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笑い飛ばせ!
どうする? ルカ
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Coming soon!
つぎの日、ルカは大学の事務室(じむしつ)に行きました。
「ああ、ルカさん、こんにちは。」
「あ、林さん、ちょっとそうだんしたいことがあって。」
「今ですか。」
「いえ、すもう部のかんとくに心を勉強しろって言われたんですが、どうしたらいいかわからなくて。」
「そう。じゃ、今日は夕方、時間がありますか。」
「はい。」
「じゃ、5時に仕事が終わるので、5時前にここに来てください。」
「わかりました。」
5時前にルカが事務室に行くと、林さんと50さいぐらいの男の人が待っていました。
「ルカさん、こちらは事務室の係(かかり)長の中田さんです。」
「はじめまして。中田です。」
「はじめまして。ルカともうします。」
「近くにおすしやさんがあるので、3人でいっしょに行きませんか。かいてんずしじゃないけど、安くておいしいんですよ。」
「はい、ぜひ。ありがとうございます。すしははじめてなんです。」
それから、3人は小さいすしやののれんをくぐって、カウンター席(せき)につきました。
「いらっしゃい!」
カウンターの中で、すしやのおじさんがすしをにぎっています。中田さんがルカをおじさんにしょうかいしました。そして、林さんが言いました。
「ここではこのケースの中にある魚を自由(じゆう)におねがいできるんですよ。やってみますね。
おじさん、エビ、おねがいします。」
「へい。エビ~。」
おじさんはこたえて、エビのすしをにぎっています。そして、すぐにエビのすしを林さんの前にある木の皿(さら)にのせて、言いました。
「へい、おまちー。」
「ありがとう。・・・ルカさんもやってみたら?」
「はい。じゃ、あのう、すみません・・・。」
ルカはあせって、ことばが出てきません。
(すしは高いって聞いたけど、だいじょうぶかなあ。”How much?”って日本語でなんだっけ・・・。)
でも、すぐに思い出せなかったので、英語のままおじさんに聞きました。
「ん~、これハウマッチ?」
「ハマチじゃないよ。」
(あっ、思い出した!)
「いくらですか?」
「いくらじゃないよ。マグロだよ。」
「えっ!?」
ルカは何が何だかわからなかったのですが、となりで林さんと中田さんが下をむいて、わらうのをがまんしていました。ルカが何がおかしいのかわからなくて、きょとんとしていると、林さんが魚をゆびさして、せつめいしました。
「これがハマチ、ハウマッチじゃないの。で、これがイクラ。」
「えっ、魚の名前・・・・・・ウソ、またしかられたと思った。ハッハハハハ・・・。」
「フッフフフフ」
「ハッハハハハ」
林さんと中田さんも大きい声でわらいました。
それから、ルカはもう一度、おじさんにすしを注文(ちゅうもん)しました。
「ハマチとイクラとマグロ、おねがいします。」
「へい、おまちー。」
今、おいしそうなすしがルカの目の前にあります。ルカは、いただきます、と言って、はしですしを食べようとしました。でも、あいかわらず、はしがじょうずに使えません。1分ぐらいがんばりましたが、すしが取れませんでした。しかたがないので、
(もう、いいや。手で食べてしまえ。)
と思ったルカは、すしを手で取って、しょうゆをつけて食べ始めました。すると、おじさんが言いました。
「へえ、手で食べるなんて、通(つう)だねえ。」
「えっ、つう?」
「よく知ってるってこと。」
すると、林さんが言いました。
「ルカさん、ほめられたんですよ。すしはもともと、手で食べるものだったんです。むかしのすしは、今のより大きかったので、手で食べていたんです。」
ルカは言いました。
「ほんとうですか? ほめられたなんてラッキー! ハハ、またしかられたと思った。」
3人はまたわらいました。
それから、ルカがすもう部のれんしゅう試合でのことを話しました。
「今、じゅうどう部とすもう部でれんしゅうしてるんですけど、すもう部のれんしゅう試合(しあい)で強い人にかって、大よろこびしたんです。そしたら、いつもはよくわらうかんとくにきびしくしかられて・・・。」
「そうですか。それは大変でしたね。でも、いままでかんとくからそういうことは言われていなかったんですか。」
中田さんが聞きました。
「はい。試合ですもうを取ったことがなかったので、チャンスがなかったんだと思います。でも、そういえば、イタリアのじゅうどうの先生からは、じゅうどうをする時、うれしさをあらわさないように言われました。」
「そうですね。試合にかった時にうれしさをあらわすと、あいてにとってはうれしくないでしょうからね。」
「ぼくはイタリアで、サッカーやバスケットボールをしていたんですが、点を取ってうれしい時、みんなでよろこんでいたんです。それで、つい、同じようによろこんじゃって・・・。でも、よろこんだほうが楽しいですよね・・・。」
すると、林さんは言いました。
「じゅうどうやすもうは、 サッカーやバレーボールなどのチームスポーツとちがいますからね。一対一ですから、あいてのことも大切にするという考えかたが強くなるのかもしれませんね。」
ルカは言いました。
「そういうこと、何となくわかるんですが、ほんとうはわかってないと思ってるんです。でも、心を勉強しろって言われても、どうやって勉強したらいいのか・・・。」
中田さんは言いました。
「日本でいろいろ、けいけんすることですね。たとえば・・・、何がいいかなあ・・・。」
「お茶、茶道(さどう)なんかどうでしょうか。茶道には日本人の心のエッセンスがあると思うんですが。」
林さんがこたえました。中田さんも
「ああ、そうですね。それがいい。茶道なら、大学で体験(たいけん)教室をしている先生を知っていますよ。青山先生という先生です。聞いてみましょう。」
と賛成(さんせい)しました。ルカはうれしくなって、
「ほんとうにありがとうございます! よろしくおねがいします! あっ、また大きい声で言っちゃった。でも、今はだいじょうぶですよね。ヘッへへへ・・・。」
いつもの明るくて楽しいルカが帰ってきました。
「ああ、ルカさん、こんにちは。」
「あ、林さん、ちょっとそうだんしたいことがあって。」
「今ですか。」
「いえ、すもう部のかんとくに心を勉強しろって言われたんですが、どうしたらいいかわからなくて。」
「そう。じゃ、今日は夕方、時間がありますか。」
「はい。」
「じゃ、5時に仕事が終わるので、5時前にここに来てください。」
「わかりました。」
5時前にルカが事務室に行くと、林さんと50さいぐらいの男の人が待っていました。
「ルカさん、こちらは事務室の係(かかり)長の中田さんです。」
「はじめまして。中田です。」
「はじめまして。ルカともうします。」
「近くにおすしやさんがあるので、3人でいっしょに行きませんか。かいてんずしじゃないけど、安くておいしいんですよ。」
「はい、ぜひ。ありがとうございます。すしははじめてなんです。」
それから、3人は小さいすしやののれんをくぐって、カウンター席(せき)につきました。
「いらっしゃい!」
カウンターの中で、すしやのおじさんがすしをにぎっています。中田さんがルカをおじさんにしょうかいしました。そして、林さんが言いました。
「ここではこのケースの中にある魚を自由(じゆう)におねがいできるんですよ。やってみますね。
おじさん、エビ、おねがいします。」
「へい。エビ~。」
おじさんはこたえて、エビのすしをにぎっています。そして、すぐにエビのすしを林さんの前にある木の皿(さら)にのせて、言いました。
「へい、おまちー。」
「ありがとう。・・・ルカさんもやってみたら?」
「はい。じゃ、あのう、すみません・・・。」
ルカはあせって、ことばが出てきません。
(すしは高いって聞いたけど、だいじょうぶかなあ。”How much?”って日本語でなんだっけ・・・。)
でも、すぐに思い出せなかったので、英語のままおじさんに聞きました。
「ん~、これハウマッチ?」
「ハマチじゃないよ。」
(あっ、思い出した!)
「いくらですか?」
「いくらじゃないよ。マグロだよ。」
「えっ!?」
ルカは何が何だかわからなかったのですが、となりで林さんと中田さんが下をむいて、わらうのをがまんしていました。ルカが何がおかしいのかわからなくて、きょとんとしていると、林さんが魚をゆびさして、せつめいしました。
「これがハマチ、ハウマッチじゃないの。で、これがイクラ。」
「えっ、魚の名前・・・・・・ウソ、またしかられたと思った。ハッハハハハ・・・。」
「フッフフフフ」
「ハッハハハハ」
林さんと中田さんも大きい声でわらいました。
それから、ルカはもう一度、おじさんにすしを注文(ちゅうもん)しました。
「ハマチとイクラとマグロ、おねがいします。」
「へい、おまちー。」
今、おいしそうなすしがルカの目の前にあります。ルカは、いただきます、と言って、はしですしを食べようとしました。でも、あいかわらず、はしがじょうずに使えません。1分ぐらいがんばりましたが、すしが取れませんでした。しかたがないので、
(もう、いいや。手で食べてしまえ。)
と思ったルカは、すしを手で取って、しょうゆをつけて食べ始めました。すると、おじさんが言いました。
「へえ、手で食べるなんて、通(つう)だねえ。」
「えっ、つう?」
「よく知ってるってこと。」
すると、林さんが言いました。
「ルカさん、ほめられたんですよ。すしはもともと、手で食べるものだったんです。むかしのすしは、今のより大きかったので、手で食べていたんです。」
ルカは言いました。
「ほんとうですか? ほめられたなんてラッキー! ハハ、またしかられたと思った。」
3人はまたわらいました。
それから、ルカがすもう部のれんしゅう試合でのことを話しました。
「今、じゅうどう部とすもう部でれんしゅうしてるんですけど、すもう部のれんしゅう試合(しあい)で強い人にかって、大よろこびしたんです。そしたら、いつもはよくわらうかんとくにきびしくしかられて・・・。」
「そうですか。それは大変でしたね。でも、いままでかんとくからそういうことは言われていなかったんですか。」
中田さんが聞きました。
「はい。試合ですもうを取ったことがなかったので、チャンスがなかったんだと思います。でも、そういえば、イタリアのじゅうどうの先生からは、じゅうどうをする時、うれしさをあらわさないように言われました。」
「そうですね。試合にかった時にうれしさをあらわすと、あいてにとってはうれしくないでしょうからね。」
「ぼくはイタリアで、サッカーやバスケットボールをしていたんですが、点を取ってうれしい時、みんなでよろこんでいたんです。それで、つい、同じようによろこんじゃって・・・。でも、よろこんだほうが楽しいですよね・・・。」
すると、林さんは言いました。
「じゅうどうやすもうは、 サッカーやバレーボールなどのチームスポーツとちがいますからね。一対一ですから、あいてのことも大切にするという考えかたが強くなるのかもしれませんね。」
ルカは言いました。
「そういうこと、何となくわかるんですが、ほんとうはわかってないと思ってるんです。でも、心を勉強しろって言われても、どうやって勉強したらいいのか・・・。」
中田さんは言いました。
「日本でいろいろ、けいけんすることですね。たとえば・・・、何がいいかなあ・・・。」
「お茶、茶道(さどう)なんかどうでしょうか。茶道には日本人の心のエッセンスがあると思うんですが。」
林さんがこたえました。中田さんも
「ああ、そうですね。それがいい。茶道なら、大学で体験(たいけん)教室をしている先生を知っていますよ。青山先生という先生です。聞いてみましょう。」
と賛成(さんせい)しました。ルカはうれしくなって、
「ほんとうにありがとうございます! よろしくおねがいします! あっ、また大きい声で言っちゃった。でも、今はだいじょうぶですよね。ヘッへへへ・・・。」
いつもの明るくて楽しいルカが帰ってきました。
つぎの日、ルカは大学の事務室に行きました。
「ああ、ルカさん、こんにちは。」
「あ、林さん、ちょっとそうだんしたいことがあって。」
「今ですか。」
「いえ、すもう部のかんとくに心を勉強しろって言われたんですが、どうしたらいいかわからなくて。」
「そう。じゃ、今日は夕方、時間がありますか。」
「はい。」
「じゃ、5時に仕事が終わるので、5時前にここに来てください。」
「わかりました。」
5時前にルカが事務室に行くと、林さんと50さいぐらいの男の人が待っていました。
「ルカさん、こちらは事務室の係(かかり)長の中田さんです。」
「はじめまして。中田です。」
「はじめまして。ルカともうします。」
「近くにおすしやさんがあるので、3人でいっしょに行きませんか。かいてんずしじゃないけど、安くておいしいんですよ。」
「はい、ぜひ。ありがとうございます。すしははじめてなんです。」
それから、3人は小さいすしやののれんをくぐって、カウンター席につきました。
「いらっしゃい!」
カウンターの中で、すしやのおじさんがすしをにぎっています。中田さんがルカをおじさんにしょうかいしました。そして、林さんが言いました。
「ここではこのケースの中にある魚を自由におねがいできるんですよ。やってみますね。
おじさん、エビ、おねがいします。」
「へい。エビ~。」
おじさんはこたえて、エビのすしをにぎっています。そして、すぐにエビのすしを林さんの前にある木の皿(さら)にのせて、言いました。
「へい、おまちー。」
「ありがとう。・・・ルカさんもやってみたら?」
「はい。じゃ、あのう、すみません・・・。」
ルカはあせって、ことばが出てきません。
(すしは高いって聞いたけど、だいじょうぶかなあ。”How much?”って日本語でなんだっけ・・・。)
でも、すぐに思い出せなかったので、英語のままおじさんに聞きました。
「ん~、これハウマッチ?」
「ハマチじゃないよ。」
(あっ、思い出した!)
「いくらですか?」
「いくらじゃないよ。マグロだよ。」
「えっ!?」
ルカは何が何だかわからなかったのですが、となりで林さんと中田さんが下をむいて、わらうのをがまんしていました。ルカが何がおかしいのかわからなくて、きょとんとしていると、林さんが魚を指さして、せつめいしました。
「これがハマチ、ハウマッチじゃないの。で、これがイクラ。」
「えっ、魚の名前・・・・・・ウソ、またしかられたと思った。ハッハハハハ・・・。」
「フッフフフフ」
「ハッハハハハ」
林さんと中田さんも大きい声でわらいました。
それから、ルカはもう一度、おじさんにすしを注文(ちゅうもん)しました。
「ハマチとイクラとマグロ、おねがいします。」
「へい、おまちー。」
今、おいしそうなすしがルカの目の前にあります。ルカは、いただきます、と言って、はしですしを食べようとしました。でも、あいかわらず、はしがじょうずに使えません。1分ぐらいがんばりましたが、すしが取れませんでした。しかたがないので、
(もう、いいや。手で食べてしまえ。)
と思ったルカは、すしを手で取って、しょうゆをつけて食べ始めました。すると、おじさんが言いました。
「へえ、手で食べるなんて、通(つう)だねえ。」
「えっ、つう?」
「よく知ってるってこと。」
すると、林さんが言いました。
「ルカさん、ほめられたんですよ。すしはもともと、手で食べるものだったんです。むかしのすしは、今のより大きかったので、手で食べていたんです。」
ルカは言いました。
「ほんとうですか? ほめられたなんてラッキー! ハハ、またしかられたと思った。」
3人はまたわらいました。
それから、ルカがすもう部のれんしゅう試合でのことを話しました。
「今、じゅうどう部とすもう部でれんしゅうしてるんですけど、すもう部のれんしゅう試合で強い人にかって、大よろこびしたんです。そしたら、いつもはよくわらうかんとくにきびしくしかられて・・・。」
「そうですか。それは大変でしたね。でも、いままでかんとくからそういうことは言われていなかったんですか。」
中田さんが聞きました。
「はい。試合ですもうを取ったことがなかったので、チャンスがなかったんだと思います。でも、そういえば、イタリアのじゅうどうの先生からは、じゅうどうをする時、うれしさをあらわさないように言われました。」
「そうですね。試合にかった時にうれしさをあらわすと、あいてにとってはうれしくないでしょうからね。」
「ぼくはイタリアで、サッカーやバスケットボールをしていたんですが、点を取ってうれしい時、みんなでよろこんでいたんです。それで、つい、同じようによろこんじゃって・・・。でも、よろこんだほうが楽しいですよね・・・。」
すると、林さんは言いました。
「じゅうどうやすもうは、 サッカーやバレーボールなどのチームスポーツとちがいますからね。一対一ですから、あいてのことも大切にするという考えかたが強くなるのかもしれませんね。」
ルカは言いました。
「そういうこと、何となくわかるんですが、ほんとうはわかってないと思ってるんです。でも、心を勉強しろって言われても、どうやって勉強したらいいのか・・・。」
中田さんは言いました。
「日本でいろいろ、けいけんすることですね。たとえば・・・、何がいいかなあ・・・。」
「お茶、茶道なんかどうでしょうか。茶道には日本人の心のエッセンスがあると思うんですが。」
林さんがこたえました。中田さんも
「ああ、そうですね。それがいい。茶道なら、大学で体験(たいけん)教室をしている先生を知っていますよ。青山先生という先生です。聞いてみましょう。」
と賛成(さんせい)しました。ルカはうれしくなって、
「ほんとうにありがとうございます! よろしくおねがいします! あっ、また大きい声で言っちゃった。でも、今はだいじょうぶですよね。ヘッへへへ・・・。」
いつもの明るくて楽しいルカが帰ってきました。
「ああ、ルカさん、こんにちは。」
「あ、林さん、ちょっとそうだんしたいことがあって。」
「今ですか。」
「いえ、すもう部のかんとくに心を勉強しろって言われたんですが、どうしたらいいかわからなくて。」
「そう。じゃ、今日は夕方、時間がありますか。」
「はい。」
「じゃ、5時に仕事が終わるので、5時前にここに来てください。」
「わかりました。」
5時前にルカが事務室に行くと、林さんと50さいぐらいの男の人が待っていました。
「ルカさん、こちらは事務室の係(かかり)長の中田さんです。」
「はじめまして。中田です。」
「はじめまして。ルカともうします。」
「近くにおすしやさんがあるので、3人でいっしょに行きませんか。かいてんずしじゃないけど、安くておいしいんですよ。」
「はい、ぜひ。ありがとうございます。すしははじめてなんです。」
それから、3人は小さいすしやののれんをくぐって、カウンター席につきました。
「いらっしゃい!」
カウンターの中で、すしやのおじさんがすしをにぎっています。中田さんがルカをおじさんにしょうかいしました。そして、林さんが言いました。
「ここではこのケースの中にある魚を自由におねがいできるんですよ。やってみますね。
おじさん、エビ、おねがいします。」
「へい。エビ~。」
おじさんはこたえて、エビのすしをにぎっています。そして、すぐにエビのすしを林さんの前にある木の皿(さら)にのせて、言いました。
「へい、おまちー。」
「ありがとう。・・・ルカさんもやってみたら?」
「はい。じゃ、あのう、すみません・・・。」
ルカはあせって、ことばが出てきません。
(すしは高いって聞いたけど、だいじょうぶかなあ。”How much?”って日本語でなんだっけ・・・。)
でも、すぐに思い出せなかったので、英語のままおじさんに聞きました。
「ん~、これハウマッチ?」
「ハマチじゃないよ。」
(あっ、思い出した!)
「いくらですか?」
「いくらじゃないよ。マグロだよ。」
「えっ!?」
ルカは何が何だかわからなかったのですが、となりで林さんと中田さんが下をむいて、わらうのをがまんしていました。ルカが何がおかしいのかわからなくて、きょとんとしていると、林さんが魚を指さして、せつめいしました。
「これがハマチ、ハウマッチじゃないの。で、これがイクラ。」
「えっ、魚の名前・・・・・・ウソ、またしかられたと思った。ハッハハハハ・・・。」
「フッフフフフ」
「ハッハハハハ」
林さんと中田さんも大きい声でわらいました。
それから、ルカはもう一度、おじさんにすしを注文(ちゅうもん)しました。
「ハマチとイクラとマグロ、おねがいします。」
「へい、おまちー。」
今、おいしそうなすしがルカの目の前にあります。ルカは、いただきます、と言って、はしですしを食べようとしました。でも、あいかわらず、はしがじょうずに使えません。1分ぐらいがんばりましたが、すしが取れませんでした。しかたがないので、
(もう、いいや。手で食べてしまえ。)
と思ったルカは、すしを手で取って、しょうゆをつけて食べ始めました。すると、おじさんが言いました。
「へえ、手で食べるなんて、通(つう)だねえ。」
「えっ、つう?」
「よく知ってるってこと。」
すると、林さんが言いました。
「ルカさん、ほめられたんですよ。すしはもともと、手で食べるものだったんです。むかしのすしは、今のより大きかったので、手で食べていたんです。」
ルカは言いました。
「ほんとうですか? ほめられたなんてラッキー! ハハ、またしかられたと思った。」
3人はまたわらいました。
それから、ルカがすもう部のれんしゅう試合でのことを話しました。
「今、じゅうどう部とすもう部でれんしゅうしてるんですけど、すもう部のれんしゅう試合で強い人にかって、大よろこびしたんです。そしたら、いつもはよくわらうかんとくにきびしくしかられて・・・。」
「そうですか。それは大変でしたね。でも、いままでかんとくからそういうことは言われていなかったんですか。」
中田さんが聞きました。
「はい。試合ですもうを取ったことがなかったので、チャンスがなかったんだと思います。でも、そういえば、イタリアのじゅうどうの先生からは、じゅうどうをする時、うれしさをあらわさないように言われました。」
「そうですね。試合にかった時にうれしさをあらわすと、あいてにとってはうれしくないでしょうからね。」
「ぼくはイタリアで、サッカーやバスケットボールをしていたんですが、点を取ってうれしい時、みんなでよろこんでいたんです。それで、つい、同じようによろこんじゃって・・・。でも、よろこんだほうが楽しいですよね・・・。」
すると、林さんは言いました。
「じゅうどうやすもうは、 サッカーやバレーボールなどのチームスポーツとちがいますからね。一対一ですから、あいてのことも大切にするという考えかたが強くなるのかもしれませんね。」
ルカは言いました。
「そういうこと、何となくわかるんですが、ほんとうはわかってないと思ってるんです。でも、心を勉強しろって言われても、どうやって勉強したらいいのか・・・。」
中田さんは言いました。
「日本でいろいろ、けいけんすることですね。たとえば・・・、何がいいかなあ・・・。」
「お茶、茶道なんかどうでしょうか。茶道には日本人の心のエッセンスがあると思うんですが。」
林さんがこたえました。中田さんも
「ああ、そうですね。それがいい。茶道なら、大学で体験(たいけん)教室をしている先生を知っていますよ。青山先生という先生です。聞いてみましょう。」
と賛成(さんせい)しました。ルカはうれしくなって、
「ほんとうにありがとうございます! よろしくおねがいします! あっ、また大きい声で言っちゃった。でも、今はだいじょうぶですよね。ヘッへへへ・・・。」
いつもの明るくて楽しいルカが帰ってきました。