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メイ
大学生活のはじまり
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Coming soon!
メイはアパートを決めました。ゆう子さんがフリーWi-Fiがあるアパートを見つけてくれました。大学までとても近くて、自転車で行けば7分、歩いて行っても15分くらいでした。へやは少しせまいですが、メイはアパートの赤いやねと白いかべをすきになりました。へやの中には何もなかったけれど、きれいでした。
はじめは、とても忙しかったです。市役所へ行ったり、銀行へ行ったり、生活にいるものを買ったり、スマートフォンの会社で契約をしたりしました。ふとんも買いました。しきものやタオル、おふろやせんたくに使うもの、おさらやコップなどは、アメリカにいたときにアルバイトでもらったお金で買いました。それが終わって、やっと生活できるようになりました。そして日本での学生生活が始まりました。
はじめは日本語の授業が多かったです。日本語は、いろいろな単語があって、おぼえるのが大変でした。また、にている意味の単語も多くて、いつ、どこでこの単語を使えばいいのかがとてもむずかしかったです。また、漢字もおぼえるのがとても大変でした。一つの漢字にいろいろな音があるのは、もちろん知っていました。しかし、おぼえてもおぼえても、知らない漢字の単語がどんどん出てきて、いやになる事もありました。
それだけではありません。日本のアニメであったように、話す人と自分の関係や、どこで話をしているかで話し方がかわります。メイは時々分からなくなりました。教室では「行きましたか?」と勉強しますが、友だちと話すときは、「行った?」と言います。市役所の人が話していた日本語と、ゆう子さんと話す日本語は、ちがう国の言葉みたいでした。ゆう子さんは、ていねいな言葉も友だちとの言葉も上手に話していましたが、メイにはむずかしかったです。
日本語のクラスはみんな留学生でした。メイと同じ北アメリカだけでなく、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、南アメリカなど世界のいろいろな国や地域から留学生が集まっていました。
日本のマンガやもちろんアニメをすきな人が多く、アニメの話をしてすぐになかよくなりました。みんな日本のアニメをよく知っていました。メイが知らないアニメについてもよく知っている学生もいて、メイはとてもおどろきました。自分がいちばん、日本のアニメをよく知っていると思っていたからです。
大学での勉強が始まって3か月が過ぎました。日本の大学での勉強にも、日本での生活にも慣れてきました。しかしメイには一つ大きななやみができました。
この2か月で、クラスの留学生や、大学の日本人の学生と話しました。でも、メイがアメリカ人だと分かると、みんな日本語ではなく、英語で話そうとするのです。日本のクラスの留学生も、授業が終わると英語で話しはじめました。
はじめは、英語で良いと思いました。もちろん英語の方が話がしやすいし、ちょっとむずかしいことは、英語の方が考えていることを言いやすいからです。ほかの留学生も、日本語とくらべて英語の方が上手な学生が多いみたいでした。だから、
「私が今まで話していた言葉が英語だから、私が分かるように、みんな英語で話してくれるのかな。」
と思って、あまり気にしませんでした。しかしメイは、日本語を話すことでもっと日本語が上手になりたいので、みんな英語で話そうとすることが、だんだんいやになってきました。
ある日「そろそろ期末テストが始まるので、みんなでテストについて話そう」と、一人の留学生が言いました。みんなもはじめてのテストだから「テストに出るテキストのページがどこからどこまでか、テストがいつなのか、分かっているかいっしょに話をしよう」と賛成しました。
クラスの人たちとメイは、授業が終わってから大学図書館に集まりました。でも、集まったクラスの人たちはみんな英語で話しています。メイは日本語で会話しようとしました。しかし彼らはいっしょに日本語で話そうとはしないで、そのまま英語にもどってしまいました。
「漢字はL1からL10で、7月24日の2限目」
「文法はL1からL12で、25日の4限目」
みんな英語で話しています。
「L8の文法がちょっとむずしくて、おしえてくれませんか。」
そんな質問が一人の留学生からあっても、みんな英語でおしえています。
メイは今の日本のアニメを見て、今の日本文化を勉強したくて日本へ来ました。だから、もっともっと日本語が上手になりたいのに、みんな日本語ではなく、英語で話してきます。日本へ来るまえに話していた言葉が英語以外の留学生たちが、教室で話すときは日本語を使っています。でもメイとはいつも英語で話そうとします。
メイはだんだん教室でもクラスの人たちと話さなくなりました。授業が終わってからもアパートに戻って一人で勉強したり、アニメを見たりするようになりました。そして、期末テストが終わり、夏休みになりました。
メイはひさしぶりにゆう子さんに電話をかけました。ゆう子さんは大学院の2年生になっていて、大学院の卒業論文である修士論文を書くために、毎日勉強しているからいそがしかったです。メイはそれを知っていたので、あまり「あそぼう」と言ったり話をしようとしたりしていませんでした。
「メイ、ひさしぶり」
長い間聞いていなかったゆう子さんのこえを聞いて、メイは少しなみだが出てきました。
「ゆう子さん、おひさしぶりです。お元気ですか」
「うん、おかげさまで。で、どうしたの」
ゆう子さんはメイのこえを聞いて、メイが元気がないことがすぐに分かったようでした。
「じつは……」
メイが話すことがむずかしそうだと、ゆう子さんは分かりました。
「どこかで会おうか。そうだ、メイのアパートの近くにランプという喫茶店があるでしょう。その喫茶店で少し話さない? メイ、時間ある?」
「うん、時間はあります。夏休みだから……」
「じゃあ、1時間くらいしたら、ランプで会いましょう」
ゆう子さんは電話を切りました。
喫茶店でメイの話を聞いたゆう子さんは、
「わかる。私もアメリカから帰ったときは、同じ経験をした。特に勉強熱心な学生は、私がアメリカに住んでたと分かると英語で話そうとした。みんな、会話の練習をしたいんだと思う。日本で英語で話す練習をするのは、英語の教室へ行くとかじゃないと、なかなかできないから」
メイは、ゆう子さんに会って、自分のきもちを話したら、少しきもちがかるくなりました。
「でも。私もそうだったんだ。高校生の時はビデオ通話でゆう子さんと日本語で話して、日本語を勉強したんだもの」
ゆう子さんは笑って言いました。
「あの時のメイはとても勉強熱心だった」
「楽しかったから」
メイもわらって答えました。
「でも、メイはもっと日本語を勉強したいんでしょう。どうしたらいいんだろう」
ゆう子さんはしばらく、しずかに考えていました。そして、言いました。
「そうだ、メイ。メイはサークルに入ってないでしょう。大学のサークルに入ってみたら? 知っているかもしれないけど、サークルというのは、同じものをすきな人たちが集まって練習したり、作ったり、話したりする会のことで、大学にはいろいろなサークルがあるんだ」
「サークル……」
「うん、サークルに入ったら、いろいろな人に会えるし、たくさん話すことができると思う」
メイは考えました。メイは、小さいころから学校が終わるとすぐに家に帰って一人でアニメを見ていました。スポーツや音楽などのサークルに入ったことは一回もありませんでした。
「私がサークルに……?」
「うん。文化系のサークルよりも、体を動かすサークルの方がいいかな。文化系の、たとえば本を読んで話したり絵をかいたりするサークルだと、全体で話すのではなく一人一人と話すことになって、やっぱりみんなメイと英語で話してしまいそうだから。スポーツをするサークルの方が、みんなで大会や練習で何をするか話すときや、大会が終わったあとの集まりのときに、みんなが日本語を話すと思う」
メイはスポーツは学校の授業でしかしたことがありませんでした。
「私にはむりです! 大学のスポーツのサークルに入れるとは思えません。大学のスポーツのサークルには、きっと高校でサークルに入って、がんばっていた人が入るんでしょう。そんな人たちといっしょにスポーツを、私はできない……」
「そうか……」
ゆう子さんはしばらく考えていました。そして、
「メイはダンスはすき?」
と聞きました。
「アニメに出てくる人がおどってるシーンなんかはだいすきです。よく一人でアニメを見ながら、アニメの歌を歌っておどったりしています」
「よさこいソーランって知ってる? 日本のお祭のおどりと古い歌をあわせて作った、おもしろいダンスがあるんだ」
「よさこいソーラン?」
メイは聞いたこともありませんでした。メイのかおを見てゆう子さんは言いました。
「私の後輩が、よさこいソーランのサークルに入っているんだ。今はその人がチームをまとめてる。会いに行かない?」
「うん」
メイは「日本のお祭の時のおどり」という言葉をきいて、見てみたいと思いました。そして、そのゆう子さんの後輩に会うことにしました。
はじめは、とても忙しかったです。市役所へ行ったり、銀行へ行ったり、生活にいるものを買ったり、スマートフォンの会社で契約をしたりしました。ふとんも買いました。しきものやタオル、おふろやせんたくに使うもの、おさらやコップなどは、アメリカにいたときにアルバイトでもらったお金で買いました。それが終わって、やっと生活できるようになりました。そして日本での学生生活が始まりました。
はじめは日本語の授業が多かったです。日本語は、いろいろな単語があって、おぼえるのが大変でした。また、にている意味の単語も多くて、いつ、どこでこの単語を使えばいいのかがとてもむずかしかったです。また、漢字もおぼえるのがとても大変でした。一つの漢字にいろいろな音があるのは、もちろん知っていました。しかし、おぼえてもおぼえても、知らない漢字の単語がどんどん出てきて、いやになる事もありました。
それだけではありません。日本のアニメであったように、話す人と自分の関係や、どこで話をしているかで話し方がかわります。メイは時々分からなくなりました。教室では「行きましたか?」と勉強しますが、友だちと話すときは、「行った?」と言います。市役所の人が話していた日本語と、ゆう子さんと話す日本語は、ちがう国の言葉みたいでした。ゆう子さんは、ていねいな言葉も友だちとの言葉も上手に話していましたが、メイにはむずかしかったです。
日本語のクラスはみんな留学生でした。メイと同じ北アメリカだけでなく、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、南アメリカなど世界のいろいろな国や地域から留学生が集まっていました。
日本のマンガやもちろんアニメをすきな人が多く、アニメの話をしてすぐになかよくなりました。みんな日本のアニメをよく知っていました。メイが知らないアニメについてもよく知っている学生もいて、メイはとてもおどろきました。自分がいちばん、日本のアニメをよく知っていると思っていたからです。
大学での勉強が始まって3か月が過ぎました。日本の大学での勉強にも、日本での生活にも慣れてきました。しかしメイには一つ大きななやみができました。
この2か月で、クラスの留学生や、大学の日本人の学生と話しました。でも、メイがアメリカ人だと分かると、みんな日本語ではなく、英語で話そうとするのです。日本のクラスの留学生も、授業が終わると英語で話しはじめました。
はじめは、英語で良いと思いました。もちろん英語の方が話がしやすいし、ちょっとむずかしいことは、英語の方が考えていることを言いやすいからです。ほかの留学生も、日本語とくらべて英語の方が上手な学生が多いみたいでした。だから、
「私が今まで話していた言葉が英語だから、私が分かるように、みんな英語で話してくれるのかな。」
と思って、あまり気にしませんでした。しかしメイは、日本語を話すことでもっと日本語が上手になりたいので、みんな英語で話そうとすることが、だんだんいやになってきました。
ある日「そろそろ期末テストが始まるので、みんなでテストについて話そう」と、一人の留学生が言いました。みんなもはじめてのテストだから「テストに出るテキストのページがどこからどこまでか、テストがいつなのか、分かっているかいっしょに話をしよう」と賛成しました。
クラスの人たちとメイは、授業が終わってから大学図書館に集まりました。でも、集まったクラスの人たちはみんな英語で話しています。メイは日本語で会話しようとしました。しかし彼らはいっしょに日本語で話そうとはしないで、そのまま英語にもどってしまいました。
「漢字はL1からL10で、7月24日の2限目」
「文法はL1からL12で、25日の4限目」
みんな英語で話しています。
「L8の文法がちょっとむずしくて、おしえてくれませんか。」
そんな質問が一人の留学生からあっても、みんな英語でおしえています。
メイは今の日本のアニメを見て、今の日本文化を勉強したくて日本へ来ました。だから、もっともっと日本語が上手になりたいのに、みんな日本語ではなく、英語で話してきます。日本へ来るまえに話していた言葉が英語以外の留学生たちが、教室で話すときは日本語を使っています。でもメイとはいつも英語で話そうとします。
メイはだんだん教室でもクラスの人たちと話さなくなりました。授業が終わってからもアパートに戻って一人で勉強したり、アニメを見たりするようになりました。そして、期末テストが終わり、夏休みになりました。
メイはひさしぶりにゆう子さんに電話をかけました。ゆう子さんは大学院の2年生になっていて、大学院の卒業論文である修士論文を書くために、毎日勉強しているからいそがしかったです。メイはそれを知っていたので、あまり「あそぼう」と言ったり話をしようとしたりしていませんでした。
「メイ、ひさしぶり」
長い間聞いていなかったゆう子さんのこえを聞いて、メイは少しなみだが出てきました。
「ゆう子さん、おひさしぶりです。お元気ですか」
「うん、おかげさまで。で、どうしたの」
ゆう子さんはメイのこえを聞いて、メイが元気がないことがすぐに分かったようでした。
「じつは……」
メイが話すことがむずかしそうだと、ゆう子さんは分かりました。
「どこかで会おうか。そうだ、メイのアパートの近くにランプという喫茶店があるでしょう。その喫茶店で少し話さない? メイ、時間ある?」
「うん、時間はあります。夏休みだから……」
「じゃあ、1時間くらいしたら、ランプで会いましょう」
ゆう子さんは電話を切りました。
喫茶店でメイの話を聞いたゆう子さんは、
「わかる。私もアメリカから帰ったときは、同じ経験をした。特に勉強熱心な学生は、私がアメリカに住んでたと分かると英語で話そうとした。みんな、会話の練習をしたいんだと思う。日本で英語で話す練習をするのは、英語の教室へ行くとかじゃないと、なかなかできないから」
メイは、ゆう子さんに会って、自分のきもちを話したら、少しきもちがかるくなりました。
「でも。私もそうだったんだ。高校生の時はビデオ通話でゆう子さんと日本語で話して、日本語を勉強したんだもの」
ゆう子さんは笑って言いました。
「あの時のメイはとても勉強熱心だった」
「楽しかったから」
メイもわらって答えました。
「でも、メイはもっと日本語を勉強したいんでしょう。どうしたらいいんだろう」
ゆう子さんはしばらく、しずかに考えていました。そして、言いました。
「そうだ、メイ。メイはサークルに入ってないでしょう。大学のサークルに入ってみたら? 知っているかもしれないけど、サークルというのは、同じものをすきな人たちが集まって練習したり、作ったり、話したりする会のことで、大学にはいろいろなサークルがあるんだ」
「サークル……」
「うん、サークルに入ったら、いろいろな人に会えるし、たくさん話すことができると思う」
メイは考えました。メイは、小さいころから学校が終わるとすぐに家に帰って一人でアニメを見ていました。スポーツや音楽などのサークルに入ったことは一回もありませんでした。
「私がサークルに……?」
「うん。文化系のサークルよりも、体を動かすサークルの方がいいかな。文化系の、たとえば本を読んで話したり絵をかいたりするサークルだと、全体で話すのではなく一人一人と話すことになって、やっぱりみんなメイと英語で話してしまいそうだから。スポーツをするサークルの方が、みんなで大会や練習で何をするか話すときや、大会が終わったあとの集まりのときに、みんなが日本語を話すと思う」
メイはスポーツは学校の授業でしかしたことがありませんでした。
「私にはむりです! 大学のスポーツのサークルに入れるとは思えません。大学のスポーツのサークルには、きっと高校でサークルに入って、がんばっていた人が入るんでしょう。そんな人たちといっしょにスポーツを、私はできない……」
「そうか……」
ゆう子さんはしばらく考えていました。そして、
「メイはダンスはすき?」
と聞きました。
「アニメに出てくる人がおどってるシーンなんかはだいすきです。よく一人でアニメを見ながら、アニメの歌を歌っておどったりしています」
「よさこいソーランって知ってる? 日本のお祭のおどりと古い歌をあわせて作った、おもしろいダンスがあるんだ」
「よさこいソーラン?」
メイは聞いたこともありませんでした。メイのかおを見てゆう子さんは言いました。
「私の後輩が、よさこいソーランのサークルに入っているんだ。今はその人がチームをまとめてる。会いに行かない?」
「うん」
メイは「日本のお祭の時のおどり」という言葉をきいて、見てみたいと思いました。そして、そのゆう子さんの後輩に会うことにしました。
アパートはフリーWi-Fiがあるところを、ゆう子さんが見つけてくれました。大学までとても近くて、自転車で行けば7分、歩いて行っても15分くらいのところでした。メイは少し狭いけど、赤い屋根と白い壁が気に入りました。部屋の中には何もなかったけど、きれいでした。最初は、市役所へ行ったり、銀行へ行ったり、生活に必要なものを買ったり、スマートフォンの会社で契約をしたりして、とても忙しかったです。布団ももちろん買いました。カーペットやタオル、お風呂や洗濯用品、食器などは、アメリカにいたときにアルバイトでもらったお金で揃えました。それが終わってやっと生活が落ち着いたころに、やっと日本での学生生活が始まりました。
最初は日本語の授業が多かったです。日本語は本当にボキャブラリーが多くて覚えるのが大変でした。また、似ている意味の単語も多くて、いつ、どこでこの単語を使えばいいのかがとても難しかったです。また、漢字も覚えるのがとても大変でした。一つの漢字にいろいろな読み方があるのは、もちろん知っていましたが、覚えても覚えても知らない漢字の単語がどんどん出てきて絶望的になる事もありました。それだけではありません。日本のアニメを見ていたので分かっていましたが、相手と自分の関係や状況で文のスタイルが変わる事もメイを時々混乱させました。教室では、「行きましたか?」と勉強しますが、友だちと話すときは、「行った?」と言います。市役所へ外国人登録に行ったときに、市役所の職員さんが話す日本語とゆう子さんと話す日本語は、まるで違う国の言葉みたいでした。ゆう子さんは、上手にそれを使い分けていましたが、メイにはまだまだ難しかったです。いろいろ大変な事はありましたが、メイは
「がんばろう。」
そう言って、自分を励ましました。そして、メイの日本語はどんどん上達していきました。
日本語のクラスは全員が留学生でした。メイと同じ北アメリカだけでなく、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、南アメリカなど世界のいろいろな国や地域から留学生が集まっていました。日本のマンガやもちろんアニメファンが多く、アニメの話題を通じて、すぐに仲良くなりました。みんな日本のアニメに詳しくて、メイが知らないアニメのタイトルもよく知っている学生もいて、メイはとても驚きました。自分が一番、日本のアニメには詳しいと思っていたからです。
大学での勉強が始まって3か月が過ぎました。日本の大学での勉強にも、日本での生活にも慣れてきましたが、メイには一つ大きな悩みができました。この2か月で、クラスメイトの留学生や、大学で日本人の学生とも知り合いになりました。でも、メイがアメリカ人だと分かると、みんな日本語ではなく、英語で話そうとするのです。日本のクラスの留学生も、授業が終わると英語で話しかけてきました。最初は、もちろんコミュニケーションが楽だし、ちょっと難しいことは英語の方が、お互いの意思を伝えることができるので便利でした。他の留学生も、日本語より英語の方が上手な学生が多いみたいでした。だから、
「私の母語は英語だから私が分かるように、みんな英語で話してくれるのかな。」
と思って、あまり気にしませんでした。でも、だんだんそれが、日本語を話すことで、もっと日本語が上手になりたいというメイにとって、ストレスになってきました。
ある日、そろそろ期末試験が始まるので、みんなで試験について話そうと、一人の留学生が言いました。みんな、初めての試験だから試験の範囲やスケジュールなどを確認しようと賛成しました。メイはクラスメイトと授業の後に友人たちと、大学図書館にあるカフェに集まりました。でも、集まったクラスメイトはみんな英語で話して、メイが日本語で会話しようとしても、彼らはそれを無視して、自然に英語に戻ってしまいました。
「漢字はL1からL10で、7月24日の2限目ね。」
「文法はL1からL12で、25日の4限目ね。」
みんな英語で話しています。
「L8の文法がちょっと難しくて、教えてくれませんか。」
そんな質問が一人の留学生からあっても、英語で説明しています。
メイは現代の日本のアニメを通して、日本文化を勉強したくて日本へ来ました。だから、もっともっと日本語が上手になりたいのに、みんな日本語ではなく、英語で話してきます。母語が英語以外の留学生たちはお互いに日本語で話しています。でもメイにはいつも英語で話しかけてきます。
メイはだんだん教室でもクラスメイトと話さなくなりました。授業の後もアパートに戻って一人で勉強したり、アニメを見たりするようになりました。そして、期末試験が終わり、夏休みになりました。
メイは久しぶりにゆう子さんに電話をかけました。ゆう子さんは大学院の2年生になっていて修士論文を書くために毎日勉強しているから忙しかったです。メイはそれを知っていたので、あまり連絡をしていませんでした。
「メイ、久しぶりだね。」
長い間聞いていなかったゆう子さんの声を聞いて、メイは少し涙が出てきました。。
「ゆう子さん、お久しぶりです。お元気ですか。」
「うん、おかげさまで。で、どうしたの。」
ゆう子さんはメイが元気が無いのを、声を聞いてすぐに分かったようでした。
「実は…。」
メイが話せないのを聞いて、ゆう子さんは、
「どこかで会おうか。そうだ、メイのアパートの近くにランプっていう喫茶店があるでしょう。そこで、会わない?メイ、時間ある?」
「うん、夏休みだから…。」
「じゃあ、1時間後に。ランプで。」
ゆう子さんは電話を切りました。
喫茶店でメイの話を聞いたゆう子さんは、
「わかるなあ。私もアメリカから帰ったときは、同じ経験をしたよ。特に勉強熱心な学生は、私が帰国子女だってわかると英語で話しかけてきたからね。みんな、会話の練習をしたいのよ。日本で英会話の練習するのは、英会話教室へ行くとかじゃないと、なかなかできないからね。」
メイは、ゆう子さんに会って、自分の気持ちを打ち明けたら、少し気持ちが楽になりました。
「でも。私もそうだったんだよね。高校生の時はインターネットのビデオ通話でゆう子さんと日本語で話して、日本語を勉強したんだものね。」
ゆう子さんは笑って言いました。
「あの頃のメイは本当に勉強熱心だったよね。」
「楽しかったから。」
メイも笑って答えました。
「でも、メイはもっと日本語を勉強したいんでしょう。どうしたらいいかなあ。」
ゆう子さんは、しばらく黙って考えていました。そして、言いました。
「そうだ、メイ。メイはサークルに入ってないでしょう。大学のサークルに入ってみたら?」
「サークル…。」
「うん、サークルに入ったら、いろいろな人に会えるし、たくさん話せると思うよ。」
メイは考えました。メイは、小さいころから授業が終わるとすぐに家に帰って一人でアニメを見ていました。スポーツや音楽などのサークルに入ったことは一度もありませんでした。
「私がサークルに…?」
「うん。できれば文化系のサークルよりも、体を動かすサークルの方がいいかな。文化系のサークルだと、やっぱりみんな英語で話しちゃいそうだから。スポーツ系のサークルの方が、ミーティングやコンパの時に日本語が話せるんじゃないかな。」
メイはスポーツは学校の授業でしかしたことがありませんでした。
「絶対に無理です。大学のスポーツのサークルなんて。きっと高校でサークルに入って、頑張っていた人が入るんでしょう。そんな人たちと一緒にスポーツなんて…。」
「そうか…。」
ゆう子さんはまたしばらく考えていました。そして、
「メイはダンスは好き?」
と聞きました。
「アニメのキャラクターが踊っているシーンなんかは大好きです。よく一人でアニメを見ながら主題歌を歌って踊ったりしています。」
「よさこいソーランって知ってる? 日本のお祭りの踊りと古い歌を組み合わせた面白いダンスがあるんだけど…。」
「よさこいソーラン?」
メイは聞いたこともありませんでした。メイの顔を見てゆう子さんは言いました。
「私の後輩が、よさこいソーランのサークルに入っていて、チームリーダーなんだけど、会ってみる?」
「うん。」
メイは「日本のお祭りの時の踊り」という言葉にとても興味を持ちました。そして、そのゆう子さんの後輩に会ってみることにしました。
最初は日本語の授業が多かったです。日本語は本当にボキャブラリーが多くて覚えるのが大変でした。また、似ている意味の単語も多くて、いつ、どこでこの単語を使えばいいのかがとても難しかったです。また、漢字も覚えるのがとても大変でした。一つの漢字にいろいろな読み方があるのは、もちろん知っていましたが、覚えても覚えても知らない漢字の単語がどんどん出てきて絶望的になる事もありました。それだけではありません。日本のアニメを見ていたので分かっていましたが、相手と自分の関係や状況で文のスタイルが変わる事もメイを時々混乱させました。教室では、「行きましたか?」と勉強しますが、友だちと話すときは、「行った?」と言います。市役所へ外国人登録に行ったときに、市役所の職員さんが話す日本語とゆう子さんと話す日本語は、まるで違う国の言葉みたいでした。ゆう子さんは、上手にそれを使い分けていましたが、メイにはまだまだ難しかったです。いろいろ大変な事はありましたが、メイは
「がんばろう。」
そう言って、自分を励ましました。そして、メイの日本語はどんどん上達していきました。
日本語のクラスは全員が留学生でした。メイと同じ北アメリカだけでなく、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、南アメリカなど世界のいろいろな国や地域から留学生が集まっていました。日本のマンガやもちろんアニメファンが多く、アニメの話題を通じて、すぐに仲良くなりました。みんな日本のアニメに詳しくて、メイが知らないアニメのタイトルもよく知っている学生もいて、メイはとても驚きました。自分が一番、日本のアニメには詳しいと思っていたからです。
大学での勉強が始まって3か月が過ぎました。日本の大学での勉強にも、日本での生活にも慣れてきましたが、メイには一つ大きな悩みができました。この2か月で、クラスメイトの留学生や、大学で日本人の学生とも知り合いになりました。でも、メイがアメリカ人だと分かると、みんな日本語ではなく、英語で話そうとするのです。日本のクラスの留学生も、授業が終わると英語で話しかけてきました。最初は、もちろんコミュニケーションが楽だし、ちょっと難しいことは英語の方が、お互いの意思を伝えることができるので便利でした。他の留学生も、日本語より英語の方が上手な学生が多いみたいでした。だから、
「私の母語は英語だから私が分かるように、みんな英語で話してくれるのかな。」
と思って、あまり気にしませんでした。でも、だんだんそれが、日本語を話すことで、もっと日本語が上手になりたいというメイにとって、ストレスになってきました。
ある日、そろそろ期末試験が始まるので、みんなで試験について話そうと、一人の留学生が言いました。みんな、初めての試験だから試験の範囲やスケジュールなどを確認しようと賛成しました。メイはクラスメイトと授業の後に友人たちと、大学図書館にあるカフェに集まりました。でも、集まったクラスメイトはみんな英語で話して、メイが日本語で会話しようとしても、彼らはそれを無視して、自然に英語に戻ってしまいました。
「漢字はL1からL10で、7月24日の2限目ね。」
「文法はL1からL12で、25日の4限目ね。」
みんな英語で話しています。
「L8の文法がちょっと難しくて、教えてくれませんか。」
そんな質問が一人の留学生からあっても、英語で説明しています。
メイは現代の日本のアニメを通して、日本文化を勉強したくて日本へ来ました。だから、もっともっと日本語が上手になりたいのに、みんな日本語ではなく、英語で話してきます。母語が英語以外の留学生たちはお互いに日本語で話しています。でもメイにはいつも英語で話しかけてきます。
メイはだんだん教室でもクラスメイトと話さなくなりました。授業の後もアパートに戻って一人で勉強したり、アニメを見たりするようになりました。そして、期末試験が終わり、夏休みになりました。
メイは久しぶりにゆう子さんに電話をかけました。ゆう子さんは大学院の2年生になっていて修士論文を書くために毎日勉強しているから忙しかったです。メイはそれを知っていたので、あまり連絡をしていませんでした。
「メイ、久しぶりだね。」
長い間聞いていなかったゆう子さんの声を聞いて、メイは少し涙が出てきました。。
「ゆう子さん、お久しぶりです。お元気ですか。」
「うん、おかげさまで。で、どうしたの。」
ゆう子さんはメイが元気が無いのを、声を聞いてすぐに分かったようでした。
「実は…。」
メイが話せないのを聞いて、ゆう子さんは、
「どこかで会おうか。そうだ、メイのアパートの近くにランプっていう喫茶店があるでしょう。そこで、会わない?メイ、時間ある?」
「うん、夏休みだから…。」
「じゃあ、1時間後に。ランプで。」
ゆう子さんは電話を切りました。
喫茶店でメイの話を聞いたゆう子さんは、
「わかるなあ。私もアメリカから帰ったときは、同じ経験をしたよ。特に勉強熱心な学生は、私が帰国子女だってわかると英語で話しかけてきたからね。みんな、会話の練習をしたいのよ。日本で英会話の練習するのは、英会話教室へ行くとかじゃないと、なかなかできないからね。」
メイは、ゆう子さんに会って、自分の気持ちを打ち明けたら、少し気持ちが楽になりました。
「でも。私もそうだったんだよね。高校生の時はインターネットのビデオ通話でゆう子さんと日本語で話して、日本語を勉強したんだものね。」
ゆう子さんは笑って言いました。
「あの頃のメイは本当に勉強熱心だったよね。」
「楽しかったから。」
メイも笑って答えました。
「でも、メイはもっと日本語を勉強したいんでしょう。どうしたらいいかなあ。」
ゆう子さんは、しばらく黙って考えていました。そして、言いました。
「そうだ、メイ。メイはサークルに入ってないでしょう。大学のサークルに入ってみたら?」
「サークル…。」
「うん、サークルに入ったら、いろいろな人に会えるし、たくさん話せると思うよ。」
メイは考えました。メイは、小さいころから授業が終わるとすぐに家に帰って一人でアニメを見ていました。スポーツや音楽などのサークルに入ったことは一度もありませんでした。
「私がサークルに…?」
「うん。できれば文化系のサークルよりも、体を動かすサークルの方がいいかな。文化系のサークルだと、やっぱりみんな英語で話しちゃいそうだから。スポーツ系のサークルの方が、ミーティングやコンパの時に日本語が話せるんじゃないかな。」
メイはスポーツは学校の授業でしかしたことがありませんでした。
「絶対に無理です。大学のスポーツのサークルなんて。きっと高校でサークルに入って、頑張っていた人が入るんでしょう。そんな人たちと一緒にスポーツなんて…。」
「そうか…。」
ゆう子さんはまたしばらく考えていました。そして、
「メイはダンスは好き?」
と聞きました。
「アニメのキャラクターが踊っているシーンなんかは大好きです。よく一人でアニメを見ながら主題歌を歌って踊ったりしています。」
「よさこいソーランって知ってる? 日本のお祭りの踊りと古い歌を組み合わせた面白いダンスがあるんだけど…。」
「よさこいソーラン?」
メイは聞いたこともありませんでした。メイの顔を見てゆう子さんは言いました。
「私の後輩が、よさこいソーランのサークルに入っていて、チームリーダーなんだけど、会ってみる?」
「うん。」
メイは「日本のお祭りの時の踊り」という言葉にとても興味を持ちました。そして、そのゆう子さんの後輩に会ってみることにしました。