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つぎの日、下諏訪(しもすわ)に戻ったベレンはトシさんにぜんぶの話をつたえた。洞窟(どうくつ)とその中のほこらが本当にあったこと、そしてほこらのうつわは使わなかったことをつたえると、トシさんはにがわらいしながら言った。
「そうか。まあそれがお前のせんたくならおれは何も言わん」
女将さんにはさすがにほこらのことは言えなかったが、ぶじに山に登って帰ってきたことをつたえるととてもよろこんでくれた。
「ベレン、ひとまわりたくましくなったわね。体じゃなくて、気持ちのことよ」
そう言われると、たしかにそうだった。
このぼうけんを通して、だいぶ心が強くなったようにかんじた。今までにないつらい道で、とちゅうであきらめそうになったこともあった。そんな中で目的のほこらを見つけ、山頂(さんちょう)に登れたことがベレンの強い自信になった。ほこらのうつわになよらなくても、どんな問題もきっと自力でかいけつできるような気がした。何せ、2500mの山を一人で登ることができたのだ。
数十年後、甲武信ヶ岳(こうぶしんがたけ)登山道の入り口、毛木平(もうきだいら)に一人のわかい女の子がやってきた。少し日本人とはちがう、ととのった顔をしていて、甲武信ヶ岳を見上げながらにっこりとわらった。
「ここがひいおばあ様が登った山…待ってなさい、きっとほこらをみつけて、登り切ってやるんだから!」
次の日、下諏訪に戻ったベレンはトシさんに事の顛末を報告した。洞窟とその中の祠が実在したこと、そして銅の器は使わなかったことを伝えると、トシさんは苦笑しながら言った。
「そうか。まあそれがお前の選択なら俺は何も言わん」
女将さんにはさすがに祠のことは言えなかったが、無事登頂して帰ってきたことを伝えるととても喜んでくれた。
「ベレン、一回りたくましくなったわね。体じゃなくて、気持ちのことよ」
そう言われると、確かにそうだった。
この冒険を通して、随分精神的に強くなった気がした。今までにない苦しい道中であり、途中でくじけそうにもなった。そんな中で目的の祠を見つけ、更には登頂まで達成したのはベレンの中で強い自信になった。銅の器に頼らなくても、どんな問題もきっと自力で解決できるような気がした。何せ、2500mの山を一人で登ることができたのだ。
数十年後、甲武信ヶ岳登山道の入り口、毛木平に一人の若い女の子がやってきた。やや日本人離れした整った顔立ちで、甲武信ヶ岳を見上げてにっこりと笑った。
「ここがひいおばあ様が登った山…待ってなさい、きっと祠をみつけて、登り切ってやるんだから!」