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『心の旅』続編:愛のタペストリー
12月3日
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Coming soon!
ヒロシは子どものころから自分の誕生日が好きだった。家族と集まったり、いっしょにおいしいものを食べたりするのが楽しいと思った。そして、誕生日のケーキが一番だ。甘いものに目がなくて、いつもプレゼントよりケーキのほうが楽しみだ。でも、今年の誕生日をあまり楽しみにしていなかった。いわう気がなかったから。最近、しっぱいばかりというような気がした。入試の不合格だ。それに、彼女のベレンとのかんけいがむずかしくなった。えんきょり恋愛って思ったよりむずかしかった。ベレンがそばにいないから、だんだんだんだんむねの中にさびしい気持ちが広がっていった。それで、誕生日をいわう気分ではなかった。
でも、幼なじみ(子どものころからの友だち)のアカリにカラオケに連れていかれた。部屋の中にふうせんがいっぱいで、ヒロシの友だちが待っていた。ヒロシが入った時、「サプライズ!」とか「お誕生日おめでとう!」とみんなのこえが聞こえるようになった。サプライズパーティーをするのはアカリらしいけど、本当にびっくりした。
友だちとしゃべったり、一緒に歌を歌ったりするのが、自分の問題を忘れるぐらい楽しかった。数時間があっという間にすぎた。アカリはよくスマホを出して、何かをチェックしたみたいだ。たぶん時間を見たのかも。そろそろかいさんかなとヒロシは思った。このパーティーではケーキがなかったけど、友だちと一緒にいて、やっとリラックスできたという感じがした。ベレンもここにいたらいいけど。
「じゃあ、最後のサプライズの時間だ!外を出よう!」とアカリは元気なこえで言った。
みんなは外に出かけた。天気は少しさむくなってきたけど、まだ冬の雰囲気はなかった。夜空にはほしと月がキラキラとかがやいていた。最後にあらわれたアカリは大きい誕生日ケーキを持ってきた。ケーキにもえているろうそくが立った。ヒロシは心の中であたたかさを感じた。
「誕生日のねがいごとをして」とアカリは笑った。
ヒロシは目をとじて、ろうそくをふき消した。すると、後ろから知っているこえがした。
「どんなねがいごとをしたの?」
ヒロシはおどろいて、ゆっくり後ろを見た。ベレンがいた。本物のベレンだ。信じられない。
「お誕生日おめで…」ベレンは文を終えることができなかった。
ヒロシは急にベレンに近づいて、強くだきしめた。
「ずっと会いたかった」とヒロシはベレンにだけ聞こえるようにささやいた。
「私も」
二人はしばらくだきしめたまま、動かなかった。
二人きりになったベレンとヒロシはカラオケの前に座っていた。
「ごめん」とヒロシは言った。
「…?」
「最近しっぱいばかりだ。このえんきょり恋愛もうまくいかなかった」
「そんなことないよ」
「だって、思ったよりむずかしい。いや、むずかしいっていうより、つらい」
「たしかにね」とベレンはうなずいた。
「時間が長ければ長いほど、距離感(きょりかん)もふかく感じるようになる」
「つきあっているけど、本当のおつきあいじゃないみたい」
「だよね」
「そして、共通のもくひょうがなくて」
「共通のもくひょうはないのか?」とヒロシは少しおどろいた顔をした。
ベレンは少しだまってから、そう言った。
「私は大学を卒業するひつようがある。それが私のもくひょうだ。きみは進学したいでしょ?それがきみのもくひょうだ。一緒にいるために、私は卒業してから日本にもどるはずだ。でも、それは共通のもくひょうになれないでしょ。そして、もどれるかどうかわからないし、日本で何をするのかもわからない。とにかく、私たちはしょうらいの計画がないでしょ」
別れたくないけど、別れたほうがいいかもとベレンはさびしく考えた。
「待って、待って。共通のもくひょうがあるじゃないか」
ベレンはわからない顔をした。
「なに?」
「一緒にいること」
ベレンは彼に顔を向けた。ヒロシも別れたくないのか。
「しかも、進学はもう問題ではない。不合格だから」
「でも、もう一回入試してみてもいいよ」
「いいけど、するつもりはない」
ベレンの目がまるくなった。
「なんで?」
「なんでって。ほかのしょうらいの計画を立てたいから。ベレンと一緒にね」
ベレンの心がドキドキした。
「そして、卒業してから、スペイン語の勉強をつづけようと思っている」
ベレンはそれを聞いて、思わずほほえみはじめた。
「それをするために一番いいところはスペイン語が話されている国だろ」とヒロシはつづけた。
「たとえば、アルゼンチン?」とベレンは笑った。
「たしかに!アルゼンチンはピッタリ!」
ベレンとヒロシは見つめあいながら、笑った。
4か月ぐらいはなればなれだった彼らにとって、とてもよろこばしいしゅんかんだった。そして、何よりもまたはなれることをおそれた。
「今日も月がきれいですね」とヒロシは小さなこえで言った。
ベレンは月を見ずに、答えた。
「死んでもいいよ」
でも、幼なじみ(子どものころからの友だち)のアカリにカラオケに連れていかれた。部屋の中にふうせんがいっぱいで、ヒロシの友だちが待っていた。ヒロシが入った時、「サプライズ!」とか「お誕生日おめでとう!」とみんなのこえが聞こえるようになった。サプライズパーティーをするのはアカリらしいけど、本当にびっくりした。
友だちとしゃべったり、一緒に歌を歌ったりするのが、自分の問題を忘れるぐらい楽しかった。数時間があっという間にすぎた。アカリはよくスマホを出して、何かをチェックしたみたいだ。たぶん時間を見たのかも。そろそろかいさんかなとヒロシは思った。このパーティーではケーキがなかったけど、友だちと一緒にいて、やっとリラックスできたという感じがした。ベレンもここにいたらいいけど。
「じゃあ、最後のサプライズの時間だ!外を出よう!」とアカリは元気なこえで言った。
みんなは外に出かけた。天気は少しさむくなってきたけど、まだ冬の雰囲気はなかった。夜空にはほしと月がキラキラとかがやいていた。最後にあらわれたアカリは大きい誕生日ケーキを持ってきた。ケーキにもえているろうそくが立った。ヒロシは心の中であたたかさを感じた。
「誕生日のねがいごとをして」とアカリは笑った。
ヒロシは目をとじて、ろうそくをふき消した。すると、後ろから知っているこえがした。
「どんなねがいごとをしたの?」
ヒロシはおどろいて、ゆっくり後ろを見た。ベレンがいた。本物のベレンだ。信じられない。
「お誕生日おめで…」ベレンは文を終えることができなかった。
ヒロシは急にベレンに近づいて、強くだきしめた。
「ずっと会いたかった」とヒロシはベレンにだけ聞こえるようにささやいた。
「私も」
二人はしばらくだきしめたまま、動かなかった。
二人きりになったベレンとヒロシはカラオケの前に座っていた。
「ごめん」とヒロシは言った。
「…?」
「最近しっぱいばかりだ。このえんきょり恋愛もうまくいかなかった」
「そんなことないよ」
「だって、思ったよりむずかしい。いや、むずかしいっていうより、つらい」
「たしかにね」とベレンはうなずいた。
「時間が長ければ長いほど、距離感(きょりかん)もふかく感じるようになる」
「つきあっているけど、本当のおつきあいじゃないみたい」
「だよね」
「そして、共通のもくひょうがなくて」
「共通のもくひょうはないのか?」とヒロシは少しおどろいた顔をした。
ベレンは少しだまってから、そう言った。
「私は大学を卒業するひつようがある。それが私のもくひょうだ。きみは進学したいでしょ?それがきみのもくひょうだ。一緒にいるために、私は卒業してから日本にもどるはずだ。でも、それは共通のもくひょうになれないでしょ。そして、もどれるかどうかわからないし、日本で何をするのかもわからない。とにかく、私たちはしょうらいの計画がないでしょ」
別れたくないけど、別れたほうがいいかもとベレンはさびしく考えた。
「待って、待って。共通のもくひょうがあるじゃないか」
ベレンはわからない顔をした。
「なに?」
「一緒にいること」
ベレンは彼に顔を向けた。ヒロシも別れたくないのか。
「しかも、進学はもう問題ではない。不合格だから」
「でも、もう一回入試してみてもいいよ」
「いいけど、するつもりはない」
ベレンの目がまるくなった。
「なんで?」
「なんでって。ほかのしょうらいの計画を立てたいから。ベレンと一緒にね」
ベレンの心がドキドキした。
「そして、卒業してから、スペイン語の勉強をつづけようと思っている」
ベレンはそれを聞いて、思わずほほえみはじめた。
「それをするために一番いいところはスペイン語が話されている国だろ」とヒロシはつづけた。
「たとえば、アルゼンチン?」とベレンは笑った。
「たしかに!アルゼンチンはピッタリ!」
ベレンとヒロシは見つめあいながら、笑った。
4か月ぐらいはなればなれだった彼らにとって、とてもよろこばしいしゅんかんだった。そして、何よりもまたはなれることをおそれた。
「今日も月がきれいですね」とヒロシは小さなこえで言った。
ベレンは月を見ずに、答えた。
「死んでもいいよ」
ヒロシは子どもの頃から自分の誕生日が好きだった。家族と集まったり、一緒においしいものを食べたりするのが楽しいと思った。そして、誕生日のケーキが一番だ。甘いものに目がなくて、いつもプレゼントよりケーキのほうが楽しみだ。でも、今年の誕生日をあまり期待していなかった。祝う気がなかったから。最近、失敗ばかりというような気がした。入試の不合格だ。それに、彼女のベレンとの関係が複雑になった。遠距離恋愛って思ったより難しかった。ベレンがそばにいないから、段々段々胸の中に虚しい気持ちが広がっていった。なので、誕生日を祝う気分ではなかった。
でも、幼馴染のアカリにカラオケに連れていかれた。部屋の中に風船がいっぱいで、ヒロシの友だちが待っていた。ヒロシが入った時、「サプライズ!」とか「お誕生日おめでとう!」とみんなの叫び声が聞こえるようになった。サプライズパーティーをするのはアカリらしいけど、本当にびっくりした。
友だちと喋ったり、一緒に歌を歌ったりするのが、自分の悩みを忘れるぐらい意外と楽しかった。あっという間に数時間が経った。アカリはよくスマホを取り出して、何かをチェックしたみたいだ。たぶん時間を確かめたのかも。そろそろ解散かなとヒロシは思った。このパーティーではケーキがなかったけど、友だちと一緒にいて、やっとホットできたという感じがした。ベレンもここにいたらいいけど。
「じゃあ、最後のサプライズの時間だ!外を出よう!」とアカリは元気な声で言った。
みんなは外に出かけた。天気は少し寒くなってきたけど、まだ冬の雰囲気はなかった。夜空には星と月がキラキラと輝いていた。最後に現れたアカリは大きい誕生日ケーキを持ってきた。ケーキに燃えているろうそくが立った。ヒロシは心の中で暖かさを感じた。
「誕生日の願いごとをして」とアカリは微笑んだ。
ヒロシは目を閉じて、ろうそくを吹き消した。すると、後ろから聞き覚えのある声がした。
「どんな願いごとをしたの?」
ヒロシは耳を疑って、ゆっくり振り向いた。ベレンがいた。本物のベレンだ。信じられない。
「お誕生日おめで…」ベレンは文章を終えることができなかった。
ヒロシは急にベレンに近づいて、ギュッと抱きしめた。
「ずっと会いたかった」とヒロシはベレンにだけ聞こえるように囁いた。
「私も」
二人はしばらく抱きしめたまま、動かなかった。
二人きりになったベレンとヒロシはカラオケ館の前のベンチに座っていた。
「ごめん」とヒロシは言った。
「…?」
「最近失敗ばかりだ。この遠距離恋愛もうまくいかなかった」
「そんなことないよ」
「だって、思ったより難しい。いや、難しいっていうより、つらい」
「確かにね」とベレンは頷いた。
「時間が長ければ長いほど、距離感も深く感じるようになる」
「付き合っているけど、想像的なお付き合いみたい」
「だよね」
「そして、共通の目標がなくて」
「共通の目標はないのか?」とヒロシは少し驚いた顔をした。
ベレンは少し黙ってから、そう言った。
「私は大学を卒業する必要がある。それが私の目標だ。君は進学したいでしょ?それが君の目標だ。一緒にいるために、私は卒業してから日本に戻るはずだ。でも、それは共通の目標になれないでしょ。しかも、戻れるかどうかわからないし、日本で何をするのかもわからない。とにかく、私達は将来の計画がないでしょ」
別れたくないけど、別れたほうがいいかもとベレンは寂しく考えた。
「待って、待って。共通の目標があるじゃないか」
ベレンはわからない顔をした。
「どんな目標?」
「一緒にいること」
ベレンは彼に顔を向けた。マジでヒロシも別れたくないのか。
「しかも、進学はもう問題ではない。不合格だから」
「でも、もう一回入試してみてもいいよ」
「いいけど、するつもりはない」
ベレンの目が丸くなった。
「なんで?」
「なんでって。他の将来の計画を立てたいから。ベレンと一緒にね」
ベレンの心がドキドキした。
「そして、卒業してから、スペイン語の勉強に集中しようと思っている」
ベレンはそれを聞いて、思わず微笑み始めた。
「それをするために一番いいところはスペイン語が話されている国だろ」とヒロシは続けた。
「例えば、アルゼンチン?」とベレンは笑った。
「確かに!アルゼンチンはピッタリ!」
ベレンとヒロシは見つめ合いながら、笑った。
4か月ぐらい離れ離れだった彼らにとって、とても喜ばしい瞬間だった。そして、何よりもまた離れることを恐れた。
「今日も月が綺麗ですね」とヒロシは小さな声で言った。
ベレンは月を見ずに、答えた。
「死んでもいいよ」
でも、幼馴染のアカリにカラオケに連れていかれた。部屋の中に風船がいっぱいで、ヒロシの友だちが待っていた。ヒロシが入った時、「サプライズ!」とか「お誕生日おめでとう!」とみんなの叫び声が聞こえるようになった。サプライズパーティーをするのはアカリらしいけど、本当にびっくりした。
友だちと喋ったり、一緒に歌を歌ったりするのが、自分の悩みを忘れるぐらい意外と楽しかった。あっという間に数時間が経った。アカリはよくスマホを取り出して、何かをチェックしたみたいだ。たぶん時間を確かめたのかも。そろそろ解散かなとヒロシは思った。このパーティーではケーキがなかったけど、友だちと一緒にいて、やっとホットできたという感じがした。ベレンもここにいたらいいけど。
「じゃあ、最後のサプライズの時間だ!外を出よう!」とアカリは元気な声で言った。
みんなは外に出かけた。天気は少し寒くなってきたけど、まだ冬の雰囲気はなかった。夜空には星と月がキラキラと輝いていた。最後に現れたアカリは大きい誕生日ケーキを持ってきた。ケーキに燃えているろうそくが立った。ヒロシは心の中で暖かさを感じた。
「誕生日の願いごとをして」とアカリは微笑んだ。
ヒロシは目を閉じて、ろうそくを吹き消した。すると、後ろから聞き覚えのある声がした。
「どんな願いごとをしたの?」
ヒロシは耳を疑って、ゆっくり振り向いた。ベレンがいた。本物のベレンだ。信じられない。
「お誕生日おめで…」ベレンは文章を終えることができなかった。
ヒロシは急にベレンに近づいて、ギュッと抱きしめた。
「ずっと会いたかった」とヒロシはベレンにだけ聞こえるように囁いた。
「私も」
二人はしばらく抱きしめたまま、動かなかった。
二人きりになったベレンとヒロシはカラオケ館の前のベンチに座っていた。
「ごめん」とヒロシは言った。
「…?」
「最近失敗ばかりだ。この遠距離恋愛もうまくいかなかった」
「そんなことないよ」
「だって、思ったより難しい。いや、難しいっていうより、つらい」
「確かにね」とベレンは頷いた。
「時間が長ければ長いほど、距離感も深く感じるようになる」
「付き合っているけど、想像的なお付き合いみたい」
「だよね」
「そして、共通の目標がなくて」
「共通の目標はないのか?」とヒロシは少し驚いた顔をした。
ベレンは少し黙ってから、そう言った。
「私は大学を卒業する必要がある。それが私の目標だ。君は進学したいでしょ?それが君の目標だ。一緒にいるために、私は卒業してから日本に戻るはずだ。でも、それは共通の目標になれないでしょ。しかも、戻れるかどうかわからないし、日本で何をするのかもわからない。とにかく、私達は将来の計画がないでしょ」
別れたくないけど、別れたほうがいいかもとベレンは寂しく考えた。
「待って、待って。共通の目標があるじゃないか」
ベレンはわからない顔をした。
「どんな目標?」
「一緒にいること」
ベレンは彼に顔を向けた。マジでヒロシも別れたくないのか。
「しかも、進学はもう問題ではない。不合格だから」
「でも、もう一回入試してみてもいいよ」
「いいけど、するつもりはない」
ベレンの目が丸くなった。
「なんで?」
「なんでって。他の将来の計画を立てたいから。ベレンと一緒にね」
ベレンの心がドキドキした。
「そして、卒業してから、スペイン語の勉強に集中しようと思っている」
ベレンはそれを聞いて、思わず微笑み始めた。
「それをするために一番いいところはスペイン語が話されている国だろ」とヒロシは続けた。
「例えば、アルゼンチン?」とベレンは笑った。
「確かに!アルゼンチンはピッタリ!」
ベレンとヒロシは見つめ合いながら、笑った。
4か月ぐらい離れ離れだった彼らにとって、とても喜ばしい瞬間だった。そして、何よりもまた離れることを恐れた。
「今日も月が綺麗ですね」とヒロシは小さな声で言った。
ベレンは月を見ずに、答えた。
「死んでもいいよ」