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大学はどうする?
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Coming soon!
日本でいう高校2年の夏休みの前、シュテファンはそろそろ大学のことをよくかんがえなければならないと思いました。大学で何を勉強したいのか、そのあとでどんな仕事をしたいのか、いろいろとかんがえました。でも、一番すきなのは日本のアニメ……でも、アニメをかくことはできません。見るだけです。
(どうしたらいいか、わからない……)
シュテファンは「もやもや」しました。
お父さんとお母さんはドイツのいい大学に入って、いい会社で働けばいいと思っています。でも、シュテファンは何かちがうことがしたいのです。
(すきなアニメの国、日本へ行くのはどうだろう。行けば、やりたいことが見つかるかもしれない……)
そう思ったシュテファンは、日本に留学したことがある日本語教室のクラウス先生に相談しようと思いました。
つぎの日、日本語教室でクラウス先生に聞きました。
「先生、日本の大学への留学にきょうみがあるんですが、どう思われますか」
すると、先生は、
「日本で勉強したいことがあったら、いいことだと思います」
と言いました。
「勉強したいことがはっきりわからなかったらどうですか」
「うーん、わからなくても、どこかの学部に入らなければなりませんね。学部をきめないと入学のためのテストも、うけられません。しかし入ってからちがう学部にかえることができる大学もあります。それに、勉強したいことがわからなくても、ごうかくできた学部に入って勉強している日本人学生はけっこう多いようです」
「そうですか。外国から留学するときは どうすればいいですか」
「自分の国の学校から日本の大学に入学する場合や、自分の国の大学に入ってから留学する場合などがあります。私はドイツの大学に入ってから1年留学しました。今かんがえると、もっと長く日本にいたかったです」
「そうですか。ありがとうございます。かんがえてみます」
シュテファンは前むきにかんがえることにしました。
その日の夜、シュテファンはお父さんとお母さんに聞きました。
「ぼくが日本に留学したいって言ったら、どう思う?」
「シュテファンは日本で勉強したいことがあるのか?」
「うーん、今はよくわからない」
「それじゃ、行ってもしょうがないんじゃない?」
「そうね。私もそう思う」
お父さんもお母さんも同じような意見でした。シュテファンは
「そっか……」
と言って、この日はこの話を終わりにしました。
(ぼくが日本で勉強したいことは何だろう?)
シュテファンの気持ちは「もやもや」していました。
(今は日本のアニメがすきだけれど、それで何がしたいんだろう? 何ができるんだろう?)
日本のアニメがすきな外国人はたくさんいます。でも、日本でそれを仕事にしている人は多くないです。
(ぼくはアニメの仕事ができるのかな? アニメの仕事ができれば、とてもうれしいけど。ドイツではアニメの仕事が少なそうだから、日本のアニメの仕事について、ちょっとしらべよう)
シュテファンはインターネットでしらべることにしました。すると、つぎのことがわかりました。
まず、アニメの仕事には作る仕事と見せるための仕事があります。
作る仕事には、アニメの絵をかく仕事、アニメに色をつける仕事、アニメの写真やビデオをとる仕事、アニメに出てくる人に声をつける、せいゆうの仕事、アニメの音や音楽を作る仕事などがあります。また、アニメの全てのことに関係する仕事として、トップであるかんとく、シナリオをかんがえる仕事、全部をまとめていいアニメにする仕事などがあります。
それから、アニメを見せるための仕事には、アニメのプランをかんがえてスケジュールやお金のかんりをする仕事、アニメをいろいろなところに売る仕事、イベントをする仕事、グッズを作って売る仕事などがあります。
このように、アニメの仕事にはいろいろな仕事があることがわかりました。
(いろいろな仕事があるんだ。ぼくは、アニメの絵はかけないけれど、アニメを見せるための仕事なら、できるかもしれない)
シュテファンは思いました。
(アニメのプランをかんがえるのはかんたんじゃない。でも、いろいろなけいけんをすれば、アイデアが生まれるかもしれない。それをいろいろなところに売って、たくさんの人が見てくれたら、きっとうれしい。いい仕事だ)
シュテファンは、しょうらいへの道が少し見えて、「もやもや」がうすくなった気がしました。
シュテファンは1週間ぐらいかんがえました。そして、すきなアニメの仕事をするのも悪くないと思って、お父さんとお母さんに話しました。
「お父さん、お母さん、日本に留学して、アニメのことをもっとくわしく知りたいと思ってるんだ。しょうらい、たくさんの人にいいアニメを見てもらえるように、アニメをいろいろなところに売るようなしごとができたらいいなと思って……」
「それ、日本でやりたいの?」
お父さんは聞きました。
「外国人がそんな仕事を日本でするのは大変なんじゃない? やりたい日本人がたくさんいるはずだし……」
「でも、日本のアニメをドイツで見てもらうための仕事があればいいかもしれない。今、日本のアニメがたくさん入ってきているから」
お母さんは言いました。
「そうだね。きっと何か仕事があると思う」
シュテファンは言いました。
「まあ、そうかもしれないけれど、アニメの仕事だけじゃなくて、日本とドイツにかんけいがある仕事はいろいろあると思うよ。少し広くかんがえたら?」
お父さんはそう言って、つづけます。
「シュテファンはアニメの仕事ができればいいと思っているだろうけれど、もっと広くかんがえたほうがいい。広く考えたら、アニメにかんけいがある仕事が見つかることもある」
「それなら、どんな勉強をすればいい?」
シュテファンは言いました。
「そうだね……マネジメントの勉強とかが、仕事に役に立つかな」
お父さんは言いました。
それからシュテファンは、マネジメントの勉強にはどんなものがあるか、しらべました。経営学や会計学などがありました。シュテファンは、日本でこの勉強ができる大学をさがそうと思いました。そして、日本に留学することを、しんけんにかんがえようと思ったのです。
つぎの日、もう一度、クラウス先生に相談することにしました。先生の話から、日本で経営学を勉強するなら、東南大学がレベルが高くて有名なことがわかりました。しかし、授業はほとんど日本語でするので、日本語の力が高くないとむずかしいそうです。そして、外国人が入るには、ドイツの学校から入る場合と、こうかん留学生として入る場合があることもわかりました。ドイツの学校から入る場合は、留学生はみんな日本語のテストを受けます。その大学のめんせつも受けます。紙に問題が書いてあるテストではなく、しつもんされることにその場で答えるしけんです。むずかしいですが、入れば、日本人と同じように4年間勉強できます。こうかん留学は1年ぐらいが多いそうです。
シュテファンは思いました。
(1年はすぐに終わるだろう。やっぱり日本のアニメや日本についてふかく知りたかったら、長ければ長いほどいいんじゃないかな。日本の大学に入るのは大変そうだけれど。それに、日本語で授業をうけたり、ちがう国で一人で生活したりするのも大変そうだけれど)
シュテファンはまた1週間ぐらいかんがえて、お父さんとお母さんに、日本の東南大学に留学して経営学を勉強したいと話しました。
「ドイツの学校からちょくせつ日本の大学に入るということ?」
お母さんは聞きました。
「うん、そう。入れれば、4年は日本にいることになる」
「そんなに長くいなければならないの?」
「うん、日本についてふかく知りたかったら、長ければ長いほどいいと思うんだ」
「そう」
お母さんは少しさびしそうに言いました。
「これからがんばって、しけんの勉強をしようと思うんだ。むずかしいみたいだから」
「それで日本で仕事をしたいの?」
お父さんは聞きました。
「うん。日本だけじゃなくてドイツでも。日本とドイツで仕事ができればいいと思ってる。アニメの仕事なら一番いいけれど」
「もう決めてるなら、お父さんは言うことはないよ」
お父さんは言いました。
「そうね。がんばって、と言うことしか、私たちにはできない」
お母さんも言いました。
シュテファンは、「もやもや」が消えていくのをかんじて、うれしくなりました。
それから1年ぐらい、シュテファンはがんばって日本語を勉強しました。毎日漢字や言葉をおぼえたり、日本語を聞いたりしました。文法や文章を読む問題や今までの留学生のテストの問題にも、たくさん答えました。日本語で日記をつけたり、書くことを決めて日本語の文章を書いたりもしました。日本語教室では、勉強した日本語をできるだけたくさん使ってクラウス先生と話しました。わからないことはわかるまでクラウス先生に聞きました。ステファンはそれまでにけいけんしたことがないぐらい、がんばったのです。
つぎの年の秋になりました。今日は留学生のテストの日です。シュテファンはベルリンのテスト会場に行きました。部屋に入ると、テストをうける学生が40人ぐらい、すわっていました。シュテファンは少し心配になりましたが、
(がんばって勉強してきたからだいじょうぶ!)
と思って、いすにすわりました。
テストが始まりました。日本語を読む問題、聞く問題、文章を書く問題にがんばって答えたので、終わったら、とてもつかれてしまいました。でも、まあまあできたかな、と思って少し安心しました。
帰るとき、ほかの学生といっしょになったので、少し話してみました。その学生はとても背が高くて、カールという名前でした。カールは言いました。
「ぼくは、東南大学の理工学部で日本の建物について勉強したいんです。」
「えっ、そうなんですか。ぼくも東南大学の経営学部に入りたいんです。」
カールとシュテファンはわらって話しました。そして、二人で
「つぎの東南大学のめんせつも、がんばりましょう!」
と言いました。
冬になりました。今日は東南大学のめんせつの日です。オンラインでうけることになっています。シュテファンはパソコンのじゅんびをして、がめんを見ました。「じゅけん番号3番のシュテファンさんですね。」
東南大学の先生が話し始めました。
「はい、シュテファンともうします。よろしくおねがいいたします。」
「これからめんせつを始めます。シュテファンさんはどうして東南大学に入りたいと思いましたか。」
「日本のアニメが大変すきで、日本にきょうみを持ちました。日本でアニメに関係がある仕事をしたいと思っていましたが、絵がかけないので、アニメのプランを出したり、アニメを売ったりする仕事をしたいと思うようになりました。そのためには経営学の勉強が役に立つと思っています。こちらの大学の経営学部は長い歴史があってレベルの高い勉強ができることを知りました。そのため入りたいと思いました。」
「そうですか。しょうらいは日本で働きたいのですか。」
「日本とドイツの、りょうほうで働きたいと思っています。ドイツ人であることを生かして、日本のいいアニメをドイツにしょうかいする仕事などができたらいいとかんがえています。」
めんせつは、ぶじに終わりました。あとはけっかを待つだけです。シュテファンは
(ごうかくできますように。)
といのりました。
つぎの日の午後。ごうかくしたか、おちたかの、けっかがインターネットで分かります。シュテファンはこわい、と思いながら、「けっかを見る」というボタンをクリックしました。じゅけん番号3…
「あった!」
ステファンは大きな声で言ってしまいました。
(どうしたらいいか、わからない……)
シュテファンは「もやもや」しました。
お父さんとお母さんはドイツのいい大学に入って、いい会社で働けばいいと思っています。でも、シュテファンは何かちがうことがしたいのです。
(すきなアニメの国、日本へ行くのはどうだろう。行けば、やりたいことが見つかるかもしれない……)
そう思ったシュテファンは、日本に留学したことがある日本語教室のクラウス先生に相談しようと思いました。
つぎの日、日本語教室でクラウス先生に聞きました。
「先生、日本の大学への留学にきょうみがあるんですが、どう思われますか」
すると、先生は、
「日本で勉強したいことがあったら、いいことだと思います」
と言いました。
「勉強したいことがはっきりわからなかったらどうですか」
「うーん、わからなくても、どこかの学部に入らなければなりませんね。学部をきめないと入学のためのテストも、うけられません。しかし入ってからちがう学部にかえることができる大学もあります。それに、勉強したいことがわからなくても、ごうかくできた学部に入って勉強している日本人学生はけっこう多いようです」
「そうですか。外国から留学するときは どうすればいいですか」
「自分の国の学校から日本の大学に入学する場合や、自分の国の大学に入ってから留学する場合などがあります。私はドイツの大学に入ってから1年留学しました。今かんがえると、もっと長く日本にいたかったです」
「そうですか。ありがとうございます。かんがえてみます」
シュテファンは前むきにかんがえることにしました。
その日の夜、シュテファンはお父さんとお母さんに聞きました。
「ぼくが日本に留学したいって言ったら、どう思う?」
「シュテファンは日本で勉強したいことがあるのか?」
「うーん、今はよくわからない」
「それじゃ、行ってもしょうがないんじゃない?」
「そうね。私もそう思う」
お父さんもお母さんも同じような意見でした。シュテファンは
「そっか……」
と言って、この日はこの話を終わりにしました。
(ぼくが日本で勉強したいことは何だろう?)
シュテファンの気持ちは「もやもや」していました。
(今は日本のアニメがすきだけれど、それで何がしたいんだろう? 何ができるんだろう?)
日本のアニメがすきな外国人はたくさんいます。でも、日本でそれを仕事にしている人は多くないです。
(ぼくはアニメの仕事ができるのかな? アニメの仕事ができれば、とてもうれしいけど。ドイツではアニメの仕事が少なそうだから、日本のアニメの仕事について、ちょっとしらべよう)
シュテファンはインターネットでしらべることにしました。すると、つぎのことがわかりました。
まず、アニメの仕事には作る仕事と見せるための仕事があります。
作る仕事には、アニメの絵をかく仕事、アニメに色をつける仕事、アニメの写真やビデオをとる仕事、アニメに出てくる人に声をつける、せいゆうの仕事、アニメの音や音楽を作る仕事などがあります。また、アニメの全てのことに関係する仕事として、トップであるかんとく、シナリオをかんがえる仕事、全部をまとめていいアニメにする仕事などがあります。
それから、アニメを見せるための仕事には、アニメのプランをかんがえてスケジュールやお金のかんりをする仕事、アニメをいろいろなところに売る仕事、イベントをする仕事、グッズを作って売る仕事などがあります。
このように、アニメの仕事にはいろいろな仕事があることがわかりました。
(いろいろな仕事があるんだ。ぼくは、アニメの絵はかけないけれど、アニメを見せるための仕事なら、できるかもしれない)
シュテファンは思いました。
(アニメのプランをかんがえるのはかんたんじゃない。でも、いろいろなけいけんをすれば、アイデアが生まれるかもしれない。それをいろいろなところに売って、たくさんの人が見てくれたら、きっとうれしい。いい仕事だ)
シュテファンは、しょうらいへの道が少し見えて、「もやもや」がうすくなった気がしました。
シュテファンは1週間ぐらいかんがえました。そして、すきなアニメの仕事をするのも悪くないと思って、お父さんとお母さんに話しました。
「お父さん、お母さん、日本に留学して、アニメのことをもっとくわしく知りたいと思ってるんだ。しょうらい、たくさんの人にいいアニメを見てもらえるように、アニメをいろいろなところに売るようなしごとができたらいいなと思って……」
「それ、日本でやりたいの?」
お父さんは聞きました。
「外国人がそんな仕事を日本でするのは大変なんじゃない? やりたい日本人がたくさんいるはずだし……」
「でも、日本のアニメをドイツで見てもらうための仕事があればいいかもしれない。今、日本のアニメがたくさん入ってきているから」
お母さんは言いました。
「そうだね。きっと何か仕事があると思う」
シュテファンは言いました。
「まあ、そうかもしれないけれど、アニメの仕事だけじゃなくて、日本とドイツにかんけいがある仕事はいろいろあると思うよ。少し広くかんがえたら?」
お父さんはそう言って、つづけます。
「シュテファンはアニメの仕事ができればいいと思っているだろうけれど、もっと広くかんがえたほうがいい。広く考えたら、アニメにかんけいがある仕事が見つかることもある」
「それなら、どんな勉強をすればいい?」
シュテファンは言いました。
「そうだね……マネジメントの勉強とかが、仕事に役に立つかな」
お父さんは言いました。
それからシュテファンは、マネジメントの勉強にはどんなものがあるか、しらべました。経営学や会計学などがありました。シュテファンは、日本でこの勉強ができる大学をさがそうと思いました。そして、日本に留学することを、しんけんにかんがえようと思ったのです。
つぎの日、もう一度、クラウス先生に相談することにしました。先生の話から、日本で経営学を勉強するなら、東南大学がレベルが高くて有名なことがわかりました。しかし、授業はほとんど日本語でするので、日本語の力が高くないとむずかしいそうです。そして、外国人が入るには、ドイツの学校から入る場合と、こうかん留学生として入る場合があることもわかりました。ドイツの学校から入る場合は、留学生はみんな日本語のテストを受けます。その大学のめんせつも受けます。紙に問題が書いてあるテストではなく、しつもんされることにその場で答えるしけんです。むずかしいですが、入れば、日本人と同じように4年間勉強できます。こうかん留学は1年ぐらいが多いそうです。
シュテファンは思いました。
(1年はすぐに終わるだろう。やっぱり日本のアニメや日本についてふかく知りたかったら、長ければ長いほどいいんじゃないかな。日本の大学に入るのは大変そうだけれど。それに、日本語で授業をうけたり、ちがう国で一人で生活したりするのも大変そうだけれど)
シュテファンはまた1週間ぐらいかんがえて、お父さんとお母さんに、日本の東南大学に留学して経営学を勉強したいと話しました。
「ドイツの学校からちょくせつ日本の大学に入るということ?」
お母さんは聞きました。
「うん、そう。入れれば、4年は日本にいることになる」
「そんなに長くいなければならないの?」
「うん、日本についてふかく知りたかったら、長ければ長いほどいいと思うんだ」
「そう」
お母さんは少しさびしそうに言いました。
「これからがんばって、しけんの勉強をしようと思うんだ。むずかしいみたいだから」
「それで日本で仕事をしたいの?」
お父さんは聞きました。
「うん。日本だけじゃなくてドイツでも。日本とドイツで仕事ができればいいと思ってる。アニメの仕事なら一番いいけれど」
「もう決めてるなら、お父さんは言うことはないよ」
お父さんは言いました。
「そうね。がんばって、と言うことしか、私たちにはできない」
お母さんも言いました。
シュテファンは、「もやもや」が消えていくのをかんじて、うれしくなりました。
それから1年ぐらい、シュテファンはがんばって日本語を勉強しました。毎日漢字や言葉をおぼえたり、日本語を聞いたりしました。文法や文章を読む問題や今までの留学生のテストの問題にも、たくさん答えました。日本語で日記をつけたり、書くことを決めて日本語の文章を書いたりもしました。日本語教室では、勉強した日本語をできるだけたくさん使ってクラウス先生と話しました。わからないことはわかるまでクラウス先生に聞きました。ステファンはそれまでにけいけんしたことがないぐらい、がんばったのです。
つぎの年の秋になりました。今日は留学生のテストの日です。シュテファンはベルリンのテスト会場に行きました。部屋に入ると、テストをうける学生が40人ぐらい、すわっていました。シュテファンは少し心配になりましたが、
(がんばって勉強してきたからだいじょうぶ!)
と思って、いすにすわりました。
テストが始まりました。日本語を読む問題、聞く問題、文章を書く問題にがんばって答えたので、終わったら、とてもつかれてしまいました。でも、まあまあできたかな、と思って少し安心しました。
帰るとき、ほかの学生といっしょになったので、少し話してみました。その学生はとても背が高くて、カールという名前でした。カールは言いました。
「ぼくは、東南大学の理工学部で日本の建物について勉強したいんです。」
「えっ、そうなんですか。ぼくも東南大学の経営学部に入りたいんです。」
カールとシュテファンはわらって話しました。そして、二人で
「つぎの東南大学のめんせつも、がんばりましょう!」
と言いました。
冬になりました。今日は東南大学のめんせつの日です。オンラインでうけることになっています。シュテファンはパソコンのじゅんびをして、がめんを見ました。「じゅけん番号3番のシュテファンさんですね。」
東南大学の先生が話し始めました。
「はい、シュテファンともうします。よろしくおねがいいたします。」
「これからめんせつを始めます。シュテファンさんはどうして東南大学に入りたいと思いましたか。」
「日本のアニメが大変すきで、日本にきょうみを持ちました。日本でアニメに関係がある仕事をしたいと思っていましたが、絵がかけないので、アニメのプランを出したり、アニメを売ったりする仕事をしたいと思うようになりました。そのためには経営学の勉強が役に立つと思っています。こちらの大学の経営学部は長い歴史があってレベルの高い勉強ができることを知りました。そのため入りたいと思いました。」
「そうですか。しょうらいは日本で働きたいのですか。」
「日本とドイツの、りょうほうで働きたいと思っています。ドイツ人であることを生かして、日本のいいアニメをドイツにしょうかいする仕事などができたらいいとかんがえています。」
めんせつは、ぶじに終わりました。あとはけっかを待つだけです。シュテファンは
(ごうかくできますように。)
といのりました。
つぎの日の午後。ごうかくしたか、おちたかの、けっかがインターネットで分かります。シュテファンはこわい、と思いながら、「けっかを見る」というボタンをクリックしました。じゅけん番号3…
「あった!」
ステファンは大きな声で言ってしまいました。
日本でいう高校2年の夏休みの前、シュテファンはそろそろ大学のことをよくかんがえなければならないと思いました。大学で何を勉強したいのか、そのあとでどんな仕事をしたいのか、いろいろとかんがえてみました。でも、一番好きなのは日本のアニメ・・・、でも、アニメをかくことはできません。見るだけです。
(どうしたらいいか、わからない……。)
シュテファンは「もやもや」しました。
お父さんとお母さんはドイツのいい大学に入って、いい会社で働けばいいと思っています。でも、シュテファンは何かちがうことがしてみたいのです。
(好きなアニメの国、日本へ行くのはどうだろう。行ってみれば、やりたいことが見つかるかもしれない……。)
そう思ったシュテファンは、日本に留学したことがある日本語教室のクラウス先生に相談してみようと思いました。
つぎの日、日本語教室でクラウス先生に聞きました。
「先生、日本の大学への留学にきょうみがあるんですが、どう思われますか。」
すると、先生は、
「そうですね。日本で勉強したいことがあったら、いいことだと思います。」
と言いました。
「勉強したいことがはっきりわからなかったらどうですか。」
「うーん、わからなくても、どこかの学部に入らなければなりませんね。学部を決めないと入学しけんもうけられません。ただ、入ってからちがう学部に変わることができる大学もありますよ。それに、勉強したいことがわからなくても、ごうかくできた学部に入って勉強している日本人学生はけっこう多いようですね。」
「そうですか。外国から留学するときは どうすればいいですか。」
「自分の国の学校から日本の大学に入学する場合や、自分の国の大学に入ってそこから留学する場合などがあります。私はドイツの大学に入ってから1年留学しました。今かんがえると、もう少し日本にいたかったなあ、と思います。」
「そうですか。ありがとうございます。かんがえてみます。」
シュテファンは前むきにかんがえてみることにしました。
その日の夜、シュテファンはお父さんとお母さんに聞いてみました。
「ぼくが日本に留学したいって言ったら、どう思う?」
「シュテファンは日本で勉強したいことがあるのか?」
「うーん、今はよくわからないけど。」
「それじゃ、行ってもしょうがないんじゃない?」
「そうね。私もそう思うわ。」
お父さんもお母さんも同じような意見でした。シュテファンは
「そっか……。」
と言って、この日はこの話を終わりにしました。
(ぼくが日本で勉強したいことって何だろう?)
シュテファンの気持ちは「もやもや」していました。
(今は日本のアニメが好きだけど、それで何がしたいんだろう? 何ができるんだろう?)
日本のアニメが好きな外国人はたくさんいます。でも、日本でそれを仕事にしている人は多くないです。
(ぼくはアニメの仕事ができるのかなあ? アニメの仕事ができれば、とてもうれしいけど。ドイツではアニメの仕事が少なそうだから、日本のアニメの仕事について、ちょっとしらべてみよう。)
シュテファンはインターネットでしらべてみることにしました。すると、つぎのことがわかりました。
まず、アニメの仕事には作る仕事と見せるための仕事があります。
作る仕事には、アニメの絵をかく仕事、アニメに色をつける仕事、アニメの写真やビデオをとる仕事、声でアニメに出てくる人をえんじる、せいゆうの仕事、アニメの音や音楽を作る仕事などがあります。また、アニメ全体に関係する仕事として、トップであるかんとく、シナリオをかんがえる仕事、全体をまとめていいアニメにする仕事などがあります。
それから、アニメを見せるための仕事には、アニメのプランをかんがえてスケジュールやお金のマネジメントをする仕事、アニメをいろいろなところに売る仕事、イベントをする仕事、グッズを作って売る仕事などがあります。
このように、アニメの仕事にはいろいろな仕事があることがわかりました。
(いろいろな仕事があるんだなあ。ぼくは、アニメの絵はかけないけど、アニメを見せるための仕事なら、できるかもしれない。)
シュテファンは思いました。
(アニメのプランをかんがえるのはかんたんじゃないけど、いろいろなけいけんをすれば、アイデアが生まれるかもしれない。それをいろいろなところに売って、たくさんの人が見てくれたら、きっとうれしいよね。いい仕事だよね。)
シュテファンは、しょうらいへの道が少し見えて、「もやもや」がうすくなった気がしました。
シュテファンは1週間ぐらいかんがえました。そして、好きなアニメの仕事をするのも悪くないと思って、お父さんとお母さんに話してみました。
「お父さん、お母さん、日本に留学して、アニメのことをもっとくわしく知りたいと思ってるんだ。しょうらい、たくさんの人にいいアニメを見てもらえるように、アニメをいろいろなところに売るようなしごとができたらいいなと思って……」
「それ、日本でやりたいの?」
お父さんは聞きました。
「外国人がそんな仕事を日本でするのは大変なんじゃない? やりたい日本人がたくさんいるはずだし…。」
「でも、日本のアニメをドイツで見てもらうための仕事があればいいかもね。今、日本のアニメがたくさん入ってきてるし。」
お母さんは言いました。
「そうだね。きっと何か仕事があるよね。」
シュテファンは言いました。
「まあ、そうかもしれないけど、アニメの仕事だけじゃなくて、日本とドイツにかんけいがある仕事はいろいろあると思うよ。少し広くかんがえてみたら?」
お父さんはそう言って、つづけます。
「シュテファンはアニメの仕事ができればいいと思ってるだろうけど、広くかんがえたほうが、アニメにかんけいがある仕事にもっと近づけるかもしれないね。」
「それなら、どんな勉強をすればいい?」
シュテファンは言いました。
「そうだね……マネジメントの勉強とかビジネスに役に立つかな。」
お父さんは言いました。
それからシュテファンは、マネジメントの勉強にはどんなものがあるか、しらべました。経営学や会計学などがありました。シュテファンは、日本でこの勉強ができる大学をさがそうと思いました。そして、日本に留学することを本気でかんがえようと思ったのです。
つぎの日、もう一度、クラウス先生に相談してみることにしました。先生の話から、日本で経営学を勉強するなら、東南大学がレベルが高くて有名なことがわかりました。ただ、じゅぎょうはほとんど日本語でするので、日本語の力が高くないとむずかしいそうです。そして、外国人が入るには、ドイツの学校からちょくせつ入る場合と、こうかん留学生として入る場合があることもわかりました。ちょくせつ入る場合は、すべての留学生に対しておこなわれる日本語のテストとその大学のめんせつがあって、かんたんではないようです。でも、入れば、日本人と同じように4年間勉強できます。こうかん留学生はふつう1年ぐらいだそうです。
シュテファンは思いました。
(1年はあっという間に終わるだろう。やっぱり日本のアニメや日本についてふかく知りたかったら、長ければ長いほどいいんじゃないかな。日本の大学に入るのは大変そうだけど。それに、日本語でじゅぎょうをうけたり、ちがう国で一人で生活したりするのも大変そうだけど。)
シュテファンはまた1週間ぐらいかんがえて、お父さんとお母さんに、日本の東南大学に留学して経営学を勉強したいと話しました。
「ドイツの学校からちょくせつ日本の大学に入るってこと?」
お母さんは聞きました。
「うん、そう。入れれば、4年は日本にいることになる。」
「そんなに長くいなければならないの?」
「うん、日本についてふかく知りたかったら、長ければ長いほどいいと思うんだ。」
「そう。」
お母さんは少しさびしそうに言いました。
「これからがんばって、しけんの勉強をしようと思ってるんだ。かんたんじゃないみたいだから。」
「それで日本で仕事をしたいの?」
お父さんは聞きました。
「うん。日本だけじゃなくてドイツでも。日本とドイツで仕事ができればいいと思ってる。アニメの仕事なら一番いいけどね。」
「もう決めてるなら、お父さんは言うことはないよ。」
お父さんは言いました。
「そうね。がんばって、って言うだけだわ。」
お母さんも言いました。
シュテファンは、「もやもや」が消えていくのを感じてうれしくなりました。
それから1年間ぐらい、シュテファンはいっしょうけんめい日本語を勉強しました。毎日漢字や言葉をおぼえたり、日本語を聞いたりしました。文法や文章を読む問題や今までの留学生のテストの問題にも、たくさん答えました。日本語で日記をつけたり、テーマを決めて文章を書いたりもしました。日本語教室では、勉強した日本語をできるだけたくさん使ってクラウス先生と話しました。わからないことはわかるまでクラウス先生に聞きました。ステファンはそれまでにけいけんしたことがないぐらい、がんばったのです。
つぎの年の秋になりました。今日は留学生のテストの日です。シュテファンはベルリンのしけん会場に行きました。部屋に入ると、テストをうける学生が40人ぐらい、すわっていました。シュテファンは少し心配になりましたが、
(がんばって勉強してきたからだいじょうぶ!)
と思って、いすにすわりました。
テストが始まりました。日本語を読む問題、聞く問題、文章を書く問題にいっしょうけんめい答えたので、終わったら、とてもつかれてしまいました。でも、まあまあできたかな、と思って少し安心しました。
帰るとき、ほかの学生といっしょになったので、少し話してみました。その学生はとても背が高くて、カールという名前でした。カールは言いました。
「ぼくは、東南大学の理工学部で日本の建物について勉強したいんです。」
「えっ、そうなんですか。ぼくも東南大学の経営学部に入りたいんです。」
カールとシュテファンは、にっこりわらいました。そして、おたがいに
「つぎの東南大学のめんせつもがんばりましょう!」
と言いました。
冬になりました。今日は東南大学のめんせつの日です。オンラインでうけることになっています。シュテファンはインターネットをつないで、画面を見ました。「じゅけん番号3番のシュテファンさんですね。」
東南大学の先生が話し始めました。
「はい、シュテファンともうします。よろしくおねがいいたします。」
「これからめんせつを始めます。シュテファンさんはどうして東南大学に入りたいと思いましたか。」
「日本のアニメが大変好きで、日本にきょうみを持ちました。日本でアニメに関係がある仕事をしたいと思っていましたが、絵がかけないので、アニメのプランを出したり、売ったりする仕事をしたいと思うようになりました。そのためには経営学の勉強が役に立つと思っています。こちらの大学の経営学部はでんとうがあってレベルの高い勉強ができることを知りました。それで入りたいと思いました。」
「そうですか。しょうらいは日本で働きたいのですか。」
「日本とドイツのりょうほうで働きたいと思っています。ドイツ人であることを生かして、日本のいいアニメをドイツにしょうかいする仕事などができたらいいとかんがえています。」
めんせつはぶじに終わりました。あとはけっかを待つだけです。シュテファンは
(ごうかくできますように。)
といのりました。
つぎの日の午後、インターネットでけっかのはっぴょうがありました。シュテファンはこわい、と思いながら、「けっかを見る」というボタンをクリックしました。じゅけん番号3…
「あった!」
ステファンはさけびました。
(どうしたらいいか、わからない……。)
シュテファンは「もやもや」しました。
お父さんとお母さんはドイツのいい大学に入って、いい会社で働けばいいと思っています。でも、シュテファンは何かちがうことがしてみたいのです。
(好きなアニメの国、日本へ行くのはどうだろう。行ってみれば、やりたいことが見つかるかもしれない……。)
そう思ったシュテファンは、日本に留学したことがある日本語教室のクラウス先生に相談してみようと思いました。
つぎの日、日本語教室でクラウス先生に聞きました。
「先生、日本の大学への留学にきょうみがあるんですが、どう思われますか。」
すると、先生は、
「そうですね。日本で勉強したいことがあったら、いいことだと思います。」
と言いました。
「勉強したいことがはっきりわからなかったらどうですか。」
「うーん、わからなくても、どこかの学部に入らなければなりませんね。学部を決めないと入学しけんもうけられません。ただ、入ってからちがう学部に変わることができる大学もありますよ。それに、勉強したいことがわからなくても、ごうかくできた学部に入って勉強している日本人学生はけっこう多いようですね。」
「そうですか。外国から留学するときは どうすればいいですか。」
「自分の国の学校から日本の大学に入学する場合や、自分の国の大学に入ってそこから留学する場合などがあります。私はドイツの大学に入ってから1年留学しました。今かんがえると、もう少し日本にいたかったなあ、と思います。」
「そうですか。ありがとうございます。かんがえてみます。」
シュテファンは前むきにかんがえてみることにしました。
その日の夜、シュテファンはお父さんとお母さんに聞いてみました。
「ぼくが日本に留学したいって言ったら、どう思う?」
「シュテファンは日本で勉強したいことがあるのか?」
「うーん、今はよくわからないけど。」
「それじゃ、行ってもしょうがないんじゃない?」
「そうね。私もそう思うわ。」
お父さんもお母さんも同じような意見でした。シュテファンは
「そっか……。」
と言って、この日はこの話を終わりにしました。
(ぼくが日本で勉強したいことって何だろう?)
シュテファンの気持ちは「もやもや」していました。
(今は日本のアニメが好きだけど、それで何がしたいんだろう? 何ができるんだろう?)
日本のアニメが好きな外国人はたくさんいます。でも、日本でそれを仕事にしている人は多くないです。
(ぼくはアニメの仕事ができるのかなあ? アニメの仕事ができれば、とてもうれしいけど。ドイツではアニメの仕事が少なそうだから、日本のアニメの仕事について、ちょっとしらべてみよう。)
シュテファンはインターネットでしらべてみることにしました。すると、つぎのことがわかりました。
まず、アニメの仕事には作る仕事と見せるための仕事があります。
作る仕事には、アニメの絵をかく仕事、アニメに色をつける仕事、アニメの写真やビデオをとる仕事、声でアニメに出てくる人をえんじる、せいゆうの仕事、アニメの音や音楽を作る仕事などがあります。また、アニメ全体に関係する仕事として、トップであるかんとく、シナリオをかんがえる仕事、全体をまとめていいアニメにする仕事などがあります。
それから、アニメを見せるための仕事には、アニメのプランをかんがえてスケジュールやお金のマネジメントをする仕事、アニメをいろいろなところに売る仕事、イベントをする仕事、グッズを作って売る仕事などがあります。
このように、アニメの仕事にはいろいろな仕事があることがわかりました。
(いろいろな仕事があるんだなあ。ぼくは、アニメの絵はかけないけど、アニメを見せるための仕事なら、できるかもしれない。)
シュテファンは思いました。
(アニメのプランをかんがえるのはかんたんじゃないけど、いろいろなけいけんをすれば、アイデアが生まれるかもしれない。それをいろいろなところに売って、たくさんの人が見てくれたら、きっとうれしいよね。いい仕事だよね。)
シュテファンは、しょうらいへの道が少し見えて、「もやもや」がうすくなった気がしました。
シュテファンは1週間ぐらいかんがえました。そして、好きなアニメの仕事をするのも悪くないと思って、お父さんとお母さんに話してみました。
「お父さん、お母さん、日本に留学して、アニメのことをもっとくわしく知りたいと思ってるんだ。しょうらい、たくさんの人にいいアニメを見てもらえるように、アニメをいろいろなところに売るようなしごとができたらいいなと思って……」
「それ、日本でやりたいの?」
お父さんは聞きました。
「外国人がそんな仕事を日本でするのは大変なんじゃない? やりたい日本人がたくさんいるはずだし…。」
「でも、日本のアニメをドイツで見てもらうための仕事があればいいかもね。今、日本のアニメがたくさん入ってきてるし。」
お母さんは言いました。
「そうだね。きっと何か仕事があるよね。」
シュテファンは言いました。
「まあ、そうかもしれないけど、アニメの仕事だけじゃなくて、日本とドイツにかんけいがある仕事はいろいろあると思うよ。少し広くかんがえてみたら?」
お父さんはそう言って、つづけます。
「シュテファンはアニメの仕事ができればいいと思ってるだろうけど、広くかんがえたほうが、アニメにかんけいがある仕事にもっと近づけるかもしれないね。」
「それなら、どんな勉強をすればいい?」
シュテファンは言いました。
「そうだね……マネジメントの勉強とかビジネスに役に立つかな。」
お父さんは言いました。
それからシュテファンは、マネジメントの勉強にはどんなものがあるか、しらべました。経営学や会計学などがありました。シュテファンは、日本でこの勉強ができる大学をさがそうと思いました。そして、日本に留学することを本気でかんがえようと思ったのです。
つぎの日、もう一度、クラウス先生に相談してみることにしました。先生の話から、日本で経営学を勉強するなら、東南大学がレベルが高くて有名なことがわかりました。ただ、じゅぎょうはほとんど日本語でするので、日本語の力が高くないとむずかしいそうです。そして、外国人が入るには、ドイツの学校からちょくせつ入る場合と、こうかん留学生として入る場合があることもわかりました。ちょくせつ入る場合は、すべての留学生に対しておこなわれる日本語のテストとその大学のめんせつがあって、かんたんではないようです。でも、入れば、日本人と同じように4年間勉強できます。こうかん留学生はふつう1年ぐらいだそうです。
シュテファンは思いました。
(1年はあっという間に終わるだろう。やっぱり日本のアニメや日本についてふかく知りたかったら、長ければ長いほどいいんじゃないかな。日本の大学に入るのは大変そうだけど。それに、日本語でじゅぎょうをうけたり、ちがう国で一人で生活したりするのも大変そうだけど。)
シュテファンはまた1週間ぐらいかんがえて、お父さんとお母さんに、日本の東南大学に留学して経営学を勉強したいと話しました。
「ドイツの学校からちょくせつ日本の大学に入るってこと?」
お母さんは聞きました。
「うん、そう。入れれば、4年は日本にいることになる。」
「そんなに長くいなければならないの?」
「うん、日本についてふかく知りたかったら、長ければ長いほどいいと思うんだ。」
「そう。」
お母さんは少しさびしそうに言いました。
「これからがんばって、しけんの勉強をしようと思ってるんだ。かんたんじゃないみたいだから。」
「それで日本で仕事をしたいの?」
お父さんは聞きました。
「うん。日本だけじゃなくてドイツでも。日本とドイツで仕事ができればいいと思ってる。アニメの仕事なら一番いいけどね。」
「もう決めてるなら、お父さんは言うことはないよ。」
お父さんは言いました。
「そうね。がんばって、って言うだけだわ。」
お母さんも言いました。
シュテファンは、「もやもや」が消えていくのを感じてうれしくなりました。
それから1年間ぐらい、シュテファンはいっしょうけんめい日本語を勉強しました。毎日漢字や言葉をおぼえたり、日本語を聞いたりしました。文法や文章を読む問題や今までの留学生のテストの問題にも、たくさん答えました。日本語で日記をつけたり、テーマを決めて文章を書いたりもしました。日本語教室では、勉強した日本語をできるだけたくさん使ってクラウス先生と話しました。わからないことはわかるまでクラウス先生に聞きました。ステファンはそれまでにけいけんしたことがないぐらい、がんばったのです。
つぎの年の秋になりました。今日は留学生のテストの日です。シュテファンはベルリンのしけん会場に行きました。部屋に入ると、テストをうける学生が40人ぐらい、すわっていました。シュテファンは少し心配になりましたが、
(がんばって勉強してきたからだいじょうぶ!)
と思って、いすにすわりました。
テストが始まりました。日本語を読む問題、聞く問題、文章を書く問題にいっしょうけんめい答えたので、終わったら、とてもつかれてしまいました。でも、まあまあできたかな、と思って少し安心しました。
帰るとき、ほかの学生といっしょになったので、少し話してみました。その学生はとても背が高くて、カールという名前でした。カールは言いました。
「ぼくは、東南大学の理工学部で日本の建物について勉強したいんです。」
「えっ、そうなんですか。ぼくも東南大学の経営学部に入りたいんです。」
カールとシュテファンは、にっこりわらいました。そして、おたがいに
「つぎの東南大学のめんせつもがんばりましょう!」
と言いました。
冬になりました。今日は東南大学のめんせつの日です。オンラインでうけることになっています。シュテファンはインターネットをつないで、画面を見ました。「じゅけん番号3番のシュテファンさんですね。」
東南大学の先生が話し始めました。
「はい、シュテファンともうします。よろしくおねがいいたします。」
「これからめんせつを始めます。シュテファンさんはどうして東南大学に入りたいと思いましたか。」
「日本のアニメが大変好きで、日本にきょうみを持ちました。日本でアニメに関係がある仕事をしたいと思っていましたが、絵がかけないので、アニメのプランを出したり、売ったりする仕事をしたいと思うようになりました。そのためには経営学の勉強が役に立つと思っています。こちらの大学の経営学部はでんとうがあってレベルの高い勉強ができることを知りました。それで入りたいと思いました。」
「そうですか。しょうらいは日本で働きたいのですか。」
「日本とドイツのりょうほうで働きたいと思っています。ドイツ人であることを生かして、日本のいいアニメをドイツにしょうかいする仕事などができたらいいとかんがえています。」
めんせつはぶじに終わりました。あとはけっかを待つだけです。シュテファンは
(ごうかくできますように。)
といのりました。
つぎの日の午後、インターネットでけっかのはっぴょうがありました。シュテファンはこわい、と思いながら、「けっかを見る」というボタンをクリックしました。じゅけん番号3…
「あった!」
ステファンはさけびました。