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　アガサと別わかれたあと、ベレンは晩御飯ばんごはんを食べに部屋へやに戻もどった。アガサもいっしょに食べようとさそったけど、彼女かのじょはゴーストハンティングにハマっていて、ほかの用事ようじがあったみたいだ。だから、ベレンは一人で食べながら、明日の予定よていについて考えた。今日はバスに遅おくれてしまったこと、この旅館りょかんにとまったことはぐうぜんだけど、明日の朝すぐうちへ帰るつもりはなかった。帰る前に、この場所ばしょについてもっと知りたくて、終電しゅうでんの時まで村むらを見学することにした。でも、もしもう一日ここにいるなら、計画けいかくがひつようだ。だから、ネットのマップで行けるところとかをしらべたりして、明日のための計画けいかくを立てようとした。
　ベレンはスマホにある時間に目を落おとした時、もう0時になったとわかった。遅おそかったけれども、ぜんぜんねむくなかった。シャワーをあびようと思ったが、その旅館りょかんには温泉（おんせん：自然しぜんにわきでるあたたかいお湯ゆ）はないけど、風呂屋（ふろや：お風呂ふろにはいる公共こうきょうの場所ばしょ）があるということを思い出した。シャワーより心こころも体もリラックスできるお風呂ふろのほうがいいと思ったベレンは、そこに行くことにした。
　夜中よなかだから、女性じょせいの風呂屋にはベレンしか人がいなかった。入った時、水の音おとが耳みみについた。静しずかな中で水の音おとがもっと大きく聞こえた。かべにそってシャワーがあり、ベレンはそこにある風呂いすに座すわって、体を洗あらいはじめた。まだ風呂屋になれていないので、少し不安ふあんだったが、うれしいことにだれもいなかった。シャワーをあびて、あつい水で体を温あたためてから、ゆっくりお風呂に入った。だいぶ熱あつい水なので、入る前に準備じゅんびが必要ひつようだ。だから、まずは半身はんしんだけをお風呂につけ、あとは、温度おんどになれてから、肩かたまで入った。やっぱりリラックスできるところだなとベレンは思った。
　一日のことについて考えながら、お風呂につかった。この旅館りょかんについてのうわさは不思議ふしぎだった。幽霊ゆうれいも魔女まじょもいるわけではないけど、むかし何かが起こったかもしれない。そんなにひどいうわさが有名になった理由りゆうがあるはずだ。高橋たかはしがつたえてくれた話はもっと信頼しんらいできるとベレンは思った。なぜなら、ミステリアスなことがあまりないから。奥おくさんは頭あたまがおかしくなったので、ご主人を殺ころした。くるうようになることは病気だから、そんなにめずらしくはないかな。でも、アガサが話してくれたバージョンはまるで作り話みたいだった。魔女まじょや特別とくべつなくすりなんて、なかなか信頼しんらいできない。しかも、たとえ魔女まじょがいたとしても、なんで奥おくさんをだましたのか。ご主人と奥おくさんの死にどんなメリットがあるのか。意味いみがないだろう。その考えを捨すてるために、ベレンは頭あたまをふった。ただのうわさだから、そんなにふかく考える必要ひつようなんてないだろう。
　だが、お風呂から出ようとした時、急きゅうに電気がきえてしまった。ベレンは体が石いしのようになって、座すわったまま動かなかった。夜中よなかだからだれかが電気を消けしたのかもと思った。
「すみません！まだ風呂屋にいますよ」とベレンは大きい声こえで言った。もしだれかがいたら、聞こえるはずだった。でも、答こたえはなかった。
　ベレンはためいきをついて、手で顔かおをかくした。暗闇（くらやみ：かんぜんに暗くらい）の中で風呂屋を歩くのは危あぶなくて、すべりやすいけど、しかたがない。だから、目がなれるまで少し待ってから、ゆっくり上がって、お風呂から出た。なんとなく着替きがええ室まで行けるかなと思った。では、うすい氷こおりの上を歩いているように、出口の方にすすんでいた。とたん、近くにぽちゃぽちゃと足音が聞こえた。ベレンは止まって、熱心ねっしんに聞いてみた。目は暗闇くらやみになれたけど、よく見えなかったので、何の音おとなのかわからなかった。また、後ろからぴしゃぴしゃと足音がした。ベレンはだれかがいる気配けはいを感かんじたので、こわくなってきた。後ろに不思議ふしぎなかげを見たような気がしたけど、かげは急きゅうにきえてしまった。あとは静しずかな中でベレンにはやく近づいている足音が聞こえた。危あぶないけど、出口のほうに走ろうと思っていた。でも、その時、電気がついた。急きゅうに明るくなった風呂屋にはふるえているベレンしかいなかった。

　アガサと別れた後、ベレンは晩御飯を食べに部屋に戻った。アガサも一緒に食べようと誘ったけど、彼女はゴーストハンティングにハマっていて、他の用事があったみたいだ。だから、ベレンは一人で食べながら、明日の予定について考えた。今日はバスに遅れてしまったこと、この旅館に泊まったことは偶然だけど、明日の朝すぐうちへ帰るつもりはなかった。帰る前に、この場所についてもっと知りたくて、終電の時まで村を見学することにした。だが、もしもう一日ここで過ごすなら、計画が必要だ。だから、ネットのマップで行ける所とかを調べたりして、明日のための計画を立てようとした。
　ベレンはスマホの画面の上にある時間に目を落とした時、もう真夜中になったとわかった。遅かったけれども、全然眠たくなかった。シャワーを浴びようと思ったが、その旅館には温泉はないけど、銭湯があるということを思い出した。シャワーより心も体もリラックスできるお風呂のほうが気持ちいいと思ったベレンは、そこに行くことにした。
　夜中だから、女性の銭湯にはベレンしか人がいなかった。入った時、ポタッという水が滴る音が耳についた。静かな中で水の音が壁から響いて、普段より大きく聞こえた。壁に沿ってシャワーがあり、ベレンはそこにある風呂いすに座って、体を洗い始めた。まだ銭湯になれていないので、少し不安だったが、嬉しいことに誰もいなかった。シャワーを浴びて、お湯を体にかけて温めてから、銭湯の奥にある湯船に入った。大分熱いお湯なので、浸かる前に準備が必要だ。だから、まずは半身浴をして、あとは、温度に慣れてから、肩まで湯に浸かった。やっぱりリラックスできる所だなとベレンは思った。
　一日の出来事について考えながら、湯船につかった。この旅館についての噂は不思議だった。幽霊も魔女も存在するわけではないけど、昔何かが起こったかもしれない。そんなひどい噂が広まった理由があるはずだ。高橋が伝えてくれた話はもっと信頼性があるとベレンは思った。なぜなら、ミステリアスなことがあまりないから。奥さんは気が狂ったので、旦那さんを殺した。狂うようになることは病気だから、そんなに珍しくはないかな。でも、アガサが話してくれたバージョンはまるで伝説みたいだった。魔女や特別な薬なんて、なかなか信頼できない。しかも、たとえ魔女が存在するとしても、なんで奥さんを騙したのか。旦那さんと奥さんの死にどんな利益があるのか。とにかく意味がないだろう。その考えを捨てるために、ベレンは頭を振った。ただの噂だから、そんなに深く分析する必要なんてないだろう。
　だが、湯船から出ようとした時、急に電気が消えてしまった。ベレンは体が石のように固まって、座ったまま動かなかった。夜中だから誰かが電気を消したのかもと思った。
「すみません！まだ銭湯にいますよ」とベレンは大きい声で言った。もし誰かがいたら、聞こえるはずだった。でも、即答はなかった。
　ベレンはため息をついて、手で顔を隠した。暗闇の中で銭湯を歩くのは危なくて、滑りやすいけど、しかながない。だから、目が慣れるまで少し待ってから、ゆっくり上がって、湯船から出た。なんとなく着替え室まで行けるかなと思った。では、薄い氷の上を歩いているように、出口の方に進んでいた。途端、近くにぽちゃぽちゃと足音が響いた。ベレンは止まって、耳を傾けた。目は暗闇に慣れたけど、よく見えなかったので、音の原因がわからなかった。また、うしろからぴしゃぴしゃと足音がした。ベレンは誰かがいる気配を感じたので、びくびくとしていた。後ろに不思議な影を見たような気がしたけど、影は急に消えてしまった。あとは静かな中でベレンにちょこちょこと近づいている足音が聞こえた。危ないけど、出口のほうに走ろうと思っていた。でも、その時、電気がついた。急に明るくなった銭湯にはびくびくしているベレンしかいなかった。