大学の周りを歩く中、留学生のベレンは急に足を止めた。
「こんな場所に、神社……?」
東京ではとても背が高いビルが並んで立っている。1400万人が住む東京は、世界の中でも何番目かくらいに大きい都市である。ベレンが通う大学は、東京の文京区にある。東京ドームや大学があり、家が多い静かな街の中で、ベレンは小さな神社を見つけたのだ。
背の高い建物に囲まれているその場所には古い灰色の鳥居がたち、石でできた細い道が中に続いている。それはベレンが日本に来る前から想像していた大都会東京のイメージとは違うもので、まるで過去から運ばれてきたかのように見えた。
ベレンはその場所にきょう味をもち、中に入った。道を進むと、左右に小さな狛犬がおり、その背には高い木が立っている。中央には小さな建物が建っている。
「不思議なふん囲気……」
近代以降の東京の発てんから残されたかのようなその場所でベレンは少し休んだ。
もう帰ろうとその場所から出たとき、入口右わきの大きな石でできた柱にこの神社の名前のようなものが書かれているのを見た。
『諏訪神社』
まだ日本に来て間もないベレンには、その漢字はとても難しかった。
ちょうど前を歩いていたおばあさんに読み方をたずねた。
「あの、すみません」
「この神社の名前は、何と読むのですか?」
急に話しかけられたおばあさんは少しおどろいたが、ていねいに教えてくれた。
「これ?これは、『すわ』と読むんだよ。『すわじんじゃ』ね。最初は確か、長野県の神様を信仰するための神社だったはずだよ。ここのものは小さいけれど…」
「すわじんじゃ…ご親切にありがとうございます」
きれいな音のひびきは、ベレンの中で強く印象に残った。今度諏訪神社のことを調べようか…そんなことを考えながら、ベレンは家に戻った。
それからしばらくして、急に諏訪神社のことを思い出したベレンはスマートフォンで調べた。
「あそこの神社は『小石川諏訪神社』…諏訪神社って随分たくさんあるようだ」
調べ続ける。
諏訪神社は日本中にあること。諏訪神社は日本に一万以上あること。そして、その諏訪神社の中心となる諏訪大社と呼ばれる4つの神社のこと。
調べれば調べるほど、ベレンの興味は増えていくばかりだった。日本でもっとも古いといわれる諏訪での信仰は留学生のベレンにはとても不思議なものに思われた。
ちょうど来月から冬休みだ。少し遠いが、諏訪大社に行こうかな。
すぐにスケジュール帳に予定を書いた。
大学の周りを散策中、留学生のベレンはふと足を止めた。
「こんなところに、神社…?」
超高層ビルが建ち並び1400万人が住む世界有数の大都市、東京。ベレンが通う大学は文京区にある。東京ドームや大学が点在する閑静な住宅街の一角に、ベレンは小さな神社を見つけたのだ。
周りの建物に押しつぶされそうなその敷地には古い鈍色の鳥居がたち、細い石畳の道が境内に続いている。それはベレンが留学前から思い描いていた大都会東京のイメージには少し場違いで、まるでタイムスリップしてきたかのように見えた。
吸い寄せられるように境内に入ると、小さな狛犬が一対、両脇に背の高い木、中央に小さなお社が建っている。
「不思議な雰囲気…」
近代以降の東京の発展から取り残されたかのようなその空間でベレンは小休止を取った。
もう帰ろうと境内を出たとき、入口右わきの大きな石柱にこの神社の名前のようなものが刻まれているのに気が付いた。
『諏訪神社』
まだ日本に来て間もないベレンには、その漢字は難しすぎた。
折よく通りかかったおばあさんに読み方を訊いてみる。
「あの、すみません」
「この神社の名前は、何と読むのですか?」
突然話しかけられたおばあさんは少し驚きつつも、丁寧に教えてくれた。
「これ?これはね、『すわ』と読むんだよ。『すわじんじゃ』ね。もともとは確か、長野県の神様を祀っている神社だったはずだよ。ここのものは小さいけれど…」
「すわじんじゃ…ご親切にありがとうございます」
透き通った綺麗な響きは、ベレンの中で強く印象に残った。今度諏訪神社のことを調べてみようか…そんなことを考えながら、ベレンは帰路についた。
それからしばらくして、ふと諏訪神社のことを思い出したベレンは検索をかけてみた。
「あそこの神社は『小石川諏訪神社』…諏訪神社って随分たくさんあるみたい」
そのまま検索を続ける。
諏訪神社は全国にあること。その数は一万を超えること。そして、それらの中心となる諏訪大社と呼ばれる4つの神社のこと。
調べれば調べるほど、ベレンの興味は増していくばかりだった。日本最古ともいわれる諏訪信仰は留学生のベレンにはとても神秘的で不思議なものに感じられた。
ちょうど来月から冬休みだ。少し遠いが、諏訪大社に行ってみようか。
早速スケジュールに書き込んだ。