閉じる
閉じる
📌
閉じる
📌
メイ
夢への一歩
現在の再生速度: 1.0倍
Coming soon!
飛行機の中がくらくなって、1時間ぐらいたちました。まわりの人はみんな寝ているようで、とてもしずかです。
メイは、なかなか寝られませんでした。そして、空港で最後に会ったときの、母と父と弟の事を思い出していました。母は泣きそうでした。そして私に言いました。
「メイ、体だけは気をつけて。しっかり食べて、しっかり寝て。それから、病気になったり、困ったことがあったりしたら、すぐに言いなさいね。」
母は心配そうに話を続けます。
「私はあなたが日本へ行くことがまだ信じられない。あなたは、小さい時からすごくおとなしい子だった。学校でもあまり話さないみたいで、ともだちもあまり多くないし……だいじょうぶなのか心配。あなたのようなしずかな子が一人で外国へ行くって、本当にだいじょうぶ……?」
父は、そう言う母の背中にやさしく手をおいて言いました。
「メイ、元気でいなさい。日本へ行くのだから、たくさん勉強してきなさい。日本の言葉も日本の文化もだ。日本で見るもの、聞くもの、ぜんぶがメイの勉強になるんだよ」
弟はとても明るく、わらいながら言いました。
「帰ってくるときに、日本のいちばん新しいゲームを買ってきて。あと面白いマンガをたくさん買って帰って来てね」
飛行機に乗るための入口へ行こうとするメイの背中に、
「いってらっしゃい。元気でね」
という、元気な弟の声が聞こえました。
母は、少し泣いていたみたいです。
「いつでも電話して。さびしくなったらすぐに帰ってくるんだよ」
と言って手をふりました。
メイも家族に手をふって歩き出しました。
もう一度家族の方を見ると弟も泣いていました。
「きっと、だいじょうぶ」
メイは自分に言いました。
メイはアメリカの高校に通っていました。子どもの時からしずかな子でした。ともだちもあまり多くなく、学校が終わると外であそんでいる学校の人たちのよこを一人で歩いて家に帰り、家でパソコンであそんでいました。クリスマスやハロウィーンが近くなっても、ともだちと出かけたりしないメイを父も母も心配していました。
でも、メイは一人でもさびしくありません。ネットにともだちがいたからです。それは、日本のアニメの集まりでした。アメリカには、ネット上で会話するための集まりがいくつもあります。そこには人がたくさんいます。アニメがすきな人たちが、すきなアニメの紹介やアニメを見て思ったことを話していました。アメリカ人だけでなく、世界のどこにいる人たちとも、ともだちになれます。メイはそこでみんなと話すことがだいすきで、いちばん楽しい時間でした。
ある日、メイはゆう子さんという日本人と話しました。ゆう子さんは日本の大学生です。ゆう子さんもアニメがすきでした。そしてメイの知らないアニメをたくさん知っていました。メイとゆうこさんはとても気があって、すぐにともだちになりました。ゆう子さんはメイがすきなアニメはぜんぶ見ているし、すきだと言いました。新しいアニメが放送されると、ゆう子さんはすぐに教えてくれました。
ゆう子さんは英語がとても上手でした。子どもの時、家族の仕事でアメリカに住んでいたそうです。メイはゆう子さんと話しているうちに、日本へ行きたい気持ちが強くなってきました。日本のアニメに出てくるいろいろな場所に行きたくなりました。
アニメがすきな人たちの話で、「聖地巡礼」という言葉をよく見るようになりました。アニメやマンガについての「聖地巡礼」というのは、その作品に出てくる場所や元になった場所へ行くことです。アニメがすきな人たちは、そのアニメに出てくる場所に行くことが夢でした。
メイが高校1年生の時に、
「日本へ行ってみたいって考えてて……」とゆう子さんに相談しました。
「夏休みかクリスマスの休みの時に遊びに来たらどう? 私が案内するよ。狭くてもいいなら私のアパートに泊まってもいいし」
とゆう子さんは言ってくれました。
メイは行きたいと思いました。しかしまだメイは16歳でした。メイが日本へ旅行することに、父も母も「いいよ」と言わないと思いました。
「日本へ行く方法はないのかな」
そして、高校2年の時、日本への留学を考えるようになりました。
「ちょっとあそびに来るのならいいの。でも、留学するという事なら、よく考えた方がいいよ」
メイはおどろきました。メイはゆう子さんはきっと「いいね!」と言ってくれると思っていました。でも、ゆう子さんの答えはきびしいものでした。
「よく考えた方がいいと思う。大学は4年もあるの。日本とアメリカじゃ、習慣もちがうし、生活も食べ物もちがう。メイはだいじょうぶなの?」
メイはそんなことは考えてもみませんでした。
「なにより言葉が全然ちがう。日本にも英語を話す人はいるけれど、メイがさびしい時とか、つらい時にだれかに相談したくなるでしょう。その時、メイの本当の心の中の事をいちばん言えるのはやっぱり英語じゃないの?」
ゆう子さんの言う通りでした。メイはパソコンの前で下を向いてしまいました。
「ごめんなさい。きびしいこと言って。」
ゆう子さんはそう言って、話を続けました。
「私は前にアメリカに住んでいて、日本へ来たのは14歳の時だった。私は父も母も日本人で、家では日本語を話していたから、会話はそれほど大変じゃなかった。でも、日本の習慣も学校もアメリカとは全然ちがうから、はじめはすごく大変だった」
メイは泣きそうになりました。ゆう子さんが本当にメイを心配してくれていることが分かったからです。
「ゆう子さん、教えてくれてありがとう。わかった。よく考えることにする」
そう答えて、メイはビデオ通話を切りました。
その夜、メイはなかなか寝られませんでした
「生活、習慣、言葉……だいじょうぶかな。私は日本で勉強できるんだろうか」
次の朝、起きた時にはメイは決めていました。
「日本へ行こう。日本で日本の文化を勉強しよう。すごくおもしろいアニメを作る国だもの。きっと私の知らない、いろいろな文化があるはず!」
メイは決めました。日本へ行こう。そして、ゆう子さんに言いました。
ゆう子さんは、
「メイがそう決めたんだったら、私はもう何も言わない」
と笑顔で言いました。そして、
「何でもてつだうから、言ってね。はじめに日本語の勉強か」
「留学生のともだちに聞いたら、このテキストがいいって言ってた」
ゆう子さんはそう言って、日本語のテキストをしらべて教えてくれました。
メイは、ネットで日本語のテキストを買って、YouTubeで日本語の勉強を始めました。
メイは英語の字幕つきですが、日本のアニメを見ていたので、日本語のリズムはわかりました。でも、アニメで話していると会話と日本語のテキストの会話がちがうので、メイは分からなくなってしまいました。ゆう子さんに質問すると、
「日本語は、ともだちとの会話などのカジュアル(casual)な言葉と、どこでも使えるフォーマル(formal)な言葉が大きくちがう。日本語のテキストは、どこでも使える日本語から教えるから、アニメのようなともだちと話す言葉は少しあとから出てくるの」
と教えてくれました。
「なるほど」
とは思いましたが、日本語はむずかしいとも思いました。
でも、メイは毎日日本語を勉強するようになりました。ゆう子さんとのビデオ通話もできるだけ日本語を話すようにしました。メイの日本語はどんどん上手になりました。そして、高校を卒業する時にはJLPTのN2に合格しました。メイは父と母に、
「私、日本へ留学したいの」
と言いました。
毎日毎日、そして休みの日もがんばって日本語を勉強しているメイを見ていた二人は、反対しませんでした。
日本文化を勉強できる大学はたくさんありましたが、メイは、現代日本文化学科のあるゆう子さんが通っている大学に決めました。留学試験を受け、そして、メイの留学が決まりました。大学入学が決まると、日本の大学が始まる4月までアルバイトをして、留学のためのお金をためました。
そして3月になりました。今、夢にまで見た日本へ飛行機は飛んでいます。
メイは、なかなか寝られませんでした。そして、空港で最後に会ったときの、母と父と弟の事を思い出していました。母は泣きそうでした。そして私に言いました。
「メイ、体だけは気をつけて。しっかり食べて、しっかり寝て。それから、病気になったり、困ったことがあったりしたら、すぐに言いなさいね。」
母は心配そうに話を続けます。
「私はあなたが日本へ行くことがまだ信じられない。あなたは、小さい時からすごくおとなしい子だった。学校でもあまり話さないみたいで、ともだちもあまり多くないし……だいじょうぶなのか心配。あなたのようなしずかな子が一人で外国へ行くって、本当にだいじょうぶ……?」
父は、そう言う母の背中にやさしく手をおいて言いました。
「メイ、元気でいなさい。日本へ行くのだから、たくさん勉強してきなさい。日本の言葉も日本の文化もだ。日本で見るもの、聞くもの、ぜんぶがメイの勉強になるんだよ」
弟はとても明るく、わらいながら言いました。
「帰ってくるときに、日本のいちばん新しいゲームを買ってきて。あと面白いマンガをたくさん買って帰って来てね」
飛行機に乗るための入口へ行こうとするメイの背中に、
「いってらっしゃい。元気でね」
という、元気な弟の声が聞こえました。
母は、少し泣いていたみたいです。
「いつでも電話して。さびしくなったらすぐに帰ってくるんだよ」
と言って手をふりました。
メイも家族に手をふって歩き出しました。
もう一度家族の方を見ると弟も泣いていました。
「きっと、だいじょうぶ」
メイは自分に言いました。
メイはアメリカの高校に通っていました。子どもの時からしずかな子でした。ともだちもあまり多くなく、学校が終わると外であそんでいる学校の人たちのよこを一人で歩いて家に帰り、家でパソコンであそんでいました。クリスマスやハロウィーンが近くなっても、ともだちと出かけたりしないメイを父も母も心配していました。
でも、メイは一人でもさびしくありません。ネットにともだちがいたからです。それは、日本のアニメの集まりでした。アメリカには、ネット上で会話するための集まりがいくつもあります。そこには人がたくさんいます。アニメがすきな人たちが、すきなアニメの紹介やアニメを見て思ったことを話していました。アメリカ人だけでなく、世界のどこにいる人たちとも、ともだちになれます。メイはそこでみんなと話すことがだいすきで、いちばん楽しい時間でした。
ある日、メイはゆう子さんという日本人と話しました。ゆう子さんは日本の大学生です。ゆう子さんもアニメがすきでした。そしてメイの知らないアニメをたくさん知っていました。メイとゆうこさんはとても気があって、すぐにともだちになりました。ゆう子さんはメイがすきなアニメはぜんぶ見ているし、すきだと言いました。新しいアニメが放送されると、ゆう子さんはすぐに教えてくれました。
ゆう子さんは英語がとても上手でした。子どもの時、家族の仕事でアメリカに住んでいたそうです。メイはゆう子さんと話しているうちに、日本へ行きたい気持ちが強くなってきました。日本のアニメに出てくるいろいろな場所に行きたくなりました。
アニメがすきな人たちの話で、「聖地巡礼」という言葉をよく見るようになりました。アニメやマンガについての「聖地巡礼」というのは、その作品に出てくる場所や元になった場所へ行くことです。アニメがすきな人たちは、そのアニメに出てくる場所に行くことが夢でした。
メイが高校1年生の時に、
「日本へ行ってみたいって考えてて……」とゆう子さんに相談しました。
「夏休みかクリスマスの休みの時に遊びに来たらどう? 私が案内するよ。狭くてもいいなら私のアパートに泊まってもいいし」
とゆう子さんは言ってくれました。
メイは行きたいと思いました。しかしまだメイは16歳でした。メイが日本へ旅行することに、父も母も「いいよ」と言わないと思いました。
「日本へ行く方法はないのかな」
そして、高校2年の時、日本への留学を考えるようになりました。
「ちょっとあそびに来るのならいいの。でも、留学するという事なら、よく考えた方がいいよ」
メイはおどろきました。メイはゆう子さんはきっと「いいね!」と言ってくれると思っていました。でも、ゆう子さんの答えはきびしいものでした。
「よく考えた方がいいと思う。大学は4年もあるの。日本とアメリカじゃ、習慣もちがうし、生活も食べ物もちがう。メイはだいじょうぶなの?」
メイはそんなことは考えてもみませんでした。
「なにより言葉が全然ちがう。日本にも英語を話す人はいるけれど、メイがさびしい時とか、つらい時にだれかに相談したくなるでしょう。その時、メイの本当の心の中の事をいちばん言えるのはやっぱり英語じゃないの?」
ゆう子さんの言う通りでした。メイはパソコンの前で下を向いてしまいました。
「ごめんなさい。きびしいこと言って。」
ゆう子さんはそう言って、話を続けました。
「私は前にアメリカに住んでいて、日本へ来たのは14歳の時だった。私は父も母も日本人で、家では日本語を話していたから、会話はそれほど大変じゃなかった。でも、日本の習慣も学校もアメリカとは全然ちがうから、はじめはすごく大変だった」
メイは泣きそうになりました。ゆう子さんが本当にメイを心配してくれていることが分かったからです。
「ゆう子さん、教えてくれてありがとう。わかった。よく考えることにする」
そう答えて、メイはビデオ通話を切りました。
その夜、メイはなかなか寝られませんでした
「生活、習慣、言葉……だいじょうぶかな。私は日本で勉強できるんだろうか」
次の朝、起きた時にはメイは決めていました。
「日本へ行こう。日本で日本の文化を勉強しよう。すごくおもしろいアニメを作る国だもの。きっと私の知らない、いろいろな文化があるはず!」
メイは決めました。日本へ行こう。そして、ゆう子さんに言いました。
ゆう子さんは、
「メイがそう決めたんだったら、私はもう何も言わない」
と笑顔で言いました。そして、
「何でもてつだうから、言ってね。はじめに日本語の勉強か」
「留学生のともだちに聞いたら、このテキストがいいって言ってた」
ゆう子さんはそう言って、日本語のテキストをしらべて教えてくれました。
メイは、ネットで日本語のテキストを買って、YouTubeで日本語の勉強を始めました。
メイは英語の字幕つきですが、日本のアニメを見ていたので、日本語のリズムはわかりました。でも、アニメで話していると会話と日本語のテキストの会話がちがうので、メイは分からなくなってしまいました。ゆう子さんに質問すると、
「日本語は、ともだちとの会話などのカジュアル(casual)な言葉と、どこでも使えるフォーマル(formal)な言葉が大きくちがう。日本語のテキストは、どこでも使える日本語から教えるから、アニメのようなともだちと話す言葉は少しあとから出てくるの」
と教えてくれました。
「なるほど」
とは思いましたが、日本語はむずかしいとも思いました。
でも、メイは毎日日本語を勉強するようになりました。ゆう子さんとのビデオ通話もできるだけ日本語を話すようにしました。メイの日本語はどんどん上手になりました。そして、高校を卒業する時にはJLPTのN2に合格しました。メイは父と母に、
「私、日本へ留学したいの」
と言いました。
毎日毎日、そして休みの日もがんばって日本語を勉強しているメイを見ていた二人は、反対しませんでした。
日本文化を勉強できる大学はたくさんありましたが、メイは、現代日本文化学科のあるゆう子さんが通っている大学に決めました。留学試験を受け、そして、メイの留学が決まりました。大学入学が決まると、日本の大学が始まる4月までアルバイトをして、留学のためのお金をためました。
そして3月になりました。今、夢にまで見た日本へ飛行機は飛んでいます。
飛行機の中が暗くなって、1時間ぐらいたちました。周りの乗客はみんな寝ているようでとても静かです。
メイは、なかなか寝られませんでした。そして、空港へ見送りに来てくれた両親と弟の事を思い出していました。母は泣きそうな顔で私に言いました。
「メイ、体だけは気をつけるんだよ。ちゃんと食べて、ちゃんと寝るんだよ。それから、病気になったり、困ったことがあったりしたら、すぐにメールしなさいね。」
続けて、母は心配そうに言いました。
「どうして、あなたみたいな子が日本へ留学なんて…。あなたは、小さい時からすごくおとなしい子で、クラスメートともあまり話さないし、友だちもあまり多くないし…。大丈夫なのかねえ。あなたみたいな子が、一人で海外へ留学なんて…。」
父は、そう言う母の背中をやさしく抱いて
「とにかく元気で暮らしなさい。せっかく日本へ留学するのだから、たくさん勉強してきなさい。日本語も日本の文化も…。日本で見るもの、聞くもの、全部がメイの勉強になるんだからね。」
弟はとても明るく、笑いながら言いました。
「お土産は日本の一番新しいゲームが良いなあ。あとマンガの面白いのをたくさんね。」
イミグレーションに行こうとするメイの背中に、
「行ってらっしゃい。元気でね。」
という、元気な弟の声が聞こえました。
振り返ると母は、少し泣いていたみたいです。
「いつでも連絡ちょうだいね。寂しくなったらすぐに帰ってくるんだよ。」
と言って手を振りました。
メイも家族に手を振りながら、イミグレーションに向かいました。
出国ゲートから、もう一度家族を振り返ると弟の顔も涙でぐしゃぐしゃになっていました。
「きっと大丈夫。」
メイは自分に言い聞かせるように言いました。
メイはアメリカの高校に通っていました。子供の時からおとなしい子どもであまり大きい声も出さない、静かな子でした。友だちもあまり多くなく、学校が終わるとグラウンドで遊んでいるクラスメートの横を一人で歩いてうちに帰り、インターネットサイトを見て過ごしていました。クリスマスやハロウィーンが近くなっても、友だちと出かけたりしないメイを両親は心配していました。
でも、メイは一人でも全然さびしくありませんでした。インターネットのオンラインコミュニティに参加していたからです。それは、日本のアニメのコミュニティでした。アメリカには、オンラインのコミュニティやフォーラムがたくさんあって、多くのアニメファンがお互いに作品の紹介や感想を共有していました。アメリカ人だけでなく、世界中のアニメファンと友だちになれるコミュニティにアクセスすることは、メイにとって一番楽しい時間でした。
ある時、そのコミュニティにゆう子さんという日本人が入ってきました。ゆう子さんは日本の大学生のアニメファンで、メイの知らないアニメをたくさん知っていました。メイとゆう子さんはとても気が合って、すぐに仲良くなりました。ゆう子さんはメイが好きなアニメは全部見ていて、ゆう子さんも好きだと言ってくれたんです。新しいアニメが公開されると、ゆう子さんはすぐに情報を送ってくれました。
ゆう子さんは子供の時、両親の仕事の関係でアメリカに住んでいたことがあったそうで、英語がとても上手でした。ビデオ通話でゆう子さんと話しているうちに、メイは日本へ行きたい気持ちが強くなってきました。日本のアニメに出てくるいろいろな場所に行ってみたくなったんです。アニメファンのコミュニティでは、「聖地巡礼」という言葉をよく見るようになりました。「聖地巡礼」というのは、アニメやマンガに登場する場所に実際に行ってみることです。ファンにとって自分の好きな作品の舞台に行くことは夢でした。
メイが高校1年生の時に、
「日本へ行ってみたいんだけど…。」ゆう子さんに相談すると、
「夏休みかクリスマスの休みの時に遊びに来たらどう?私が案内するよ。狭いけど私のアパートに泊まってもいいし…。」
と言ってくれました。
メイは行きたいなあと思いましたが、まだメイは16歳です。日本へ旅行するなんて両親が許してくれるはずがありません。
「何とかして日本へ行けないかなあ。」
そして、高校2年の時、日本への留学を考えるようになりました。
そして、ゆう子さんに相談しました。ゆう子さんは言いました。
「ちょっと遊びに来るのならいいの。でも、留学するという事なら、よく考えた方がいいよ。」
メイは意外でした。メイはゆう子さんはきっと賛成してくれると思っていたんです。でも、ゆう子さんの答えはとても厳しかったです。
「よく考えた方がいいよ。大学は4年もあるのよ。日本とアメリカじゃ、習慣も違うし、生活も食べ物も違うのよ。メイは大丈夫なの?」
メイはそんなことは考えてもみませんでした。
「なにより言葉が全然違うわ。日本にも英語を話す人はいるけど、メイがさみしい時とか、つらい時に誰かに相談したくなるでしょう。その時、メイの本当の心の中の事を一番表せるのはやっぱり英語じゃないの?」
ゆう子さんの言う通りでした。メイはパソコンの前で下を向いてしまいました。
「ごめんなさい。きついこと言って。」
ゆう子さんはそう言って、話を続けました。
「私は両親がアメリカで仕事をしていたでしょう。日本へ来たのは中学2年生の時だった。私は両親が日本人で家では日本語を話していたから、会話にはそれほど苦労しなかった。それでも、日本の習慣も学校もアメリカとは全然違うから、最初は本当に大変だった。」
メイは涙が出てきました。ゆう子さんが本当にメイを心配してくれていることが分かったからです。
「ゆう子さん、アドバイスありがとう。わかった。よく考えてみる。」
そう答えて、メイはビデオ通話を切りました。
その晩、メイはなかなか寝られませんでした
「生活、習慣、言葉…。大丈夫だろうか、私は日本で勉強できるんだろうか。」
翌日の朝、目覚めた時にはメイは決めていました。
「日本へ行こう。日本で日本の文化を勉強しよう。あんなに面白いアニメを作る国だもの。きっと私の知らないいろいろな文化があるはずだわ。」
メイは決めました。日本へ行こう。そして、ゆう子さんに連絡しました。
ゆう子さんは、
「メイがそう決めたんだったら、私はもう何も言わない。」
と笑顔で言いました。そして、
「何でも協力するから、言ってね。まずは日本語の勉強か。」
「留学生の友達に聞いたんだけど、こんなのが良いみたいだよ。」
そう言って、日本語のテキストを調べて、紹介してくれました。
メイは、インターネットで日本語のテキストを注文して、YouTubeの日本語学習サイトで日本語の勉強を始めました。
メイは英語の字幕付きですが、日本のアニメを見ていたので、日本語のリズムはわかりました。でも、アニメで話している言葉と日本語のテキストの会話が違うので、メイは混乱しました。ゆう子さんに質問すると、
「日本語は、友だちとの会話などのカジュアルな言葉とフォーマルな言葉との違いが大きいの。日本語のテキストは、フォーマルな日本語から教えるから、アニメみたいにカジュアルな言葉は少し後から出てくるの。」
と教えてくれました。
「なるほど。」
とは思いましたが、日本語は難しいなあと思いました。
でも、メイは毎日日本語を勉強するようになりました。ゆう子さんとのビデオ通話もできるだけ日本語を話すようにしました。メイの日本語はどんどん上達しました。そして、高校を卒業する時にはJLPTのN2に合格しました。メイは両親に、
「私、日本へ留学したいの。」
と言いました。
毎日毎日、そして週末も頑張って日本語を勉強しているメイを見ていた両親は、反対しませんでした。
日本文化を勉強できる大学はたくさんありましたが、メイは、現代日本文化学科のあるゆう子さんが通っている大学に決めました。留学試験を受け、そして、メイの留学が決まりました。大学入学が決まると、日本の大学が始まる4月までアルバイトをして、留学のためのお金を貯めました。
そして3月になりました。今、夢にまで見た日本に向けて、飛行機は飛んでいます。
メイは、なかなか寝られませんでした。そして、空港へ見送りに来てくれた両親と弟の事を思い出していました。母は泣きそうな顔で私に言いました。
「メイ、体だけは気をつけるんだよ。ちゃんと食べて、ちゃんと寝るんだよ。それから、病気になったり、困ったことがあったりしたら、すぐにメールしなさいね。」
続けて、母は心配そうに言いました。
「どうして、あなたみたいな子が日本へ留学なんて…。あなたは、小さい時からすごくおとなしい子で、クラスメートともあまり話さないし、友だちもあまり多くないし…。大丈夫なのかねえ。あなたみたいな子が、一人で海外へ留学なんて…。」
父は、そう言う母の背中をやさしく抱いて
「とにかく元気で暮らしなさい。せっかく日本へ留学するのだから、たくさん勉強してきなさい。日本語も日本の文化も…。日本で見るもの、聞くもの、全部がメイの勉強になるんだからね。」
弟はとても明るく、笑いながら言いました。
「お土産は日本の一番新しいゲームが良いなあ。あとマンガの面白いのをたくさんね。」
イミグレーションに行こうとするメイの背中に、
「行ってらっしゃい。元気でね。」
という、元気な弟の声が聞こえました。
振り返ると母は、少し泣いていたみたいです。
「いつでも連絡ちょうだいね。寂しくなったらすぐに帰ってくるんだよ。」
と言って手を振りました。
メイも家族に手を振りながら、イミグレーションに向かいました。
出国ゲートから、もう一度家族を振り返ると弟の顔も涙でぐしゃぐしゃになっていました。
「きっと大丈夫。」
メイは自分に言い聞かせるように言いました。
メイはアメリカの高校に通っていました。子供の時からおとなしい子どもであまり大きい声も出さない、静かな子でした。友だちもあまり多くなく、学校が終わるとグラウンドで遊んでいるクラスメートの横を一人で歩いてうちに帰り、インターネットサイトを見て過ごしていました。クリスマスやハロウィーンが近くなっても、友だちと出かけたりしないメイを両親は心配していました。
でも、メイは一人でも全然さびしくありませんでした。インターネットのオンラインコミュニティに参加していたからです。それは、日本のアニメのコミュニティでした。アメリカには、オンラインのコミュニティやフォーラムがたくさんあって、多くのアニメファンがお互いに作品の紹介や感想を共有していました。アメリカ人だけでなく、世界中のアニメファンと友だちになれるコミュニティにアクセスすることは、メイにとって一番楽しい時間でした。
ある時、そのコミュニティにゆう子さんという日本人が入ってきました。ゆう子さんは日本の大学生のアニメファンで、メイの知らないアニメをたくさん知っていました。メイとゆう子さんはとても気が合って、すぐに仲良くなりました。ゆう子さんはメイが好きなアニメは全部見ていて、ゆう子さんも好きだと言ってくれたんです。新しいアニメが公開されると、ゆう子さんはすぐに情報を送ってくれました。
ゆう子さんは子供の時、両親の仕事の関係でアメリカに住んでいたことがあったそうで、英語がとても上手でした。ビデオ通話でゆう子さんと話しているうちに、メイは日本へ行きたい気持ちが強くなってきました。日本のアニメに出てくるいろいろな場所に行ってみたくなったんです。アニメファンのコミュニティでは、「聖地巡礼」という言葉をよく見るようになりました。「聖地巡礼」というのは、アニメやマンガに登場する場所に実際に行ってみることです。ファンにとって自分の好きな作品の舞台に行くことは夢でした。
メイが高校1年生の時に、
「日本へ行ってみたいんだけど…。」ゆう子さんに相談すると、
「夏休みかクリスマスの休みの時に遊びに来たらどう?私が案内するよ。狭いけど私のアパートに泊まってもいいし…。」
と言ってくれました。
メイは行きたいなあと思いましたが、まだメイは16歳です。日本へ旅行するなんて両親が許してくれるはずがありません。
「何とかして日本へ行けないかなあ。」
そして、高校2年の時、日本への留学を考えるようになりました。
そして、ゆう子さんに相談しました。ゆう子さんは言いました。
「ちょっと遊びに来るのならいいの。でも、留学するという事なら、よく考えた方がいいよ。」
メイは意外でした。メイはゆう子さんはきっと賛成してくれると思っていたんです。でも、ゆう子さんの答えはとても厳しかったです。
「よく考えた方がいいよ。大学は4年もあるのよ。日本とアメリカじゃ、習慣も違うし、生活も食べ物も違うのよ。メイは大丈夫なの?」
メイはそんなことは考えてもみませんでした。
「なにより言葉が全然違うわ。日本にも英語を話す人はいるけど、メイがさみしい時とか、つらい時に誰かに相談したくなるでしょう。その時、メイの本当の心の中の事を一番表せるのはやっぱり英語じゃないの?」
ゆう子さんの言う通りでした。メイはパソコンの前で下を向いてしまいました。
「ごめんなさい。きついこと言って。」
ゆう子さんはそう言って、話を続けました。
「私は両親がアメリカで仕事をしていたでしょう。日本へ来たのは中学2年生の時だった。私は両親が日本人で家では日本語を話していたから、会話にはそれほど苦労しなかった。それでも、日本の習慣も学校もアメリカとは全然違うから、最初は本当に大変だった。」
メイは涙が出てきました。ゆう子さんが本当にメイを心配してくれていることが分かったからです。
「ゆう子さん、アドバイスありがとう。わかった。よく考えてみる。」
そう答えて、メイはビデオ通話を切りました。
その晩、メイはなかなか寝られませんでした
「生活、習慣、言葉…。大丈夫だろうか、私は日本で勉強できるんだろうか。」
翌日の朝、目覚めた時にはメイは決めていました。
「日本へ行こう。日本で日本の文化を勉強しよう。あんなに面白いアニメを作る国だもの。きっと私の知らないいろいろな文化があるはずだわ。」
メイは決めました。日本へ行こう。そして、ゆう子さんに連絡しました。
ゆう子さんは、
「メイがそう決めたんだったら、私はもう何も言わない。」
と笑顔で言いました。そして、
「何でも協力するから、言ってね。まずは日本語の勉強か。」
「留学生の友達に聞いたんだけど、こんなのが良いみたいだよ。」
そう言って、日本語のテキストを調べて、紹介してくれました。
メイは、インターネットで日本語のテキストを注文して、YouTubeの日本語学習サイトで日本語の勉強を始めました。
メイは英語の字幕付きですが、日本のアニメを見ていたので、日本語のリズムはわかりました。でも、アニメで話している言葉と日本語のテキストの会話が違うので、メイは混乱しました。ゆう子さんに質問すると、
「日本語は、友だちとの会話などのカジュアルな言葉とフォーマルな言葉との違いが大きいの。日本語のテキストは、フォーマルな日本語から教えるから、アニメみたいにカジュアルな言葉は少し後から出てくるの。」
と教えてくれました。
「なるほど。」
とは思いましたが、日本語は難しいなあと思いました。
でも、メイは毎日日本語を勉強するようになりました。ゆう子さんとのビデオ通話もできるだけ日本語を話すようにしました。メイの日本語はどんどん上達しました。そして、高校を卒業する時にはJLPTのN2に合格しました。メイは両親に、
「私、日本へ留学したいの。」
と言いました。
毎日毎日、そして週末も頑張って日本語を勉強しているメイを見ていた両親は、反対しませんでした。
日本文化を勉強できる大学はたくさんありましたが、メイは、現代日本文化学科のあるゆう子さんが通っている大学に決めました。留学試験を受け、そして、メイの留学が決まりました。大学入学が決まると、日本の大学が始まる4月までアルバイトをして、留学のためのお金を貯めました。
そして3月になりました。今、夢にまで見た日本に向けて、飛行機は飛んでいます。