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茶道の友情
茶道との出会い
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Coming soon!
ベレンが授業をうける教室につくと、もうすでに授業は始まっていた。後ろの方のドアからそーっと入ると、先生と目が合った。
そっと後ろの方の席に座ると、となりの人にじっと見られた。外国人はめずらしいのかもしれない。
「この場面では……。」
先生の話はいつも通りよくわからない。
いっしょうけんめいに聞いているうちによりんがなって、授業は終わった。この授業には留学生の友だちは一人もいないのでたよる相手がいない。
「うーん……。よくわからない」
先生のところに行ってベレンはわからないところを聞きに行った。
「この部分がよくわからないです。なんでこのようになるのですか?」
先生はベレンに気づくと、えがおで質問に答える。先生は50代くらいの女の人で、かみは短くメガネをかけている。質問の解答が終わると、先生は
「今日はどうしておくれたの?何かあったの?」
と少し心配そうに言った。
「バスを乗りすごしちゃって……。でも、着物を着た人に出会いました。茶道(さどう)って何ですか?」
「日本のでんとうてきな茶の湯(ちゃのゆ)を楽しむためのげいじゅつなのよ。中国から伝わったお茶のしゅうかんが、日本で変わりながらはってんしたもので、茶の湯(ちゃのゆ)を通じて、心のふかさや人とのつながりを大切にするのよ」
「へー。教えてくれてありがとうございます。」
ベレンはおじぎをして帰っていった。
その後すぐに、ベレンは大学に茶道(さどう)サークルがあるのかどうかをスマホでしらべていた。あ。あった。●●大学茶道部。○○とうで週に2回、週に一度先生を呼んでかつどうしています。いつでもきがるに来てください。と書いてある。次は水曜日がかつどうびのようだ。ベレンはさっそく見学に行くことを決めた。
水曜日。ベレンは茶道部のかつどう場所に来ていた。場所は、大学の図書館のすぐ近くにある建物で、とてもさびしい感じがする。そして、入るとすぐ右に、こわれた楽器がある。そして、どこからか三味線(しゃみせん:日本のでんとうてきな3本のげんを持つ楽器)の音がベンベンとひびきわたっている。ここに本当に和室があるのだろうかと思った。しかし、少し前を歩いて前を向くと、あきらかに日本風の引き戸がある。すぐにここだと感じた。
「すみません」
話しかけても何も答えてくれない。外から見ても部屋のでんとうはついている。戸をたたいた。すると、中から人が出てきた。ワンピースを着ていて、かたまで髪をおろしている。
「見学ですか?」
「はいそうです」
すると、
「じゃあちょっとココで待ってて」
しばらくすると、
「ここに座ってくれるかな?」
と和室のすみにあんないされた。ベレンは少しまよった。10人くらいがたたみの上で正座(せいざ:足をたたんでひざの上に座ること)をしていたからだ。ベレンは、はじめての正座をしようとした。
「はじめは大変だから、楽に座ってもいいよ」
と女の人は言った。あれ、この人よく見るとどこかであったことがある気がする。
「私は田中だけど、あなたの名前は何ていうの?」
「ベレンです。」
「外国の方?」
「留学生でアルゼンチンから来ました。」
「そんなところから?!遠いわね。」
「学部と学年はどこ?」
「えっと。学部は○○学部で、2年生です。」
「2学年で。わたしは教育学部」
「どこかで会ったことあるかもね」
と、どんどん話をした。ベレンは何とか正座をして座った。
「ちょうど、今から始まるから、見ててね。」
「はい。」
しばらくすると、田中さんが正座でふかくおじぎをしたあとに立ち、お盆(おぼん:日本のでんとうてきな皿)を持って入ってきた。田中さんは手を上手に動かしている。
「お菓子をどうぞ」
とつぜん田中さんが木のぼうを持ちながら言った。ベレンは目の前に出されたお菓子を食べた。お菓子は花のようなかたちをしていていた。食べてから、なんだこれはと思った。ちょっとあまくて、もちもちしている。
「このお菓子は何ですか?」
「このお菓子は、あんこ(甘いまめのペースト)が入っているのよ。あずきをつぶしてさとうを入れたものよ。」
「すごく独特な味ですね。」
田中さんは抹茶(まっちゃ)をおわんに入れて、おゆを入れた。そして、竹でできた泡だて器(あわだてき:たまごやクリームをあわ立てる道具)のような物を強く、静かにふった。
「お茶をどうぞ」
しばらくすると、お茶を出してくれた。ベレンはお茶を出すだけなのに、ずいぶんといろんなやり方があるのだと思っていた。ベレンは何が何だかよくわからないままおちゃわんをもらって、お茶を飲んでいた。
「少し苦いけど、まろやかでおいしいですね。」
「ありがとうございます。」
田中さんは少しほほえんだ。
そのままベレンが飲んだおちゃわんを田中さんは手に取って、またゆったりと手を動かして、きれいにしていった。
最後にお盆をもって、始めの時と同じようにゆかに手を付けて、正座をしておじぎをした。
「これで終わりですか?」
気づけば20分くらい時間がたっていた。
「一回のお稽古(おけいこ:ぎじゅつ、げいじゅつを学ぶための練習)は終わりかな。いつもこうやって練習をしているんですよ。今日は水曜日なので、自分で練習をしているんです。金曜日には外から先生がやってきてしどうしてくれるよ。」
「そうなんですね。」
「この後用事とかなかったら稽古(けいこ)が終わる7時まで見学ができるけどどうする?」
「せっかくなので、7時まで見学したいです!」
「そしたら、ちょっとすみの方で袱紗さばき(ふくささばき:袱紗(ふくさ:主に茶道(さどう)で使われるぬの)を使うときのぎじゅつ)を教えるね!」
田中さんにつれられて和室の少しうすぐらい所に行くと、田中さんが、赤いぬのを取り出した。さっきのお稽古(けいこ)で使っていたものだった。
「ベレンさんはこれを使ってくださいね。」
とその赤いぬのを渡された。ベレンは、これを手に取った。すごくサラサラしている。
「じゃあ今から袱紗捌き(ふくささばき)を教えるね!」
田中さんは本当に一からていねいに袱紗捌き(ふくささばき)のやり方を教えてくれた。ベレンはいっしょうけんめい覚えようとするけど、覚えようとすればするほど覚えられない。
「あたまがいっぱいになりそう。」
「だよね。始めは私もそうだった。」
とほほえみながら言う。ベレンもひっしになって、20分後くらいには、ぶきようながらも袱紗捌き(ふくささばき)ができるようになっていた。
「できた!」
「これは、この棗(なつめ)をきよめたりする時に使うの。茶道(さどう)の動作で何度もやるから覚えてね。」
という。
「棗(なつめ)って何ですか?」
「まっちゃを入れておくはこ?みたいなまるいものの事よ。」
ああ、あれかとベレンは思った。
「教えてくれてありがとうございました。」
茶道(さどう)の一つ一つの動作って本当に奥がふかいなぁ。ベレンは田中さんよりも全然しょさがうつくしくない。うつくしく見えるためにはもっとがんばらないといけないみたいだ。
「もう7時だし今日はもう帰っていいよ。」
と田中さんに言われた。
「はい。そうします!」
「最後に、入部を考えているのなら、入部するための紙をわたすけど、どうする?」
「ぜひ入部したいです。」
ベレンはすぐに決めた。茶道(さどう)っておかしも食べられるし、日本の文化をもっと知りたい!
「え?そんなに急がなくても大丈夫だよ。」
田中さんもびっくりしている。
「いえいえ。茶道(さどう)についてもっとくわしくなりたいです。」
「じゃあ、入部の紙をわたすね。ラインのグループにもしょうたいするね。」
ベレンのラインには、茶道部(さどうぶ)のグループがついかされ、入部の紙をうけとった。次の部活は二日後の金曜日らしい。次は先生からのしどうだ!ベレンはワクワクしていた。
そっと後ろの方の席に座ると、となりの人にじっと見られた。外国人はめずらしいのかもしれない。
「この場面では……。」
先生の話はいつも通りよくわからない。
いっしょうけんめいに聞いているうちによりんがなって、授業は終わった。この授業には留学生の友だちは一人もいないのでたよる相手がいない。
「うーん……。よくわからない」
先生のところに行ってベレンはわからないところを聞きに行った。
「この部分がよくわからないです。なんでこのようになるのですか?」
先生はベレンに気づくと、えがおで質問に答える。先生は50代くらいの女の人で、かみは短くメガネをかけている。質問の解答が終わると、先生は
「今日はどうしておくれたの?何かあったの?」
と少し心配そうに言った。
「バスを乗りすごしちゃって……。でも、着物を着た人に出会いました。茶道(さどう)って何ですか?」
「日本のでんとうてきな茶の湯(ちゃのゆ)を楽しむためのげいじゅつなのよ。中国から伝わったお茶のしゅうかんが、日本で変わりながらはってんしたもので、茶の湯(ちゃのゆ)を通じて、心のふかさや人とのつながりを大切にするのよ」
「へー。教えてくれてありがとうございます。」
ベレンはおじぎをして帰っていった。
その後すぐに、ベレンは大学に茶道(さどう)サークルがあるのかどうかをスマホでしらべていた。あ。あった。●●大学茶道部。○○とうで週に2回、週に一度先生を呼んでかつどうしています。いつでもきがるに来てください。と書いてある。次は水曜日がかつどうびのようだ。ベレンはさっそく見学に行くことを決めた。
水曜日。ベレンは茶道部のかつどう場所に来ていた。場所は、大学の図書館のすぐ近くにある建物で、とてもさびしい感じがする。そして、入るとすぐ右に、こわれた楽器がある。そして、どこからか三味線(しゃみせん:日本のでんとうてきな3本のげんを持つ楽器)の音がベンベンとひびきわたっている。ここに本当に和室があるのだろうかと思った。しかし、少し前を歩いて前を向くと、あきらかに日本風の引き戸がある。すぐにここだと感じた。
「すみません」
話しかけても何も答えてくれない。外から見ても部屋のでんとうはついている。戸をたたいた。すると、中から人が出てきた。ワンピースを着ていて、かたまで髪をおろしている。
「見学ですか?」
「はいそうです」
すると、
「じゃあちょっとココで待ってて」
しばらくすると、
「ここに座ってくれるかな?」
と和室のすみにあんないされた。ベレンは少しまよった。10人くらいがたたみの上で正座(せいざ:足をたたんでひざの上に座ること)をしていたからだ。ベレンは、はじめての正座をしようとした。
「はじめは大変だから、楽に座ってもいいよ」
と女の人は言った。あれ、この人よく見るとどこかであったことがある気がする。
「私は田中だけど、あなたの名前は何ていうの?」
「ベレンです。」
「外国の方?」
「留学生でアルゼンチンから来ました。」
「そんなところから?!遠いわね。」
「学部と学年はどこ?」
「えっと。学部は○○学部で、2年生です。」
「2学年で。わたしは教育学部」
「どこかで会ったことあるかもね」
と、どんどん話をした。ベレンは何とか正座をして座った。
「ちょうど、今から始まるから、見ててね。」
「はい。」
しばらくすると、田中さんが正座でふかくおじぎをしたあとに立ち、お盆(おぼん:日本のでんとうてきな皿)を持って入ってきた。田中さんは手を上手に動かしている。
「お菓子をどうぞ」
とつぜん田中さんが木のぼうを持ちながら言った。ベレンは目の前に出されたお菓子を食べた。お菓子は花のようなかたちをしていていた。食べてから、なんだこれはと思った。ちょっとあまくて、もちもちしている。
「このお菓子は何ですか?」
「このお菓子は、あんこ(甘いまめのペースト)が入っているのよ。あずきをつぶしてさとうを入れたものよ。」
「すごく独特な味ですね。」
田中さんは抹茶(まっちゃ)をおわんに入れて、おゆを入れた。そして、竹でできた泡だて器(あわだてき:たまごやクリームをあわ立てる道具)のような物を強く、静かにふった。
「お茶をどうぞ」
しばらくすると、お茶を出してくれた。ベレンはお茶を出すだけなのに、ずいぶんといろんなやり方があるのだと思っていた。ベレンは何が何だかよくわからないままおちゃわんをもらって、お茶を飲んでいた。
「少し苦いけど、まろやかでおいしいですね。」
「ありがとうございます。」
田中さんは少しほほえんだ。
そのままベレンが飲んだおちゃわんを田中さんは手に取って、またゆったりと手を動かして、きれいにしていった。
最後にお盆をもって、始めの時と同じようにゆかに手を付けて、正座をしておじぎをした。
「これで終わりですか?」
気づけば20分くらい時間がたっていた。
「一回のお稽古(おけいこ:ぎじゅつ、げいじゅつを学ぶための練習)は終わりかな。いつもこうやって練習をしているんですよ。今日は水曜日なので、自分で練習をしているんです。金曜日には外から先生がやってきてしどうしてくれるよ。」
「そうなんですね。」
「この後用事とかなかったら稽古(けいこ)が終わる7時まで見学ができるけどどうする?」
「せっかくなので、7時まで見学したいです!」
「そしたら、ちょっとすみの方で袱紗さばき(ふくささばき:袱紗(ふくさ:主に茶道(さどう)で使われるぬの)を使うときのぎじゅつ)を教えるね!」
田中さんにつれられて和室の少しうすぐらい所に行くと、田中さんが、赤いぬのを取り出した。さっきのお稽古(けいこ)で使っていたものだった。
「ベレンさんはこれを使ってくださいね。」
とその赤いぬのを渡された。ベレンは、これを手に取った。すごくサラサラしている。
「じゃあ今から袱紗捌き(ふくささばき)を教えるね!」
田中さんは本当に一からていねいに袱紗捌き(ふくささばき)のやり方を教えてくれた。ベレンはいっしょうけんめい覚えようとするけど、覚えようとすればするほど覚えられない。
「あたまがいっぱいになりそう。」
「だよね。始めは私もそうだった。」
とほほえみながら言う。ベレンもひっしになって、20分後くらいには、ぶきようながらも袱紗捌き(ふくささばき)ができるようになっていた。
「できた!」
「これは、この棗(なつめ)をきよめたりする時に使うの。茶道(さどう)の動作で何度もやるから覚えてね。」
という。
「棗(なつめ)って何ですか?」
「まっちゃを入れておくはこ?みたいなまるいものの事よ。」
ああ、あれかとベレンは思った。
「教えてくれてありがとうございました。」
茶道(さどう)の一つ一つの動作って本当に奥がふかいなぁ。ベレンは田中さんよりも全然しょさがうつくしくない。うつくしく見えるためにはもっとがんばらないといけないみたいだ。
「もう7時だし今日はもう帰っていいよ。」
と田中さんに言われた。
「はい。そうします!」
「最後に、入部を考えているのなら、入部するための紙をわたすけど、どうする?」
「ぜひ入部したいです。」
ベレンはすぐに決めた。茶道(さどう)っておかしも食べられるし、日本の文化をもっと知りたい!
「え?そんなに急がなくても大丈夫だよ。」
田中さんもびっくりしている。
「いえいえ。茶道(さどう)についてもっとくわしくなりたいです。」
「じゃあ、入部の紙をわたすね。ラインのグループにもしょうたいするね。」
ベレンのラインには、茶道部(さどうぶ)のグループがついかされ、入部の紙をうけとった。次の部活は二日後の金曜日らしい。次は先生からのしどうだ!ベレンはワクワクしていた。
ベレンが授業を受ける教室につくと、もうすでに授業は始まっていた。後ろの方のドアからそーっと入ると、先生と目が合った。
そっと後ろの方の席に座ると、隣の人から凝視された。外国人は珍しいのかもしれない。
「この場面では……。」
先生の話はいつも通りよくわからない。
必死に聞いているうちに予鈴が鳴って、授業は終わった。この授業には留学生の友達は一人もいないので頼る相手がいない。
「うーん……。よくわからない」
先生のところに行ってベレンはわからないところを聞きに行った。
「この部分がよくわからないです。なんでこのようになるのですか?」
先生はベレンに気づくと、笑顔で質問に答える。先生は50代くらいの女の人で、髪は短くメガネを掛けている。質問の解答が終わると、先生は
「今日はどうして遅れたの?何かあったの?」
と少し心配そうに言った。
「バスを乗り過ごしちゃって……。でも、着物を着た人に出会いました。茶道って何ですか?」
「日本の伝統的な茶の湯を楽しむための礼儀正しい儀式や芸術なのよ。中国から伝わった茶の習慣が、日本で発展・変容したもので、茶の湯を通じて精神的な深みや人間関係を大切にするのよ」
「へー。教えてくれてありがとうございます。」
ベレンはお辞儀をして帰っていった。
その後すぐに、ベレンは大学に茶道サークルがあるのかどうかをスマホで調べていた。あ。あった。●●大学茶道部。○○棟で週に2回、週に一度先生を呼んで活動しています。いつでも気軽に来てください。と書いてある。次は水曜日が活動日のようだ。ベレンは早速見学に行くことを決めた。
水曜日。ベレンは茶道部の活動場所に来ていた。場所は、大学の図書館のすぐ近くにある建物で、非常に寂れている。そして、入るとすぐ右に、壊れた楽器がある。そして、どこからか三味線の音がベンベンと響き渡っている。ここに本当に和室があるのだろうかと思った。しかし、少し前を歩いて前を向くと、明らかに日本風の引き戸がある。すぐにここだろうと直感した。
「すみません」
声を掛けても何も返答がない。外から見ても部屋の電灯はついている。戸を叩いた。すると、中から人が出てきた。ワンピースを着ていて、肩まで髪をおろしている。
「見学ですか?」
「はいそうです」
すると、
「じゃあちょっとココで待ってて」
しばらくすると、
「ここに座ってくれるかな?」
と和室の隅に案内された。ベレンは少し戸惑った。10人くらいが畳の上で正座をしていたからだ。ベレンは、はじめての正座をしようとした。
「始めは大変だから、少し崩して座ってもいいよ」
と女の人は言った。あれ、この人よく見るとどこかであったことがある気がする。
「私は田中だけど、あなたの名前は何ていうの?」
「ベレンです。」
「外国の方?」
「交換留学生でアルゼンチンから来ました。」
「そんなところから?!遠いわね。」
「学部と学年はどこ?」
「えっと。学部は○○学部で、2年生です。」
「2学年で。わたしは教育学部」
「どこかで会ったことあるかもね」
と、矢継ぎ早に会話をした。ベレンは何とか正座をして座った。
「丁度、今から始まるから、見ててね。」
「はい。」
しばらくすると、田中さんが正座のまま深く地面に手を付けてお辞儀をした後に立ち上がり、お盆を持って入ってきた。田中さんは手慣れた感じでスルスルと手を動かしている。
「お菓子をどうぞ」
突然田中さんが木の棒を持ちながら言った。ベレンは目の前に出されたお菓子を食べた。お菓子は花のような形をしていていた。食べた瞬間、なんだこれはと思った。素朴な甘さで、ねっとりとしている。
「このお菓子は何ですか?」
「このお菓子は、餡子が入っているのよ。小豆をつぶして砂糖を入れたものよ。」
「不思議な触感がしますね。」
田中さんは抹茶をお椀に入れて、お湯を入れた。そして、竹でできた泡だて器のような物を勢いよく、静かに縦にふった。
「お茶をどうぞ」
しばらくすると、お茶を出してくれた。ベレンはお茶を出すだけなのに、ずいぶんと色んな手順があるのだと思っていた。ベレンは何が何だかよくわからないままお茶碗をもらって、お茶を飲んでいた。
「少し苦いけど、まろやかで美味しいですね。」
「ありがとうございます。」
田中さんは少し微笑んだ。
そのままベレンが飲み干したお茶碗を田中さんは手に取って、またゆったりと手を動かして、綺麗にしていった。
最後にお盆をもって、始めの時と同じように床に手を付けて、正座をしてお辞儀をした。
「これで終わりですか?」
気づけば20分くらい時間がたっていた。
「一回のお稽古は終わりかな。いつもこうやって練習をしているんですよ。今日は水曜日なので、自主練をしているんです。金曜日には外から先生がやってきて指導してくれるよ。」
「そうなんですね。」
「この後用事とかなかったら稽古が終わる7時まで見学ができるけどどうする?」
「せっかくなので、7時まで見学したいです!」
「そしたら、ちょっと隅の方で袱紗さばきを教えるね!」
田中さんに連れられて和室の少し薄暗い所に行くと、田中さんが、赤い布を取り出した。さっきのお稽古で使っていたものだった。
「ベレンさんはこれを使ってくださいね。」
とその赤い布を渡された。ベレンは、これを手に取った。すごくサラサラしている。
「じゃあ今から袱紗捌きを教えるね!」
田中さんは本当に一から丁寧に袱紗捌きのやり方を教えてくれた。ベレンは一生懸命覚えようとするけど、覚えようとすればするほど覚えられない。
「あたまがいっぱいになりそう。」
「だよね。始めは私もそうだった。」
と微笑みながら言う。ベレンも必死になって、20分後くらいには、不器用ながらも袱紗捌きができるようになっていた。
「できた!」
「これは、この棗を清めたりする時に使うの。茶道の動作で何度もやるから覚えてね。」
という。
「棗って何ですか?」
「抹茶を入れておく箱?みたいな丸いものの事よ。」
ああ、あれかとベレンは思った。
「教えてくれてありがとうございました。」
茶道の一つ一つの動作って本当に奥が深いなぁ。ベレンは田中さんよりも全然所作が美しくない。美しく見えるためにはもっと頑張らないといけないみたいだ。
「もう7時だし今日はもう帰っていいよ。」
と田中さんに言われた。
「はい。そうします!」
「最後に、入部を考えているのなら、入部するための紙を渡すけど、どうする?」
「是非入部したいです。」
ベレンは即決した。茶道ってお菓子も食べられるし、日本の文化をもっと知りたい!
「え?そんなに急がなくても大丈夫だよ。」
田中さんですらびっくりしている。
「いえいえ。茶道についてもっと詳しくなりたいです。」
「じゃあ、入部の紙を渡すね。ラインのグループにも招待するね。」
ベレンのラインには、茶道部のグループが追加され、入部の紙を受け取った。次の部活は二日後の金曜日らしい。次は先生からの指導だ!ベレンはワクワクしていた。
そっと後ろの方の席に座ると、隣の人から凝視された。外国人は珍しいのかもしれない。
「この場面では……。」
先生の話はいつも通りよくわからない。
必死に聞いているうちに予鈴が鳴って、授業は終わった。この授業には留学生の友達は一人もいないので頼る相手がいない。
「うーん……。よくわからない」
先生のところに行ってベレンはわからないところを聞きに行った。
「この部分がよくわからないです。なんでこのようになるのですか?」
先生はベレンに気づくと、笑顔で質問に答える。先生は50代くらいの女の人で、髪は短くメガネを掛けている。質問の解答が終わると、先生は
「今日はどうして遅れたの?何かあったの?」
と少し心配そうに言った。
「バスを乗り過ごしちゃって……。でも、着物を着た人に出会いました。茶道って何ですか?」
「日本の伝統的な茶の湯を楽しむための礼儀正しい儀式や芸術なのよ。中国から伝わった茶の習慣が、日本で発展・変容したもので、茶の湯を通じて精神的な深みや人間関係を大切にするのよ」
「へー。教えてくれてありがとうございます。」
ベレンはお辞儀をして帰っていった。
その後すぐに、ベレンは大学に茶道サークルがあるのかどうかをスマホで調べていた。あ。あった。●●大学茶道部。○○棟で週に2回、週に一度先生を呼んで活動しています。いつでも気軽に来てください。と書いてある。次は水曜日が活動日のようだ。ベレンは早速見学に行くことを決めた。
水曜日。ベレンは茶道部の活動場所に来ていた。場所は、大学の図書館のすぐ近くにある建物で、非常に寂れている。そして、入るとすぐ右に、壊れた楽器がある。そして、どこからか三味線の音がベンベンと響き渡っている。ここに本当に和室があるのだろうかと思った。しかし、少し前を歩いて前を向くと、明らかに日本風の引き戸がある。すぐにここだろうと直感した。
「すみません」
声を掛けても何も返答がない。外から見ても部屋の電灯はついている。戸を叩いた。すると、中から人が出てきた。ワンピースを着ていて、肩まで髪をおろしている。
「見学ですか?」
「はいそうです」
すると、
「じゃあちょっとココで待ってて」
しばらくすると、
「ここに座ってくれるかな?」
と和室の隅に案内された。ベレンは少し戸惑った。10人くらいが畳の上で正座をしていたからだ。ベレンは、はじめての正座をしようとした。
「始めは大変だから、少し崩して座ってもいいよ」
と女の人は言った。あれ、この人よく見るとどこかであったことがある気がする。
「私は田中だけど、あなたの名前は何ていうの?」
「ベレンです。」
「外国の方?」
「交換留学生でアルゼンチンから来ました。」
「そんなところから?!遠いわね。」
「学部と学年はどこ?」
「えっと。学部は○○学部で、2年生です。」
「2学年で。わたしは教育学部」
「どこかで会ったことあるかもね」
と、矢継ぎ早に会話をした。ベレンは何とか正座をして座った。
「丁度、今から始まるから、見ててね。」
「はい。」
しばらくすると、田中さんが正座のまま深く地面に手を付けてお辞儀をした後に立ち上がり、お盆を持って入ってきた。田中さんは手慣れた感じでスルスルと手を動かしている。
「お菓子をどうぞ」
突然田中さんが木の棒を持ちながら言った。ベレンは目の前に出されたお菓子を食べた。お菓子は花のような形をしていていた。食べた瞬間、なんだこれはと思った。素朴な甘さで、ねっとりとしている。
「このお菓子は何ですか?」
「このお菓子は、餡子が入っているのよ。小豆をつぶして砂糖を入れたものよ。」
「不思議な触感がしますね。」
田中さんは抹茶をお椀に入れて、お湯を入れた。そして、竹でできた泡だて器のような物を勢いよく、静かに縦にふった。
「お茶をどうぞ」
しばらくすると、お茶を出してくれた。ベレンはお茶を出すだけなのに、ずいぶんと色んな手順があるのだと思っていた。ベレンは何が何だかよくわからないままお茶碗をもらって、お茶を飲んでいた。
「少し苦いけど、まろやかで美味しいですね。」
「ありがとうございます。」
田中さんは少し微笑んだ。
そのままベレンが飲み干したお茶碗を田中さんは手に取って、またゆったりと手を動かして、綺麗にしていった。
最後にお盆をもって、始めの時と同じように床に手を付けて、正座をしてお辞儀をした。
「これで終わりですか?」
気づけば20分くらい時間がたっていた。
「一回のお稽古は終わりかな。いつもこうやって練習をしているんですよ。今日は水曜日なので、自主練をしているんです。金曜日には外から先生がやってきて指導してくれるよ。」
「そうなんですね。」
「この後用事とかなかったら稽古が終わる7時まで見学ができるけどどうする?」
「せっかくなので、7時まで見学したいです!」
「そしたら、ちょっと隅の方で袱紗さばきを教えるね!」
田中さんに連れられて和室の少し薄暗い所に行くと、田中さんが、赤い布を取り出した。さっきのお稽古で使っていたものだった。
「ベレンさんはこれを使ってくださいね。」
とその赤い布を渡された。ベレンは、これを手に取った。すごくサラサラしている。
「じゃあ今から袱紗捌きを教えるね!」
田中さんは本当に一から丁寧に袱紗捌きのやり方を教えてくれた。ベレンは一生懸命覚えようとするけど、覚えようとすればするほど覚えられない。
「あたまがいっぱいになりそう。」
「だよね。始めは私もそうだった。」
と微笑みながら言う。ベレンも必死になって、20分後くらいには、不器用ながらも袱紗捌きができるようになっていた。
「できた!」
「これは、この棗を清めたりする時に使うの。茶道の動作で何度もやるから覚えてね。」
という。
「棗って何ですか?」
「抹茶を入れておく箱?みたいな丸いものの事よ。」
ああ、あれかとベレンは思った。
「教えてくれてありがとうございました。」
茶道の一つ一つの動作って本当に奥が深いなぁ。ベレンは田中さんよりも全然所作が美しくない。美しく見えるためにはもっと頑張らないといけないみたいだ。
「もう7時だし今日はもう帰っていいよ。」
と田中さんに言われた。
「はい。そうします!」
「最後に、入部を考えているのなら、入部するための紙を渡すけど、どうする?」
「是非入部したいです。」
ベレンは即決した。茶道ってお菓子も食べられるし、日本の文化をもっと知りたい!
「え?そんなに急がなくても大丈夫だよ。」
田中さんですらびっくりしている。
「いえいえ。茶道についてもっと詳しくなりたいです。」
「じゃあ、入部の紙を渡すね。ラインのグループにも招待するね。」
ベレンのラインには、茶道部のグループが追加され、入部の紙を受け取った。次の部活は二日後の金曜日らしい。次は先生からの指導だ!ベレンはワクワクしていた。