Coming soon!
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エマは、研究室の石川先生に、源氏と平氏についてきょうみをもったと言いました。先生は言いました。
「それなら、歴史の中に出てきた場所に行ってみるのもいいと思いますよ。そうすると、歴史を体で感じることができますから。」
「そうですね。行ってみたいです。」
とエマは言いました。
「たとえば、源氏と平氏がたたかった壇ノ浦(だんのうら)とか、義経(よしつね)のさいごの場所になった平泉(ひらいずみ)とか、いいと思いますよ。」
「そうですか。東京からだと平泉のほうが近そうですね。」
「そうですね。新幹線で3時間ぐらいで行けますよ。」
「夏休みに行ってみたいです。」
「ええ、ぜひ。義経は、平泉の藤原氏(ふじわらし)の家ににげたと言われています。藤原氏は東北地方の貴族(きぞく)です。お寺など、文化的な建物をのこしているので、見てみるといいですよ。」
「はい。行けるように、アルバイトもがんばります。」
エマは平泉に行くのが楽しみになりました。
夏休みになりました。エマはお金がたまったので、平泉に行くことにしました。東北新幹線で一ノ関(いちのせき)まで行って、電車にのりかえて平泉でおりました。小さいですが、日本的な駅です。そこから、中尊寺(ちゅうそんじ)というお寺に向かいました。中尊寺は850年につくられました。そのあと、12世紀のはじめに藤原氏(ふじわらし)がいろいろな建物をつくりました。その全体を中尊寺と呼んでいます。
入口を入ると、坂道(さかみち)があります。道の左右には木がならんでいます。すずしい風がふいてきます。今までとはちがう世界に入ったようです。
(ああ、気持ちがいい・・・。でも、何だかちゃんとしないといけない感じがする。ちょっときんちょうする感じ・・・。)
エマは思いました。
そのまま歩いていくと、右に本堂(ほんどう)がありました。これは中尊寺の中心になるお寺です。そこには仏さまと、むかしから消えないでついている火がありました。
(この火をむかしの人も見ていたんだ。しずかで心がおちつく・・・。)
エマは思いました。
本堂を出て少し歩くと、金色堂(こんじきどう)がありました。名前のとおり、金がはってあって金色にかがやく建物です。金色堂は12世紀のはじめに藤原氏(ふじわらし)がつくりました。藤原氏はそのころ、東北地方をおさめていました。たたかいで死んでしまった人々や動物たちのために、そして平和のために金色堂をつくりました。ですから、中尊寺の建物の中でもとくにすばらしい技術(ぎじゅつ)がたくさん使われています。中にはたくさんの仏像(ぶつぞう)があります。そして、夜光る貝や象牙(ぞうげ)や宝石(ほうせき)でかざられています。藤原氏四代(ふじわらしよんだい)の4人も金のはこの中でねむっています。エマは思いました。
(ミステリアスだけど、光かがやいて清らかな感じがする。死んでしまった人々や動物たち、そして平和への思いが表れているのかなあ・・・。)
そして、じっと建物の中を見ていました。
気がつくと、エマの近くに男の人が立っていました。エマと同じようにじっと建物の中を見ています。そして、エマに話しかけました。
「すばらしいですね。」
エマは答えました。
「はい。本当に。」
男の人は言いました。
「いつ来ても藤原氏の思いを感じます。」
「よくいらっしゃるんですか。」
「ええ、月に1回は来ます。平安時代(へいあんじだい)から鎌倉時代(かまくらじだい)の研究をしているので。」
「えっ、そうなんですね。私も日本の歴史を勉強しています。」
「大学で?」
「はい、三本木大学です。」
「じゃあ、石川先生っていらっしゃるでしょう?」
「はい、私は石川先生の研究室の学生です。」
「ああ、そうなんですか。石川先生は東北大学で私の学生だったんですよ。私は山本と申します。」
「えっ、あの有名な山本博士(はかせ)ですか。石川先生からよくお話をうかがっています。」
「ああ、そうですか。ぐうぜんで、びっくりしました。」
【画像】
山本博士は言いました。
「今回はちょっと気になることがあって見に来たんです。」
「気になることとおっしゃいますと・・・。」
「この金色堂の中に今まで知られてこなかった物があるという・・・。」
「知られてこなかった物?」
「ええ、源義経(みなもとのよしつね)が平泉ににげてきたのを知っているでしょう? ・・・ちょっとまだ言えないんですが、よくしらべてから発表しようと思っているんです。」
「そうなんですか。」
「金色堂のどこにあるかはわかりません。こうやって外から見てもわかりませんね。これから、しらべさせてもらおうと思っています。それじゃ、また。石川先生によろしく。」
そう言って、山本博士は歩いていきました。
エマは思いました。
(ある物って何だろう。早く知りたいけど、山本博士の発表を待つしかないなあ・・・。とにかく山本博士に会えたのはすごいことだった! 東京に帰ったらすぐ石川先生に話さなくちゃ。)
それから、エマは中尊寺の他の建物や仏像(ぶつぞう)を見て、東京に帰りました。
東京に帰ったエマは、すぐに研究室に行きました。夏休みでしたが、石川先生がいました。
「先生、平泉に行ってきました。」
「それはよかったですね。どうでしたか。」
「なんと山本博士にお会いしたんです。」
「えっ、山本先生に? どこで?」
「中尊寺の金色堂で中を見ている時、話しかけてくださったんです。」
「え~、それはそれは。」
「石川先生によろしくとおっしゃっていました。」
「そうですか。でも、山本先生はどうして金色堂にいらっしゃったんでしょう?」
「はい。よくいらっしゃるそうですが、今回は気になることがあったからだそうで・・・。」
「気になること?」
「ええ、金色堂に今まで知られてこなかった物があるかもしれないとか・・・。」
「えっ?」
「まだ言えないそうです。それで金色堂でしらべるためにいらっしゃったようです。」
「新しいことがわかったということですか・・・。」
「よくしらべてから発表するとおっしゃっていました。」
「そうですか・・・。じゃ、それを待ちましょう。」
石川先生はしずかに言いました。