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大学受験(じゅけん)
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ユーは中国の北京(ペキン)で生まれました。お父さんは大学の化学の先生で、お母さんは小学校の先生です。ユーは長男で下に弟がいます。子どもの時から空を見るのが好きでした。空の青さ、光、雲、空から降る雨、雪、ユーにとって、みんなおもしろくてふしぎなものでした。小学校に入ると、空についての本を読んだり、空や雲の写真をとったりしていました。友だちとあそぶ時も、よく空を見上げて、今日の雲はおもしろいね、と話したりしました。
中学校に入ると、ユーは空の向こうの宇宙(うちゅう)のことも知りたくなりました。ひまな時、図書館へ行って、かんたんな天文学(てんもんがく:星や宇宙について学ぶ学問)の本を読みました。だんだん宇宙のこともわかるようになりました。
高校に入ると、少しむずかしい天文学の本がわかるようになりました。大学生が読む本もわかるようになって、大学では天文学を勉強したい、と思うようになりました。そして、天文学が勉強できる大学に入るために、入学試験をうけることにしました。
中国では、大学に入りたい人はとういつしけん(みんなが同じ問題で受けるしけん)を受けなければなりません。このしけんのけっかと、入りたい大学の学部の人数によって、大学に入れるかどうかがきまります。天文学は理学部で勉強することができますが、学科は大学によってちがいます。北京には、北京東北大学理学部天文学科と第三北京大学理学部物理学科があります。それぞれ、人数は20人と30人です。ユーは、物理学科には天文学以外を勉強したい人もいるかもしれないと考えました。でも、天文学科には天文を勉強したい人だけが来ると思い、北京東北大学を第1しぼうにしました。第2しぼうとして、第三北京大学を考えることにしました。
ユーは、どの科目もよくできたので、とくにしけんのための勉強はしませんでした。高校のトウ先生は言いました。
「ユーくんは、高校生なのに、本当に天文のことをよく知っていますね。それに、いろいろな科目もよくできる。すぐに大学に入れるでしょう。」
友だちのオウくんも言いました。
「ユーくん、すごいよね。天文のことよく知ってて。ぼくも物理のことを勉強したいんだけど、なかなかユーくんにはおいつけない。ユーくんがうらやましいよ。」
それを聞いたユーは、自分でも、たぶんだいじょうぶだろう、と思いました。
6月に入って、とういつしけんの日が来ました。ユーは、しけんが終わった時、
(数学がちょっとむずかしかったけど、だいたいできたかな。理科もわかったから、だいじょうぶだろう。うん、たぶんだいじょうぶだろう。)
と思いました。
その後、しけんのけっかがわかりました。1000点満点中800点で、悪くない点数でした。でも、ユーは思いました。
(思ったより悪い。だいじょうぶだろうか? 北京東北大学も第三北京大学も入れるレベルだろうか?)
中国では、とういつしけんのけっかを見て、インターネットでしぼう大学やしぼう学部にもうしこむことになっています。ユーはトウ先生にそうだんしました。
「とういつしけん、800点だったんですが、北京東北大学と第三北京大学と、どちらも入れるレベルでしょうか?」
トウ先生は言いました。
「そうですね。第三北京大学理学部物理学科は820点台ぐらいひつようなようです。北京東北大学理学部天文学科は800点台でぎりぎりのようです。」
「じゃ、北京東北大学のほうが安全でしょうか。」
「そう思います。」
そこで、ユーはインターネットで第1しぼうの北京東北大学にもうしこむことにしました。つぎの週、ユーはそのけっかを受け取りました。・・・が、なんと、「不合格」と書いてあるではありませんか。
(ウソ! ウソでしょ!? どうして・・・)
ユーはどうしても信じられなかったので、北京東北大学に電話をしました。けれども、大学の人は言いました。
「しけんのけっかについては、答えられません。」
ユーは、がっかりして、というより、頭の中が真っ白になって、何が何だかわからなくなってしまいました。
(やっぱり、しけんのための勉強をしなかったのがいけなかったのか・・・。みんな本当にいっしょうけんめい勉強してたよね・・・。今ごろ気がついてもおそいけど・・・。でも、これからどうしたらいい・・・?)
ユーは、自分のことを信じすぎていた、考えがあまかった、と思って、くやしくてくやしくて、なみだが出てきました。そして、これからのことを考えると、どうしたらいいかわからなくなって、その夜はぜんぜんねむれませんでした。
それでも、トウ先生には伝えないと、と思って、つぎの日、ユーは先生にけっかを伝えに行きました。ユーは元気のない声で言いました。
「トウ先生、北京東北大学は不合格でした・・・。」
先生もびっくりして、しばらく声が出ませんでした。
「・・・・・・そうですか・・・。ざんねんだったけど、でも、がっかりしないで。他にもいろいろな道があるから。いろいろしらべてみましょう。ユーくんは天文学を勉強したかったんだよね。ほかに勉強したいことはある?」
とおっしゃいました。ユーははっきりと言いました。
「天文学のほかには考えられません。」
「じゃ、外国で勉強するのはどうかなあ。考えたことがありますか。たとえば日本とか。」
「いえ、考えたことがありません。」
ユーはひくい声で言いました。
それからしばらくの間、ユーは高校でいろいろな友だちが大学に合格した、という話を聞きました。
「リーくん、上海(しゃんはい)中国大学に合格したんだって。」
「チンさんは満州(まんしゅう)大学に行くんだって。」
「リュウちゃんは山海大学だって。」
ユーはそんな話を聞いた時は、いつも
「ふうん。」
と答えるだけでした。ある時、友だちのチョウくんがユーに話しかけました。
「ねえ、ユーくん、オウくん、第三北京大学に行くんだって。」
「ほんと? 何学部?」
「理学部だって。物理学科って言ってたよ。」
「えっ、物理学科?」
ユーは思わず聞きかえしました。ユーが第2しぼうで考えていた所です。そして、オウくんは、ユーのことがうらやましいと言っていた友だちです。
(えっ、あのオウくんが、北京東北大学よりむずかしそうな第三北京大学に合格したの・・・!?)
ユーはそう思いましたが、ユーはくやしくて声に出すことはできませんでした。ユーは自信をなくしてしまいました。そんなことは知らないチョウくんはユーに聞きました。
「それで、ユーくんはどうするの?」
ユーはだまって、チョウくんからはなれました。
ユーはくやしくて、かなしくなって、だんだん元気がなくなりました。
中学校に入ると、ユーは空の向こうの宇宙(うちゅう)のことも知りたくなりました。ひまな時、図書館へ行って、かんたんな天文学(てんもんがく:星や宇宙について学ぶ学問)の本を読みました。だんだん宇宙のこともわかるようになりました。
高校に入ると、少しむずかしい天文学の本がわかるようになりました。大学生が読む本もわかるようになって、大学では天文学を勉強したい、と思うようになりました。そして、天文学が勉強できる大学に入るために、入学試験をうけることにしました。
中国では、大学に入りたい人はとういつしけん(みんなが同じ問題で受けるしけん)を受けなければなりません。このしけんのけっかと、入りたい大学の学部の人数によって、大学に入れるかどうかがきまります。天文学は理学部で勉強することができますが、学科は大学によってちがいます。北京には、北京東北大学理学部天文学科と第三北京大学理学部物理学科があります。それぞれ、人数は20人と30人です。ユーは、物理学科には天文学以外を勉強したい人もいるかもしれないと考えました。でも、天文学科には天文を勉強したい人だけが来ると思い、北京東北大学を第1しぼうにしました。第2しぼうとして、第三北京大学を考えることにしました。
ユーは、どの科目もよくできたので、とくにしけんのための勉強はしませんでした。高校のトウ先生は言いました。
「ユーくんは、高校生なのに、本当に天文のことをよく知っていますね。それに、いろいろな科目もよくできる。すぐに大学に入れるでしょう。」
友だちのオウくんも言いました。
「ユーくん、すごいよね。天文のことよく知ってて。ぼくも物理のことを勉強したいんだけど、なかなかユーくんにはおいつけない。ユーくんがうらやましいよ。」
それを聞いたユーは、自分でも、たぶんだいじょうぶだろう、と思いました。
6月に入って、とういつしけんの日が来ました。ユーは、しけんが終わった時、
(数学がちょっとむずかしかったけど、だいたいできたかな。理科もわかったから、だいじょうぶだろう。うん、たぶんだいじょうぶだろう。)
と思いました。
その後、しけんのけっかがわかりました。1000点満点中800点で、悪くない点数でした。でも、ユーは思いました。
(思ったより悪い。だいじょうぶだろうか? 北京東北大学も第三北京大学も入れるレベルだろうか?)
中国では、とういつしけんのけっかを見て、インターネットでしぼう大学やしぼう学部にもうしこむことになっています。ユーはトウ先生にそうだんしました。
「とういつしけん、800点だったんですが、北京東北大学と第三北京大学と、どちらも入れるレベルでしょうか?」
トウ先生は言いました。
「そうですね。第三北京大学理学部物理学科は820点台ぐらいひつようなようです。北京東北大学理学部天文学科は800点台でぎりぎりのようです。」
「じゃ、北京東北大学のほうが安全でしょうか。」
「そう思います。」
そこで、ユーはインターネットで第1しぼうの北京東北大学にもうしこむことにしました。つぎの週、ユーはそのけっかを受け取りました。・・・が、なんと、「不合格」と書いてあるではありませんか。
(ウソ! ウソでしょ!? どうして・・・)
ユーはどうしても信じられなかったので、北京東北大学に電話をしました。けれども、大学の人は言いました。
「しけんのけっかについては、答えられません。」
ユーは、がっかりして、というより、頭の中が真っ白になって、何が何だかわからなくなってしまいました。
(やっぱり、しけんのための勉強をしなかったのがいけなかったのか・・・。みんな本当にいっしょうけんめい勉強してたよね・・・。今ごろ気がついてもおそいけど・・・。でも、これからどうしたらいい・・・?)
ユーは、自分のことを信じすぎていた、考えがあまかった、と思って、くやしくてくやしくて、なみだが出てきました。そして、これからのことを考えると、どうしたらいいかわからなくなって、その夜はぜんぜんねむれませんでした。
それでも、トウ先生には伝えないと、と思って、つぎの日、ユーは先生にけっかを伝えに行きました。ユーは元気のない声で言いました。
「トウ先生、北京東北大学は不合格でした・・・。」
先生もびっくりして、しばらく声が出ませんでした。
「・・・・・・そうですか・・・。ざんねんだったけど、でも、がっかりしないで。他にもいろいろな道があるから。いろいろしらべてみましょう。ユーくんは天文学を勉強したかったんだよね。ほかに勉強したいことはある?」
とおっしゃいました。ユーははっきりと言いました。
「天文学のほかには考えられません。」
「じゃ、外国で勉強するのはどうかなあ。考えたことがありますか。たとえば日本とか。」
「いえ、考えたことがありません。」
ユーはひくい声で言いました。
それからしばらくの間、ユーは高校でいろいろな友だちが大学に合格した、という話を聞きました。
「リーくん、上海(しゃんはい)中国大学に合格したんだって。」
「チンさんは満州(まんしゅう)大学に行くんだって。」
「リュウちゃんは山海大学だって。」
ユーはそんな話を聞いた時は、いつも
「ふうん。」
と答えるだけでした。ある時、友だちのチョウくんがユーに話しかけました。
「ねえ、ユーくん、オウくん、第三北京大学に行くんだって。」
「ほんと? 何学部?」
「理学部だって。物理学科って言ってたよ。」
「えっ、物理学科?」
ユーは思わず聞きかえしました。ユーが第2しぼうで考えていた所です。そして、オウくんは、ユーのことがうらやましいと言っていた友だちです。
(えっ、あのオウくんが、北京東北大学よりむずかしそうな第三北京大学に合格したの・・・!?)
ユーはそう思いましたが、ユーはくやしくて声に出すことはできませんでした。ユーは自信をなくしてしまいました。そんなことは知らないチョウくんはユーに聞きました。
「それで、ユーくんはどうするの?」
ユーはだまって、チョウくんからはなれました。
ユーはくやしくて、かなしくなって、だんだん元気がなくなりました。
ユーは中国の北京(ペキン)で生まれました。お父さんは大学の化学の先生で、お母さんは小学校の先生です。ユーは長男で下に弟がいます。子どもの時から空を見るのが好きでした。空の青さ、光、雲、空から降る雨、雪、ユーにとって、みんなおもしろくてふしぎなものでした。小学校に入ると、空についての本を読んだり、空や雲の写真をとったりしていました。友だちとあそぶ時も、よく空を見上げて、今日の雲はおもしろいね、と話したりしました。
中学校に入ると、ユーは空の向こうの宇宙(うちゅう)のことも知りたくなりました。暇な時、図書館へ行って、かんたんな天文学の本を読みました。だんだん宇宙のこともわかるようになりました。
高校に入ると、少しむずかしい天文学の本がわかるようになりました。大学生が読む本もわかるようになって、大学では天文学を勉強したい、と思うようになりました。そして、天文学が勉強できる大学に入るために、入学試験を受けることにしました。
中国では、大学に入りたい人は統一(とういつ)試験を受けなければなりません。この試験の結果と、入りたい大学の学部の定員によって、大学に入れるかどうかが決まります。天文学は理学部で勉強することができますが、学科は大学によってちがいます。北京には、北京東北大学理学部天文学科と第三北京大学理学部物理学科があります。それぞれ、定員は20人と30人です。ユーは、物理学科には天文学ではないことを勉強したい人もいるだろう、それに対して、天文学科は天文を勉強したい人だけが来るだろう、と思って、北京東北大学を第1志望(しぼう)にしました。第2志望として、第三北京大学を考えることにしました。
ユーは、どの科目もよくできたので、とくに試験のための勉強はしませんでした。高校のトウ先生は言いました。
「ユーくんは、高校生なのに、本当に天文のことをよく知っていますね。それに、いろいろな科目もよくできる。すぐに大学に入れるでしょう。」
友だちのオウくんも言いました。
「ユーくん、すごいよね。天文のことよく知ってて。ぼくも物理のことを勉強したいんだけど、なかなかユーくんにはおいつけない。ユーくんがうらやましいよ。」
それを聞いたユーは、自分でも、たぶんだいじょうぶだろう、と思いました。
6月に入って、統一試験の日が来ました。ユーは、試験が終わった時、
(数学がちょっとむずかしかったけど、だいたいできたかな。理科もわかったから、だいじょうぶだろう。うん、たぶんだいじょうぶだろう。)
と思いました。
その後、試験の結果がわかりました。1000点満点中800点で、悪くない点数でした。でも、ユーは思いました。
(思ったより悪い。だいじょうぶだろうか? 北京東北大学も第三北京大学も入れるレベルだろうか?)
中国では、統一試験の結果を見て、インターネットで志望大学や志望学部に申しこむことになっています。ユーはトウ先生に相談しました。
「統一試験、800点だったんですが、北京東北大学と第三北京大学と、どちらも入れるレベルでしょうか?」
トウ先生は言いました。
「そうですね。第三北京大学理学部物理学科は820点台ぐらい必要なようです。北京東北大学理学部天文学科は800点台でぎりぎりのようです。」
「じゃ、北京東北大学のほうが安全でしょうか。」
「そう思います。」
そこで、ユーはインターネットで第1志望の北京東北大学に申しこむことにしました。つぎの週、ユーはその結果を受け取りました。・・・が、なんと、「不合格」と書いてあるではありませんか。
(ウソ! ウソでしょ!? どうして・・・)
ユーはどうしても信じられなかったので、北京東北大学に電話をしました。けれども、大学の人は言いました。
「試験の結果については、答えられません。」
ユーは、がっかりして、というより、頭の中が真っ白になって、何が何だかわからなくなってしまいました。
(やっぱり、試験のための勉強をしなかったのがいけなかったのか・・・。みんな本当にいっしょうけんめい勉強してたよね・・・。今ごろ気がついてもおそいけど・・・。でも、これからどうしたらいい・・・?)
ユーは、自分のことを信じすぎていた、考えがあまかった、と思って、くやしくてくやしくて、なみだが出てきました。そして、これからのことを考えると、どうしたらいいかわからなくなって、その夜はぜんぜんねむれませんでした。
それでも、トウ先生には伝えないと、と思って、つぎの日、ユーは先生に結果を伝えに行きました。ユーは元気のない声で言いました。
「トウ先生、北京東北大学は不合格でした・・・。」
先生もびっくりして、しばらく声が出ませんでした。
「・・・・・・そうですか・・・。残念だったけど、でも、がっかりしないで。他にもいろいろな道があるから。いろいろ調べてみましょう。ユーくんは天文学を勉強したかったんだよね。ほかに勉強したいことはある?」
とおっしゃいました。ユーははっきりと言いました。
「天文学のほかには考えられません。」
「じゃ、外国で勉強するのはどうかなあ。考えたことがありますか。たとえば日本とか。」
「いえ、考えたことがありません。」
ユーはひくい声で言いました。
それからしばらくの間、ユーは高校でいろいろな友だちが大学に合格した、という話を聞
きました。
「リーくん、上海(しゃんはい)中国大学に合格したんだって。」
「チンさんは満州(まんしゅう)大学に行くんだって。」
「リュウちゃんは山海大学だって。」
ユーはそんな話を聞いた時は、いつも
「ふうん。」
と答えるだけでした。ある時、友だちのチョウくんがユーに話しかけました。
「ねえ、ユーくん、オウくん、第三北京大学に行くんだって。」
「ほんと? 何学部?」
「理学部だって。物理学科って言ってたよ。」
「えっ、物理学科?」
ユーは思わず聞き返しました。ユーが第2志望で考えていた所です。そして、オウくんは、ユーのことがうらやましいと言っていた友だちです。
(えっ、あのオウくんが、北京東北大学よりむずかしそうな第三北京大学に合格したの・・・!?)
ユーはそう思いましたが、ユーはくやしくて声に出すことはできませんでした。ユーのプラ
イドはずたずたになってしまいました。そんなことは知らないチョウくんはユーに聞きました。
「それで、ユーくんはどうするの?」
ユーはだまって、チョウくんからはなれました。
ユーはくやしくて、なさけなくて、まずまず元気がなくなりました。
中学校に入ると、ユーは空の向こうの宇宙(うちゅう)のことも知りたくなりました。暇な時、図書館へ行って、かんたんな天文学の本を読みました。だんだん宇宙のこともわかるようになりました。
高校に入ると、少しむずかしい天文学の本がわかるようになりました。大学生が読む本もわかるようになって、大学では天文学を勉強したい、と思うようになりました。そして、天文学が勉強できる大学に入るために、入学試験を受けることにしました。
中国では、大学に入りたい人は統一(とういつ)試験を受けなければなりません。この試験の結果と、入りたい大学の学部の定員によって、大学に入れるかどうかが決まります。天文学は理学部で勉強することができますが、学科は大学によってちがいます。北京には、北京東北大学理学部天文学科と第三北京大学理学部物理学科があります。それぞれ、定員は20人と30人です。ユーは、物理学科には天文学ではないことを勉強したい人もいるだろう、それに対して、天文学科は天文を勉強したい人だけが来るだろう、と思って、北京東北大学を第1志望(しぼう)にしました。第2志望として、第三北京大学を考えることにしました。
ユーは、どの科目もよくできたので、とくに試験のための勉強はしませんでした。高校のトウ先生は言いました。
「ユーくんは、高校生なのに、本当に天文のことをよく知っていますね。それに、いろいろな科目もよくできる。すぐに大学に入れるでしょう。」
友だちのオウくんも言いました。
「ユーくん、すごいよね。天文のことよく知ってて。ぼくも物理のことを勉強したいんだけど、なかなかユーくんにはおいつけない。ユーくんがうらやましいよ。」
それを聞いたユーは、自分でも、たぶんだいじょうぶだろう、と思いました。
6月に入って、統一試験の日が来ました。ユーは、試験が終わった時、
(数学がちょっとむずかしかったけど、だいたいできたかな。理科もわかったから、だいじょうぶだろう。うん、たぶんだいじょうぶだろう。)
と思いました。
その後、試験の結果がわかりました。1000点満点中800点で、悪くない点数でした。でも、ユーは思いました。
(思ったより悪い。だいじょうぶだろうか? 北京東北大学も第三北京大学も入れるレベルだろうか?)
中国では、統一試験の結果を見て、インターネットで志望大学や志望学部に申しこむことになっています。ユーはトウ先生に相談しました。
「統一試験、800点だったんですが、北京東北大学と第三北京大学と、どちらも入れるレベルでしょうか?」
トウ先生は言いました。
「そうですね。第三北京大学理学部物理学科は820点台ぐらい必要なようです。北京東北大学理学部天文学科は800点台でぎりぎりのようです。」
「じゃ、北京東北大学のほうが安全でしょうか。」
「そう思います。」
そこで、ユーはインターネットで第1志望の北京東北大学に申しこむことにしました。つぎの週、ユーはその結果を受け取りました。・・・が、なんと、「不合格」と書いてあるではありませんか。
(ウソ! ウソでしょ!? どうして・・・)
ユーはどうしても信じられなかったので、北京東北大学に電話をしました。けれども、大学の人は言いました。
「試験の結果については、答えられません。」
ユーは、がっかりして、というより、頭の中が真っ白になって、何が何だかわからなくなってしまいました。
(やっぱり、試験のための勉強をしなかったのがいけなかったのか・・・。みんな本当にいっしょうけんめい勉強してたよね・・・。今ごろ気がついてもおそいけど・・・。でも、これからどうしたらいい・・・?)
ユーは、自分のことを信じすぎていた、考えがあまかった、と思って、くやしくてくやしくて、なみだが出てきました。そして、これからのことを考えると、どうしたらいいかわからなくなって、その夜はぜんぜんねむれませんでした。
それでも、トウ先生には伝えないと、と思って、つぎの日、ユーは先生に結果を伝えに行きました。ユーは元気のない声で言いました。
「トウ先生、北京東北大学は不合格でした・・・。」
先生もびっくりして、しばらく声が出ませんでした。
「・・・・・・そうですか・・・。残念だったけど、でも、がっかりしないで。他にもいろいろな道があるから。いろいろ調べてみましょう。ユーくんは天文学を勉強したかったんだよね。ほかに勉強したいことはある?」
とおっしゃいました。ユーははっきりと言いました。
「天文学のほかには考えられません。」
「じゃ、外国で勉強するのはどうかなあ。考えたことがありますか。たとえば日本とか。」
「いえ、考えたことがありません。」
ユーはひくい声で言いました。
それからしばらくの間、ユーは高校でいろいろな友だちが大学に合格した、という話を聞
きました。
「リーくん、上海(しゃんはい)中国大学に合格したんだって。」
「チンさんは満州(まんしゅう)大学に行くんだって。」
「リュウちゃんは山海大学だって。」
ユーはそんな話を聞いた時は、いつも
「ふうん。」
と答えるだけでした。ある時、友だちのチョウくんがユーに話しかけました。
「ねえ、ユーくん、オウくん、第三北京大学に行くんだって。」
「ほんと? 何学部?」
「理学部だって。物理学科って言ってたよ。」
「えっ、物理学科?」
ユーは思わず聞き返しました。ユーが第2志望で考えていた所です。そして、オウくんは、ユーのことがうらやましいと言っていた友だちです。
(えっ、あのオウくんが、北京東北大学よりむずかしそうな第三北京大学に合格したの・・・!?)
ユーはそう思いましたが、ユーはくやしくて声に出すことはできませんでした。ユーのプラ
イドはずたずたになってしまいました。そんなことは知らないチョウくんはユーに聞きました。
「それで、ユーくんはどうするの?」
ユーはだまって、チョウくんからはなれました。
ユーはくやしくて、なさけなくて、まずまず元気がなくなりました。