ子さん、今、どこか行きたいところがある?」
ひろ子さんはしばらく考えていました。そして、答えました。
「うーん。インドって言いたいけれど、今はあまり調子が良くないから、日本かな。今は、近くが良いからね。私、あたたかい沖縄(日本の場所の名前)でそだったから、紅葉って見たことないの。だから、紅葉をみてみたいかな。」
シャルマは「紅葉」という言葉を初めて聞きました。
そして、その日に部屋に帰って、すぐにしらべてみました。
Googleで調べると「紅葉」は“autumn leaves、autumn foliage、autumn colors、fall leaves、fall foliage、fall colors”と書いてありました。
意味があまりよく分からなかったのですが、どうも秋になってすずしくなると、木についた葉の色が赤や黄色に変わることを「紅葉」というみたいでした。
「紅葉」はシャルマが住んでいたインドのタミル・ナードゥ州でも見たことがありませんでした。
「木についた葉の色が変わることが、どうしてそんなにおもしろいんだろう。どうしてそんなに見たいんだろう。」
シャルマはそう思いましたが、インターネットで京都(日本の場所の名前)行きの安いチケットを探し始めました。
シャルマは、どうしてもひろ子さんに「ごめんなさい。」という気持ちをあらわしたかったんです。そのために、ひろ子さんの見たい「紅葉」を見に、京都へつれていきたいと思いました。
恋愛の相手のキャラクターは自分で選ぶことができます。ゲームの中にはいろいろな場面やイベントがあります。そんな場面で自分がどんなことをするかで、キャラクターとの関係や物語がどのように進むかが変わります。自分がどう行動するか、どんな行動を選ぶかによって物語の最後が変わります。恋がうまくいったり、うまくいかなかったりします。
ゲームから流れるすばらしい音楽を聞きながら、うつくしい画面を前にゲームをつづけました。
その時、ゲームでとても大切な選択をしなければならない時に、電話がかかってきました。
ゲームに熱中していたシャルマは、電話が鳴っているのに気が付きませんでした。
シャルマが選んだキャラクターは、ひろ子さんにとても似ていていました。かみが長くて背が高くて、目が少し大きくて、かわいいキャラクターでした。だから、どうしてもこのゲームは成功したかったんです。
大切な選択が終わると、シャルマは休んでコーヒーを飲みました。
今、何時かなと思って、スマートフォンを見ると、電話がかかってきたことがわかる赤いランプがついていました。
4件もあったので、誰だろう?と思って見てみると、全部ひろ子さんからでした。
その時、シャルマは思い出しました。今日はひろ子さんとインドの食事の材料を売っている店に一緒に行く日だったんです。大学の近くの駅で、ひろ子さんと待ち合わせをしていました。
チャパティの粉とダールの豆がもう少なくなったので、一緒に買い物に行こうとひろ子さんと約束していました。ゲームに夢中になっていたシャルマは、すっかりその約束を忘れていました。約束の時間から、もう3時間もたっていました。
シャルマはすぐにひろ子さんに電話をかけました。でも、ひろ子さんは電話に出ませんでした。
もう一度、かけてみましたが、また出ません。
30分後、一時間後にまたかけてみましたが、ひろ子さんは電話に出ませんでした。
シャルマは部屋の外を見ました。外は雨がふっていました。
シャルマは部屋を急いで出ました。そして雨の中を歩いて、ひろ子さんのアパートへ向かいました。30分くらい歩いてひろ子さんのアパートの前に着いて、ひろ子さんの部屋がある2階を見上げると、ひろ子さんの部屋の電気は消えていました。
また、30分歩いて、シャルマは自分の部屋に戻りました。そして、ため息をつきました。
「どうしよう…。」
「ひろ子さんは怒っているだろうな。約束したのに忘れたんだから…。」
約束の時間にいつも5分とか10分とか遅れるシャルマに、ひろ子さんはいつも言いました。
「日本人は時間にきびしい人が多いから、気をつけてね。」
その時はいつも、
「すみません。次は時間に遅れないようにします。」
とあやまりました。
「何度も時間に遅れる人はきらわれてしまうよ。」
そう何回言われても、シャルマの遅刻のくせは、なかなかなおりませんでした。
何度遅れても、ひろ子さんは
「また遅刻!!仕方ないな。」
と一度は怒るのですが、すぐに機嫌を直してくれました。
しかし、今日は秋の冷たい雨の中で長い間待たせてしまったんです。
「今度こそ、許してくれないかもしれない。」
そう思うと、シャルマはその夜、寝られませんでした。
次の日、朝はやくから大学へ行きました。
大学で、いつもひろ子さんが勉強している教室や、時々昼ご飯を一緒に食べる食堂へ行きました。
ひろ子さんに会いたかったんです。そして、あやまりたかったんです。
でも、大学の中のどこへ行っても、ひろ子さんはいませんでした。
自分の部屋に戻ると、シャルマはまた、ひろ子さんに電話をかけてみました。
でも、ひろ子さんは電話に出ませんでした。
「待っている間か帰っている時に交通事故にあったのかもしれない。」
「悪い人にどこかへつれていかれたのかもしれない。」
悪いことばかり考えました。
心配で、心配で毎日あまり寝られない日が続きました。
ひろ子さんに会えないままで4日が経ちました。
その間、シャルマは一度もゲームをしませんでした。
こんなに長い間、ゲームをしなかったのは、子供の時から初めてでした。
それくらいシャルマはひろ子さんを心配していたんです。
ひろ子さんから電話があったのは、約束の日から5日後でした。
「何度も電話をしてくれたのに出られなくてごめんなさい。」
ひろ子さんの声は、いつもより小さくて、元気がありませんでした。
「かぜをひいてしまって、熱があってずっと寝ていたの。」
シャルマは
「ぼくのせいだ。ぼくが雨の中をずっと待たせたから…。」
そう思いました。
「ぼくの方こそごめん。約束の時間に遅れて…。それでひろ子さん、かぜをひいちゃったんじゃないんですか?」
「ううん、最近、レポートの宿題が多くて、少し寝る時間が少なかったんだ。それで、あまり体の調子がよくなかったの。だからシャルマさんのせいじゃないわ。」
「元気になったら、また会おうね。」
そう言って、ひろ子さんは電話を切りました。
シャルマは思いました。
「やっぱり、ぼくのせいだ。ぼくがゲームをしていなかったら…、時間をしっかり守っていたら、ひろ子さんがかぜでずっと寝ていることはなかったんだ。」
なみだが出てきました。
シャルマは泣いていました。
それから1週間後、シャルマはひろ子さんに会いました。
「久しぶりね。」
ひろ子さんは元気な声で言いました。ひろ子さんの顔色はいつもの通りでしたが、少しやせていました。
「シャルマさん、少しやせたんじゃない?」
「ひろ子さんこそ…。かぜはもう大丈夫なんですか?」
「治るまでだいぶかかったけれど、もう大丈夫。食欲も出てきたし、せきももう出ないし。」
そして、シャルマはひろ子さんと一緒にチャパティの粉とダールの豆を買いに行きました。
シャルマもあまり食べる気分ではなくて、チャパティの粉もダールの豆もあまり減らなかったんです。
買い物の後、いつもはひろ子さんの部屋でインドの料理を作るんですが、ひろ子さんは
「かぜで寝ていたから、部屋のそうじをあまりしていないの。あまり部屋がきれいじゃないから今日は部屋に来ないで。」
と言いました。
ひろ子さんと別れた後、部屋に戻ったシャルマは一人でチャパティを焼いて、ダールと一緒に食べました。
久しぶりにゆっくりと食べることができました。
何より、ひろ子さんとまた話すことができて安心したのかもしれません。
食後にインドの紅茶、チャイを飲みながらシャルマは考えました。
「ひろ子さんをもっと大切にしよう。」
それから1週間後、ひろ子さんの部屋でインド料理を食べている時にシャルマは、また聞いてみました。
「ひろ子さん、今、どこか行きたいところがある?」
ひろ子さんはしばらく考えていました。そして、答えました。
「うーん。インドって言いたいけれど、今はあまり調子が良くないから、日本かな。今は、近くが良いからね。私、あたたかい沖縄(日本の場所の名前)でそだったから、紅葉って見たことないの。だから、紅葉をみてみたいかな。」
シャルマは「紅葉」という言葉を初めて聞きました。
そして、その日に部屋に帰って、すぐにしらべてみました。
Googleで調べると「紅葉」は“autumn leaves、autumn foliage、autumn colors、fall leaves、fall foliage、fall colors”と書いてありました。
意味があまりよく分からなかったのですが、どうも秋になってすずしくなると、木についた葉の色が赤や黄色に変わることを「紅葉」というみたいでした。
「紅葉」はシャルマが住んでいたインドのタミル・ナードゥ州でも見たことがありませんでした。
「木についた葉の色が変わることが、どうしてそんなにおもしろいんだろう。どうしてそんなに見たいんだろう。」
シャルマはそう思いましたが、インターネットで京都(日本の場所の名前)行きの安いチケットを探し始めました。
シャルマは、どうしてもひろ子さんに「ごめんなさい。」という気持ちをあらわしたかったんです。そのために、ひろ子さんの見たい「紅葉」を見に、京都へつれていきたいと思いました。
いつものように、シャルマは大学から帰るとゲームを始めました。最近、シャルマが熱中しているのは、恋愛ロールプレイングゲーム(Love Role-Playing Game)です。
恋愛の相手のキャラクターは自分で選ぶことができます。ゲームの中にはいろいろなシーンやイベントがあります。そんなシーンで自分がどんなことをするかで、キャラクターとの関係や物語がどのように進むかが変わります。自分がどう行動するか、どんな行動を選ぶかによってエンディングが変わります。恋がうまくいったり、うまくいかなかったりします。
ゲームから流れるすばらしい音楽を聞きながら、美しい画面を前にゲームを続けました。
その時、ゲームでとても大切な選択をしなければならない時に、電話がかかってきました。
ゲームに熱中していたシャルマは、電話が鳴っているのに気がつきませんでした。
シャルマが選んだキャラクターは、ひろ子さんにとても似ていていました。髪が長くて背が高くて、目が少し大きくて、かわいいキャラクターでした。だから、どうしてもこのゲームは成功したかったんです。
大切な選択が終わると、シャルマは休んでコーヒーを飲みました。
今、何時かなと思って、スマートフォンを見ると、着信したことがわかる赤いランプがついていました。
4件もあったので、誰だろう?と思って見てみると、全部ひろ子さんからでした。
その時、シャルマは思い出しました。今日はひろ子さんとインドの食材を売っている店に一緒に行く日だったんです。大学の近くの駅で、ひろ子さんと待ち合わせをしていました。
チャパティの粉とダールの豆がもう少なくなったので、一緒に買い物に行こうとひろ子さんと約束していました。ゲームに夢中になっていたシャルマは、すっかりその約束を忘れていました。約束の時間から、もう3時間もたっていました。
シャルマはすぐにひろ子さんに電話をかけました。でも、ひろ子さんは電話に出ませんでした。
もう一度、かけてみましたが、また出ません。
30分後、一時間後にまたかけてみましたが、ひろ子さんは電話に出ませんでした。
シャルマは部屋の外を見ました。外は雨が降っていました。
シャルマは部屋を飛び出しました。そして雨の中を歩いて、ひろ子さんのアパートへ向かいました。30分くらい歩いてひろ子さんのアパートの前に着いて、ひろ子さんの部屋がある2階を見上げると、ひろ子さんの部屋の電気は消えていました。
また、30分歩いて、シャルマは自分の部屋に戻りました。そして、ため息をつきました。
「どうしよう…。」
「ひろ子さんは怒っているだろうな。約束したのに忘れたんだから…。」
約束の時間にいつも5分とか10分とか遅れるシャルマに、ひろ子さんはいつも言いました。
「日本人は時間に厳しい人が多いから、気をつけてね。」
その時はいつも、
「すみません。次は時間に遅れないようにします。」
と謝りました。
「何度も時間に遅れる人は嫌われちゃうよ。」
そう何回言われても、シャルマの遅刻の癖は、なかなかなおりませんでした。
何度遅れても、ひろ子さんは
「また遅刻!!仕方ないなあ。」
と一度は怒るのですが、すぐに機嫌を直してくれました。
しかし、今日は秋の冷たい雨の中で長い間待たせてしまったんです。
「今度こそ、許してくれないかもしれない。」
そう思うと、シャルマはその晩、寝られませんでした。
次の日、朝早くから大学へ行きました。
大学で、いつもひろ子さんが勉強している教室や、時々昼ご飯を一緒に食べる食堂へ行きました。
ひろ子さんに会いたかったんです。そして、謝りたかったんです。
でも、大学の中のどこへ行っても、ひろ子さんはいませんでした。
自分の部屋に戻ると、シャルマはまた、ひろ子さんに電話をかけてみました。
でも、ひろ子さんは電話に出ませんでした。
「待っている間か帰り道に交通事故にあったのかもしれない。」
「悪い人にどこかへ連れていかれたのかもしれない。」
悪いことばかり考えました。
心配で、心配で毎日あまり寝られない日が続きました。
ひろ子さんに会えないままで4日間経ちました。
その間、シャルマは一度もゲームをしませんでした。
こんなに長い間、ゲームをしなかったのは、子供の時から初めてでした。
それくらいシャルマはひろ子さんを心配していたんです。
ひろ子さんから電話があったのは、約束の日から5日後でした。
「何度も電話をしてくれたのに出られなくてごめんなさい。」
ひろ子さんの声は、いつもより小さくて、元気がありませんでした。
「風邪をひいてしまって、熱があってずっと寝ていたの。」
シャルマは
「僕のせいだ。僕が雨の中をずっと待たせたから…。」
そう思いました。
「僕の方こそごめん。約束の時間に遅れて…。それでひろ子さん、かぜをひいちゃったんじゃないんですか?」
「ううん、最近、レポートの宿題が多くて、少し寝不足だったんだ。それで、あまり体調がよくなかったの。だからシャルマさんのせいじゃないわ。」
「元気になったら、また会おうね。」
そう言って、ひろ子さんは電話を切りました。
シャルマは思いました。
「やっぱり、僕のせいだ。僕がゲームをしていなかったら…、時間をしっかり守っていたら、ひろ子さんが風邪で寝込むことはなかったんだ。」
涙が出てきました。
シャルマは泣いていました。
それから1週間後、シャルマはひろ子さんに会いました。
「久しぶりね。」
ひろ子さんは元気な声で言いました。ひろ子さんの顔色はいつもの通りでしたが、少しやせていました。
「シャルマさん、少しやせたんじゃない?」
「ひろ子さんこそ…。風邪はもう大丈夫なんですか?」
「治るまでだいぶかかったけど、もう大丈夫。食欲も出てきたし、咳ももうでないし。」
そして、シャルマはひろ子さんと一緒にチャパティの粉とダールの豆を買いに行きました。
シャルマもあまり食欲が無くて、チャパティの粉もダールの豆もあまり減らなかったんです。
買い物の後、いつもはひろ子さんの部屋でインドの料理を作るんですが、ひろ子さんは
「風邪で寝ていたから、部屋の掃除をあまりしていないの。あまり部屋がきれいじゃないから今日は部屋に来ないで。」
と言いました。
ひろ子さんと別れた後、部屋に戻ったシャルマは一人でチャパティを焼いて、ダールと一緒に食べました。
久しぶりにゆっくりと食べることができました。
何より、ひろ子さんとまた話すことができて安心したのかもしれません。
食後にインドの紅茶、チャイを飲みながらシャルマは考えました。
「ひろ子さんをもっと大切にしよう。」
それから1週間後、ひろ子さんの部屋でインド料理を食べている時にシャルマは、また聞いてみました。
「ひろ子さん、今、どこか行きたいところがある?」
ひろ子さんはしばらく考えていました。そして、答えました。
「うーん。インドって言いたいけど、今はあまり調子が良くないから、日本かな。今は、近くが良いからね。私、暖かい沖縄で育ったから、紅葉って見たことないの。だから、紅葉をみてみたいかな。」
シャルマは「紅葉」という言葉を初めて聞きました。
そして、その日に部屋に帰って、さっそく調べてみました。
Googleで調べると「紅葉」は“autumn leaves、autumn foliage、autumn colors、fall leaves、fall foliage、fall colors”と書いてありました。
意味があまりよく分からなかったのですが、どうも秋になって涼しくなると、木の葉の色が赤や黄色に変わることを「紅葉」というみたいでした。
「紅葉」はシャルマが住んでいたインドのタミル・ナードゥ州でも見たことがありませんでした。
「葉っぱの色が変わることが、どうしてそんなに面白いんだろう。どうしてそんなに見たいんだろう。」
シャルマはそう思いましたが、インターネットで京都行きの安いチケットを探し始めました。
シャルマは、どうしてもひろ子さんに「ごめんなさい。」という気持ちを表したかったんです。そのために、ひろ子さんの見たい「紅葉」を見に、京都へ連れていきたいと思いました。
恋愛の相手のキャラクターは自分で選ぶことができます。ゲームの中にはいろいろなシーンやイベントがあります。そんなシーンで自分がどんなことをするかで、キャラクターとの関係や物語がどのように進むかが変わります。自分がどう行動するか、どんな行動を選ぶかによってエンディングが変わります。恋がうまくいったり、うまくいかなかったりします。
ゲームから流れるすばらしい音楽を聞きながら、美しい画面を前にゲームを続けました。
その時、ゲームでとても大切な選択をしなければならない時に、電話がかかってきました。
ゲームに熱中していたシャルマは、電話が鳴っているのに気がつきませんでした。
シャルマが選んだキャラクターは、ひろ子さんにとても似ていていました。髪が長くて背が高くて、目が少し大きくて、かわいいキャラクターでした。だから、どうしてもこのゲームは成功したかったんです。
大切な選択が終わると、シャルマは休んでコーヒーを飲みました。
今、何時かなと思って、スマートフォンを見ると、着信したことがわかる赤いランプがついていました。
4件もあったので、誰だろう?と思って見てみると、全部ひろ子さんからでした。
その時、シャルマは思い出しました。今日はひろ子さんとインドの食材を売っている店に一緒に行く日だったんです。大学の近くの駅で、ひろ子さんと待ち合わせをしていました。
チャパティの粉とダールの豆がもう少なくなったので、一緒に買い物に行こうとひろ子さんと約束していました。ゲームに夢中になっていたシャルマは、すっかりその約束を忘れていました。約束の時間から、もう3時間もたっていました。
シャルマはすぐにひろ子さんに電話をかけました。でも、ひろ子さんは電話に出ませんでした。
もう一度、かけてみましたが、また出ません。
30分後、一時間後にまたかけてみましたが、ひろ子さんは電話に出ませんでした。
シャルマは部屋の外を見ました。外は雨が降っていました。
シャルマは部屋を飛び出しました。そして雨の中を歩いて、ひろ子さんのアパートへ向かいました。30分くらい歩いてひろ子さんのアパートの前に着いて、ひろ子さんの部屋がある2階を見上げると、ひろ子さんの部屋の電気は消えていました。
また、30分歩いて、シャルマは自分の部屋に戻りました。そして、ため息をつきました。
「どうしよう…。」
「ひろ子さんは怒っているだろうな。約束したのに忘れたんだから…。」
約束の時間にいつも5分とか10分とか遅れるシャルマに、ひろ子さんはいつも言いました。
「日本人は時間に厳しい人が多いから、気をつけてね。」
その時はいつも、
「すみません。次は時間に遅れないようにします。」
と謝りました。
「何度も時間に遅れる人は嫌われちゃうよ。」
そう何回言われても、シャルマの遅刻の癖は、なかなかなおりませんでした。
何度遅れても、ひろ子さんは
「また遅刻!!仕方ないなあ。」
と一度は怒るのですが、すぐに機嫌を直してくれました。
しかし、今日は秋の冷たい雨の中で長い間待たせてしまったんです。
「今度こそ、許してくれないかもしれない。」
そう思うと、シャルマはその晩、寝られませんでした。
次の日、朝早くから大学へ行きました。
大学で、いつもひろ子さんが勉強している教室や、時々昼ご飯を一緒に食べる食堂へ行きました。
ひろ子さんに会いたかったんです。そして、謝りたかったんです。
でも、大学の中のどこへ行っても、ひろ子さんはいませんでした。
自分の部屋に戻ると、シャルマはまた、ひろ子さんに電話をかけてみました。
でも、ひろ子さんは電話に出ませんでした。
「待っている間か帰り道に交通事故にあったのかもしれない。」
「悪い人にどこかへ連れていかれたのかもしれない。」
悪いことばかり考えました。
心配で、心配で毎日あまり寝られない日が続きました。
ひろ子さんに会えないままで4日間経ちました。
その間、シャルマは一度もゲームをしませんでした。
こんなに長い間、ゲームをしなかったのは、子供の時から初めてでした。
それくらいシャルマはひろ子さんを心配していたんです。
ひろ子さんから電話があったのは、約束の日から5日後でした。
「何度も電話をしてくれたのに出られなくてごめんなさい。」
ひろ子さんの声は、いつもより小さくて、元気がありませんでした。
「風邪をひいてしまって、熱があってずっと寝ていたの。」
シャルマは
「僕のせいだ。僕が雨の中をずっと待たせたから…。」
そう思いました。
「僕の方こそごめん。約束の時間に遅れて…。それでひろ子さん、かぜをひいちゃったんじゃないんですか?」
「ううん、最近、レポートの宿題が多くて、少し寝不足だったんだ。それで、あまり体調がよくなかったの。だからシャルマさんのせいじゃないわ。」
「元気になったら、また会おうね。」
そう言って、ひろ子さんは電話を切りました。
シャルマは思いました。
「やっぱり、僕のせいだ。僕がゲームをしていなかったら…、時間をしっかり守っていたら、ひろ子さんが風邪で寝込むことはなかったんだ。」
涙が出てきました。
シャルマは泣いていました。
それから1週間後、シャルマはひろ子さんに会いました。
「久しぶりね。」
ひろ子さんは元気な声で言いました。ひろ子さんの顔色はいつもの通りでしたが、少しやせていました。
「シャルマさん、少しやせたんじゃない?」
「ひろ子さんこそ…。風邪はもう大丈夫なんですか?」
「治るまでだいぶかかったけど、もう大丈夫。食欲も出てきたし、咳ももうでないし。」
そして、シャルマはひろ子さんと一緒にチャパティの粉とダールの豆を買いに行きました。
シャルマもあまり食欲が無くて、チャパティの粉もダールの豆もあまり減らなかったんです。
買い物の後、いつもはひろ子さんの部屋でインドの料理を作るんですが、ひろ子さんは
「風邪で寝ていたから、部屋の掃除をあまりしていないの。あまり部屋がきれいじゃないから今日は部屋に来ないで。」
と言いました。
ひろ子さんと別れた後、部屋に戻ったシャルマは一人でチャパティを焼いて、ダールと一緒に食べました。
久しぶりにゆっくりと食べることができました。
何より、ひろ子さんとまた話すことができて安心したのかもしれません。
食後にインドの紅茶、チャイを飲みながらシャルマは考えました。
「ひろ子さんをもっと大切にしよう。」
それから1週間後、ひろ子さんの部屋でインド料理を食べている時にシャルマは、また聞いてみました。
「ひろ子さん、今、どこか行きたいところがある?」
ひろ子さんはしばらく考えていました。そして、答えました。
「うーん。インドって言いたいけど、今はあまり調子が良くないから、日本かな。今は、近くが良いからね。私、暖かい沖縄で育ったから、紅葉って見たことないの。だから、紅葉をみてみたいかな。」
シャルマは「紅葉」という言葉を初めて聞きました。
そして、その日に部屋に帰って、さっそく調べてみました。
Googleで調べると「紅葉」は“autumn leaves、autumn foliage、autumn colors、fall leaves、fall foliage、fall colors”と書いてありました。
意味があまりよく分からなかったのですが、どうも秋になって涼しくなると、木の葉の色が赤や黄色に変わることを「紅葉」というみたいでした。
「紅葉」はシャルマが住んでいたインドのタミル・ナードゥ州でも見たことがありませんでした。
「葉っぱの色が変わることが、どうしてそんなに面白いんだろう。どうしてそんなに見たいんだろう。」
シャルマはそう思いましたが、インターネットで京都行きの安いチケットを探し始めました。
シャルマは、どうしてもひろ子さんに「ごめんなさい。」という気持ちを表したかったんです。そのために、ひろ子さんの見たい「紅葉」を見に、京都へ連れていきたいと思いました。