「ここが諏訪…寒いです」
息を吐くと、白くなった。
それもそのはず、昼をすぎたばかりなのに周りの温度は2℃だ。
諏訪は長野県の真ん中にあり、山に囲まれ、高さは約700m。夏は涼しく冬は寒い。東京からは新かん線は使えず、電車で4時間ほどもかかる。諏訪は高い場所に位置するまちだ。
ベレンの目の前には諏訪の中央に存在する大きな湖、諏訪湖が広がって見えた。
この諏訪湖を囲むように4つの諏訪大社が建てられているのだ。
「今から一つずつ訪ねていきましょう!と言いたいですが、とても寒いです……」
それに、今から諏訪神社に行くと宿につくのは夜中になってしまう。
「今日はあきらめます…宿で暖まりたい…」
ベレンはタクシーを使って、予約していた宿に向かった。
「そうなのか!それで諏訪に!それは、偉いねえ!」
迎えてくれた宿の持ち主の女性(女将)は話すのが好きな人だった。
彼女はベレンに良い印象をもち、諏訪に来た理由を話すとさらに機げんが良くなった。
その日のお客がベレンだけだったので、女将さんの家族とご飯を一緒に食べることになった。
「諏訪は寒いけれど、空気がきれいでいい場所でしょ?」
そう少し自慢するように言うのは、娘の蓮。蓮には女の兄弟がいない。彼女はベレンと同じ年で、家である宿を手伝う大学生だ。
「おい、そんなに一方的によくしゃべるのはやめな。ベレンさんが困っているじゃないか」
夫が蓮に注意する。随分にぎやかに食事する環境で、日本に来てからずっと一人で生活していたベレンはうれしくなった。
「私なら大丈夫です。皆さんと話をすることができてとても楽しいですから」
蓮がうれしそうに話し続ける。
「ベレンって本当にいい子!そうだ!明日からは私が諏訪をあん内するね!」
「おい蓮!お前のような子は…ベレンさん、ご迷わくなら断わっていただいていいですからね?」
「あの、ぜひお願いしたいです!」
蓮が大きく笑ってこたえる。
「任せて!それなら明日はどこに行く?やっぱり最初は下社かな?それとも上社?」
「下社、上社、とは何ですか?」
ベレンは諏訪大社のことがあまりよくわかっていなかった。
「諏訪大社の一部である建物である社は、諏訪湖を囲むように建てられているの。で、北に建っているのが下社の春宮と秋宮、南に建っているのが上社の前宮と本宮ね」
「なるほど…私は3日後に東京に帰るつもりです。だから、一日に二つの場所に行くことができると良いのですが…」
「それは大丈夫!下社の春宮と秋宮は近くにあって、上社の前宮と本宮も近くにあるの。間に湖があるから、下社と上社は結構遠いわ。じゃあ明日は下社、その次の日は上社の二社をまわりましょう」
蓮の母親が、二人が話している途中で話す。
「ベレン、あなた、どうやって移動するの?上社も下社も、ここから結構遠いよ」
たずねられて初めて自分の状況を知った。ここまでは電車で来たので、適切な移動方法がないのだ。
「この場所は観光地だからバスはあるけれど、いなかだから不便する可能性があるね」
「特に考えていなかったです…」
それを聞いて、蓮がいたずらっぽく笑う。
「じゃあ、私にいい考えがあるの。移動の方法方法は任せておいて!」
「ここが諏訪…寒いですね」
吐く息が真っ白に凍る。
それもそのはず、昼すぎだというのに気温は2℃だ。
長野県の中部、諏訪は山に囲まれ、標高は約700m。夏は涼しく冬は寒い。東京からは在来線を乗り継いで4時間ほどもかかる高原の街だ。
ベレンの眼前には諏訪盆地が中央に抱える大きな湖、諏訪湖が広がっていた。
この諏訪湖を囲むように4つの諏訪大社が建てられているのだ。
「早速一つずつ参拝していきましょう!と言いたいところですが、寒すぎです…」
それに、今から参拝すると宿につくのは夜中になってしまう。
「今日のところは撤退です…宿で暖まりたい…」
ベレンはタクシーを呼び止めて、予約していた民宿に向かった。
「へえ!それで諏訪に!そりゃ、奇特な人だねえ!」
民宿で迎えてくれた女将さんはお喋り好きな人だった。
ベレンのことを気に入り、諏訪に来た経緯を話すと更にご機嫌になった。
その日のお客がベレンだけだったので、民宿を経営する家族と食卓を囲むことになった。
「諏訪は寒いけれど、空気が澄んでいていいところでしょ?」
そう少し自慢げに言うのは、一人娘の蓮。ベレンと同い年で、家の民宿を手伝う大学生だ。
「ほら、あんまり一方的にベラベラと喋りなさんな。ベレンさんが困っているじゃないか」
旦那さんがたしなめる。随分にぎやかな食卓で、日本に来てからずっと一人暮らしだったベレンは嬉しくなった。
「私なら大丈夫です。皆さんとお話出来てとても楽しいですから」
蓮が嬉しそうに話し続ける。
「ベレンって本当にいい子ね!そうだ!明日からは私が諏訪を案内するわ!」
「こら蓮!お前ってやつは…ベレンさん、ご迷惑なら断っていただいていいですからね?」
「あの、是非お願いしたいです!」
蓮がにっこり笑って応える。
「任せて!そしたら明日はどこに行く?やっぱり最初は下社かな?それとも上社?」
「下社、上社、とは何ですか?」
ベレンは諏訪大社のことがあまりよくわかっていなかった。
「諏訪大社の四つの社は、諏訪湖を囲うように建てられているの。で、北側に建っているのが下社の春宮と秋宮、南側に建っているのが上社の前宮と本宮ね」
「なるほど…私は明々後日に東京に帰るつもりです。なので、一日に二つずつお参りできると良いのですが…」
「それは大丈夫よ!下社の春宮と秋宮、上社の前宮と本宮はそれぞれ近くに位置しているの。下社と上社は湖を挟んで反対側だから結構遠いけど。じゃあ明日は下社、明後日は上社の二社をまわりましょう」
女将さんが横から口を挟む。
「ベレン、あなた、移動手段は?上社も下社も、ここから結構遠いけど」
訊かれて初めて気づいた。ここまでは電車で来たので、ろくな移動手段がないのだ。
「一応観光地だからバスはあるけれど、田舎だから便は悪いわよ?」
「特に考えていなかったです…」
それを聞いて、蓮が悪戯っぽく笑う。
「じゃあ、私にいい考えがあるの。移動の足は任せておいて!」