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特訓
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特訓、とはいっても、ベレンはこしょうちゅうだ。1か月間は足回りのはげしい運動はできない。
「そこが問題よね…でも、突きはゆうこうだを出すのがむずかしいから、まずは足を使わず、上半身だけでゆうこうだの練習をして、足が治ったら、ふみこみながらの突きの練習をしましょう。ケガのぐあいがわからないけれど、すり足(足を地面からあまり上げずに、地面をすりながら歩く方法だ。剣道(けんどう)などで、安定して動くために使われる)はできるの?」
「すり足はできるよ。とんだり強くふみこんだりするようなはげしい運動はできないけれど…」
「じゃあやっぱり最初はすり足での打突(だとつ)の練習をしましょう。スッと前に出てうでをのばして、のどを突く。これをたくさん練習すれば、ゆうこうだを出すのがずっと簡単になると思うの。突きは他のうちかたと動きが大きく違うからむずかしく感じるけど、何度も練習すれば、他のうちかたと同じようにゆうこうだを取れるようになるはず。」
歩美はそういうと打ち込み台(うちこみだい:おもに、竹刀(しない)で打つ動作を練習するための台)を出してきた。ニヤリと笑ってベレンにささやく。
「この打ち込み台、身長は大体凛(りん)先輩と同じにちょうせいしてあるの。イメトレにもピッタリでしょ?」
「ありがとう、歩美。まずはがんばってみる」
その日から1か月の間、ベレンはずっと打ち込み台での練習をがんばった。ふみこめない分、ていねいにうつ練習することを大切にした。
2週間もたつと、自分の動きが変わったのがはっきりとわかった。竹刀(しない)の先が相手ののどまで、ほとんどぶれずにまっすぐに届くようになったのだ。
「すごい!さすがベレンね。その飲みこみと成長の速さにはびっくり」
歩美はベレンの成長をすなおによろこんでくれた。
今までできなかったことができるようになる。本格的なうちこみはまだだが、ケガをしている中でも成長できたのがうれしかった。
3週間後、ついに出られなかった六大学対抗戦(たいこうせん)も、ベレンは落ちついておうえんすることができました。主将(しゅしょう)やまわりの人たちはベレンの気持ちを気にかけてくれたが、ベレンは6か月後の対抗戦(たいこうせん)のことを考えていた。落ちこんでいるひまはないのだ。
ケガから1か月後、けがが治ったあと、ベレンは練習に戻った。ずっと竹刀(しない)を持って、打ちこみ台を使っていたので、練習の感覚を取り戻すのにもあまり時間はかからなかった。
「ベレン、練習に戻れておめでとう。稽古(けいこ)にも熱が入るね。でも、オーバーワークはさけること。りょうももちろん大事だけれど、稽古(けいこ)やうちこみは質も大切だよ」
そう声をかけてくれた主将(しゅしょう)は、ケガをしていた間ずっとベレンを見守り、気にかけてくれていた。
「ありがとうございます。同じ間違いはしません。それに、またケガをしているひまはありませんから」
「…そうだね。4か月後のきょうぎで勝たなければならないんだよね?」
主将(しゅしょう)はベレンにそう言うと、にやりと笑った。
「どうしてそれを…」
「あれだけ打ち込み台を使っているのを見たら、気づくよね。きょうぎではもちろん私もライバルだ。楽しみにしているよ?」
「はい、かんばります!」
ケガから戻ってしばらくは、ふみこんで打つ練習をした。特に、遠いきょりから速く、じゅんびの動きを少なくして正確に打つことを何回も練習した。練習の前にほとんど毎日行った。1か月続けると、打ち込み台を相手にすれば、かなり遠いきょりから突きをあてられるようになった。ただし、打ち込み台での練習とじっさいの試合では、難しさが大きく違う。せんこうかいまでのあと3か月で、突きのもっとじっさいの練習をしておきたかった。
「歩美、お願いがあるの。かかり稽古(けいこ)の相手をしてくれない?」
「そろそろ言いだすと思っていたわ。まかせなさい!」
じっせんの練習での突きの練習は、思っていたより難しかった。
「そこが問題よね…でも、突きはゆうこうだを出すのがむずかしいから、まずは足を使わず、上半身だけでゆうこうだの練習をして、足が治ったら、ふみこみながらの突きの練習をしましょう。ケガのぐあいがわからないけれど、すり足(足を地面からあまり上げずに、地面をすりながら歩く方法だ。剣道(けんどう)などで、安定して動くために使われる)はできるの?」
「すり足はできるよ。とんだり強くふみこんだりするようなはげしい運動はできないけれど…」
「じゃあやっぱり最初はすり足での打突(だとつ)の練習をしましょう。スッと前に出てうでをのばして、のどを突く。これをたくさん練習すれば、ゆうこうだを出すのがずっと簡単になると思うの。突きは他のうちかたと動きが大きく違うからむずかしく感じるけど、何度も練習すれば、他のうちかたと同じようにゆうこうだを取れるようになるはず。」
歩美はそういうと打ち込み台(うちこみだい:おもに、竹刀(しない)で打つ動作を練習するための台)を出してきた。ニヤリと笑ってベレンにささやく。
「この打ち込み台、身長は大体凛(りん)先輩と同じにちょうせいしてあるの。イメトレにもピッタリでしょ?」
「ありがとう、歩美。まずはがんばってみる」
その日から1か月の間、ベレンはずっと打ち込み台での練習をがんばった。ふみこめない分、ていねいにうつ練習することを大切にした。
2週間もたつと、自分の動きが変わったのがはっきりとわかった。竹刀(しない)の先が相手ののどまで、ほとんどぶれずにまっすぐに届くようになったのだ。
「すごい!さすがベレンね。その飲みこみと成長の速さにはびっくり」
歩美はベレンの成長をすなおによろこんでくれた。
今までできなかったことができるようになる。本格的なうちこみはまだだが、ケガをしている中でも成長できたのがうれしかった。
3週間後、ついに出られなかった六大学対抗戦(たいこうせん)も、ベレンは落ちついておうえんすることができました。主将(しゅしょう)やまわりの人たちはベレンの気持ちを気にかけてくれたが、ベレンは6か月後の対抗戦(たいこうせん)のことを考えていた。落ちこんでいるひまはないのだ。
ケガから1か月後、けがが治ったあと、ベレンは練習に戻った。ずっと竹刀(しない)を持って、打ちこみ台を使っていたので、練習の感覚を取り戻すのにもあまり時間はかからなかった。
「ベレン、練習に戻れておめでとう。稽古(けいこ)にも熱が入るね。でも、オーバーワークはさけること。りょうももちろん大事だけれど、稽古(けいこ)やうちこみは質も大切だよ」
そう声をかけてくれた主将(しゅしょう)は、ケガをしていた間ずっとベレンを見守り、気にかけてくれていた。
「ありがとうございます。同じ間違いはしません。それに、またケガをしているひまはありませんから」
「…そうだね。4か月後のきょうぎで勝たなければならないんだよね?」
主将(しゅしょう)はベレンにそう言うと、にやりと笑った。
「どうしてそれを…」
「あれだけ打ち込み台を使っているのを見たら、気づくよね。きょうぎではもちろん私もライバルだ。楽しみにしているよ?」
「はい、かんばります!」
ケガから戻ってしばらくは、ふみこんで打つ練習をした。特に、遠いきょりから速く、じゅんびの動きを少なくして正確に打つことを何回も練習した。練習の前にほとんど毎日行った。1か月続けると、打ち込み台を相手にすれば、かなり遠いきょりから突きをあてられるようになった。ただし、打ち込み台での練習とじっさいの試合では、難しさが大きく違う。せんこうかいまでのあと3か月で、突きのもっとじっさいの練習をしておきたかった。
「歩美、お願いがあるの。かかり稽古(けいこ)の相手をしてくれない?」
「そろそろ言いだすと思っていたわ。まかせなさい!」
じっせんの練習での突きの練習は、思っていたより難しかった。
特訓、とはいっても、ベレンは故障中だ。1か月間は足回りの激しい運動はできない。
「そこが問題よね…でも、突きは有効打を出すのが難しいから、まずは踏み込みを伴わない上半身だけの動きで有効打の練習をして、脚が治ってから踏み込む形の突きの練習をしましょう。怪我の具合が判らないけれど、すり足は出来るの?」
「すり足は出来るよ。跳ねたり踏み込んだりといった激しい運動は出来ないけれど…」
「じゃあやっぱり最初はすり足での打突の練習をしましょう。スッと前に出ながら腕を伸ばして喉元を突く。これをひたすら繰り返せば、まず有効打の難しさはグッと下がると思うの。突きは他の打突と動きが大きく違うから難しく感じるけれど、反復の練習で十分に慣れれば他の打突と変わらず有効打を得ることが出来るはず」
歩美はそういうと打ち込み台を出してきた。ニヤリと笑ってベレンに囁く。
「この打ち込み台、身長は大体凛先輩と同じに調整してあるの。イメトレにもピッタリでしょ?」
「ありがとう、歩美。まずは頑張ってみる」
その日からひと月は、ベレンはひたすら打ち込み台での反復練習に励んだ。踏み込めない分、丁寧に打突の動きを身に着けることを意識した。
2週間も経つと、自分の動きが変わったのがはっきりと判った。竹刀の先が相手の喉元まで、殆どぶれずに真っすぐに届くようになったのだ。
「すごい!さすがベレンね。その飲み込みと成長の速さにはびっくり」
歩美はベレンの成長を素直に喜んでくれた。
今までできなかったことが出来るようになる。本格的な打ち込みはまだだが、怪我をしている中でも成長できたのが嬉しかった。
3週間後、とうとう出られなかった六大学対抗戦も、ベレンは落ち着いて応援に回ることができた。主将や周りは心情を慮ってくれたが、ベレンは半年後の対抗戦を見据えていた。落ち込んでいる暇はないのだ。
怪我から1か月後、怪我の完治とともにベレンは稽古に復帰した。ずっと竹刀を握り、打ち込み台に向き合っていたからか、稽古の勘を取り戻すのにもあまり時間はかからなかった。
「ベレン、復帰おめでとう。稽古にも熱が入るね。でも、オーバーワークは避けること。量ももちろん大事だけれど、稽古や打ち込みは質も大切だよ」
そう声をかけてくれた主将は、怪我をしていた間ずっとベレンを見守り、気にかけてくれていた。
「ありがとうございます。同じ轍は踏みません。それに、また怪我をしている暇はありませんから」
「…そうだね。4か月後の選考で勝ち抜かなければならないものね?」
主将はベレンにそう囁くと、にやりと悪戯っぽく笑った。
「どうしてそれを…」
「あれだけ打ち込み台に向き合っているのを見たら嫌でも勘づくさ。選考ではもちろん私もライバルだ。楽しみにしているよ?」
「はい、頑張ります!」
怪我から復帰して暫くは、踏み込みも併せた打突、特に遠距離から、高速で、予備動作を少なくして正確な打突を繰り出す練習を積んだ。稽古の前にほとんど毎日行った。1か月も続けると、打ち込み台相手であればかなりの遠距離から突きを当てることが出来るようになった。ただし、打ち込み台での練習と駆け引きがある実際の試合とでは難易度は大きく異なる。選考会までの残り3か月で、突きに関してもより実践的な稽古を積んでおきたかった。
「歩美、お願いがあるの。掛かり稽古の相手をしてくれない?」
「そろそろ言いだすと思っていたわ。任せなさい!」
実戦形式の稽古での突きの修得は、想像以上に難航した。
「そこが問題よね…でも、突きは有効打を出すのが難しいから、まずは踏み込みを伴わない上半身だけの動きで有効打の練習をして、脚が治ってから踏み込む形の突きの練習をしましょう。怪我の具合が判らないけれど、すり足は出来るの?」
「すり足は出来るよ。跳ねたり踏み込んだりといった激しい運動は出来ないけれど…」
「じゃあやっぱり最初はすり足での打突の練習をしましょう。スッと前に出ながら腕を伸ばして喉元を突く。これをひたすら繰り返せば、まず有効打の難しさはグッと下がると思うの。突きは他の打突と動きが大きく違うから難しく感じるけれど、反復の練習で十分に慣れれば他の打突と変わらず有効打を得ることが出来るはず」
歩美はそういうと打ち込み台を出してきた。ニヤリと笑ってベレンに囁く。
「この打ち込み台、身長は大体凛先輩と同じに調整してあるの。イメトレにもピッタリでしょ?」
「ありがとう、歩美。まずは頑張ってみる」
その日からひと月は、ベレンはひたすら打ち込み台での反復練習に励んだ。踏み込めない分、丁寧に打突の動きを身に着けることを意識した。
2週間も経つと、自分の動きが変わったのがはっきりと判った。竹刀の先が相手の喉元まで、殆どぶれずに真っすぐに届くようになったのだ。
「すごい!さすがベレンね。その飲み込みと成長の速さにはびっくり」
歩美はベレンの成長を素直に喜んでくれた。
今までできなかったことが出来るようになる。本格的な打ち込みはまだだが、怪我をしている中でも成長できたのが嬉しかった。
3週間後、とうとう出られなかった六大学対抗戦も、ベレンは落ち着いて応援に回ることができた。主将や周りは心情を慮ってくれたが、ベレンは半年後の対抗戦を見据えていた。落ち込んでいる暇はないのだ。
怪我から1か月後、怪我の完治とともにベレンは稽古に復帰した。ずっと竹刀を握り、打ち込み台に向き合っていたからか、稽古の勘を取り戻すのにもあまり時間はかからなかった。
「ベレン、復帰おめでとう。稽古にも熱が入るね。でも、オーバーワークは避けること。量ももちろん大事だけれど、稽古や打ち込みは質も大切だよ」
そう声をかけてくれた主将は、怪我をしていた間ずっとベレンを見守り、気にかけてくれていた。
「ありがとうございます。同じ轍は踏みません。それに、また怪我をしている暇はありませんから」
「…そうだね。4か月後の選考で勝ち抜かなければならないものね?」
主将はベレンにそう囁くと、にやりと悪戯っぽく笑った。
「どうしてそれを…」
「あれだけ打ち込み台に向き合っているのを見たら嫌でも勘づくさ。選考ではもちろん私もライバルだ。楽しみにしているよ?」
「はい、頑張ります!」
怪我から復帰して暫くは、踏み込みも併せた打突、特に遠距離から、高速で、予備動作を少なくして正確な打突を繰り出す練習を積んだ。稽古の前にほとんど毎日行った。1か月も続けると、打ち込み台相手であればかなりの遠距離から突きを当てることが出来るようになった。ただし、打ち込み台での練習と駆け引きがある実際の試合とでは難易度は大きく異なる。選考会までの残り3か月で、突きに関してもより実践的な稽古を積んでおきたかった。
「歩美、お願いがあるの。掛かり稽古の相手をしてくれない?」
「そろそろ言いだすと思っていたわ。任せなさい!」
実戦形式の稽古での突きの修得は、想像以上に難航した。