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『心の旅』続編:愛のタペストリー
9月
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Coming soon!
「今日は何をした?」
スマホのがめんにヒロシの顔が見えた。ほんとうにベレンにとってはまだ「今日」だったけど、ヒロシにとっては「きのう」だった。時間のさが12時間で、ヒロシの月曜日の朝なら、ベレンのところではまだ日曜日の夜だった。ベレンはかこに生きていたようだ。
「まあ、午前中はバイトだった。その後は姉とこうえんへ花を見に行った。それからりょうしんとバーベキューをした。めっちゃ春の雰囲気だね」
「なんかなれないな」とヒロシはわらった。
「9月なのに、アルゼンチンには春っていうことに?」
「うん。アルゼンチンのきせつはぎゃくだと知っているけれど、やっぱりじっさいに聞くとふしぎなかんじ」
いつのまにかベレンのりゅうがくが終わった。ヒロシとつきあって半年くらいだったけど、先月アルゼンチンに帰った。日本にいた間、ほとんど毎日ヒロシに会ったり、メッセージのやりとりをしたりした。ヒロシとすごした時間は愛でいっぱいで、しあわせな時だった。アルゼンチンにもどってからも、何もかわらなかったとベレンは思った。いつも通り、毎日メッセージやビデオでれんらくをとっていた。
「ヒロシは?」
「そうだね。きのうはシフトの後、入試のじゅんびをした。今日もつづけようと思っている」
ヒロシはさいきん勉強にむちゅうになった。しんがくの試験について話すと、すぐなやんでいる顔をした。
「あっ、たしかにね。10月の何日でしたっけ?」
「試験は10月15日、めんせつは16日」
「そっか。まだ時間があるから、がんばってね。おうえんするよ」
ヒロシはわらいながら、うなずいた。
ベレンはぎゃくにまだ勉強できなかった。新学期のはじまりに間にあわなかったから。アルゼンチンの学年は3月にはじまる。なので、来年の3月には入学できるけど、今年はもうむりだ。それはしかたがなくて、待つしかないとベレンは思った。その時まで日本にのこれたらよかったのだけど。
「バイトはどうだった?」
「さいあく」ベレンはためいきをついた。
「カフェで働くのは楽しいことが多いけど、ホールの仕事は時々たいへん。今日、どうりょうのソフィアはある男にしつれいなことばかり言われたので、スタッフルームで泣き出したの。」
「へー、さいてい!」ヒロシはびっくりして、目を開いた。
「でしょ?」
「店長は何かしたの?」
「いや、何も。店長のしてんから見ると、大したことないのかも。せっきゃくだから、しょうがないって」
「でも、おたがいのそんけいが大事だね」
たしかにヒロシが言った通り、それが大事だ。でも、カフェで働くと、しつれいな客が多い。店長は何もしないと、スタッフの側からかいけつしなければならない。
「ソフィアはだいじょうぶ?」
「うん。あの男が去った後、ホッとした」
そんなふうにヒロシとほぼ毎日話していた。話せない場合、かんたんでもメッセージのやりとりをした。毎朝「おはよう」、毎晩「おやすみ」というメッセージはしゅうかんとなった。
数日後、しぜんのけしきを見ながら、ベレンは姉とこうえんをさんぽしていた。春のにおいがした。もうコートとかを着なくてもよかったけど、まだ少しすずしかった。なので、ベレンはあたたかい赤いセーターを着ていた。今日の天気にピッタリ。
「ね、ヒロシは元気?」と姉はテーマをかえた。
「うん。元気だと思うけど、さいきん勉強で忙しくなった」
「なるほど。あなたは?」
「…?」ベレンは目をまるくした。
「えんきょり恋愛ってむずかしいでしょ」
「むずかしいけど、思ったよりだいじょうぶかな。すごく会いたいけどね」
「そっか」
「もう2か月ぐらいたったけど、きょりかんとかあまりないし。しかも、彼はお正月にアルゼンチンに来るつもりだから」
「それはいいね!私もヒロシに会いたいよ」
「うん。りょうしんもそう言ってた」
それを聞いて、姉はわらった。
「りょうしんらしいね。私とカルロスがつきあいはじめた時から、母さんはいつも紹介してってしつこくくりかえしていた」
「たしかにね。カルロスってただの彼氏じゃなかったからだ」
「うん。まじめなおつきあいだね。ヒロシもそうだろ」
「まあ、そうかも。たしかにそんなに長いおつきあいってはじめてだ」
姉とカルロスはもう3年間くらいつきあっている。ベレンとヒロシは6か月しかつきあってない。そして、姉とカルロスは同じ国、同じ町に住んでいる。母語も同じだ。ベレンとぜんぜんちがう。ヒロシとのかんけいはまじめなおつきあいと言えるのか。そういえば、まじめかどうかっていうのは、どのようにきまっているのか。おつきあいの長さに左右されるの?おたがいのきぼう、恋のふかさに?きょうつうのもくひょうに?もしまじめではないなら、アルゼンチンにもどる前に、別れたほうがよかったじゃないか。でも、二人とも別れたくなかった。しょうらいの計画もなんとなく作ったし。やっぱりお正月まで後4か月ぐらいだけど、また会えるなら、かちがある。このえんきょり恋愛ってきっとうまくいけるとベレンは思った。ほんとうの愛なら、何でものりこえられるから。きょりは問題にはならない。
スマホのがめんにヒロシの顔が見えた。ほんとうにベレンにとってはまだ「今日」だったけど、ヒロシにとっては「きのう」だった。時間のさが12時間で、ヒロシの月曜日の朝なら、ベレンのところではまだ日曜日の夜だった。ベレンはかこに生きていたようだ。
「まあ、午前中はバイトだった。その後は姉とこうえんへ花を見に行った。それからりょうしんとバーベキューをした。めっちゃ春の雰囲気だね」
「なんかなれないな」とヒロシはわらった。
「9月なのに、アルゼンチンには春っていうことに?」
「うん。アルゼンチンのきせつはぎゃくだと知っているけれど、やっぱりじっさいに聞くとふしぎなかんじ」
いつのまにかベレンのりゅうがくが終わった。ヒロシとつきあって半年くらいだったけど、先月アルゼンチンに帰った。日本にいた間、ほとんど毎日ヒロシに会ったり、メッセージのやりとりをしたりした。ヒロシとすごした時間は愛でいっぱいで、しあわせな時だった。アルゼンチンにもどってからも、何もかわらなかったとベレンは思った。いつも通り、毎日メッセージやビデオでれんらくをとっていた。
「ヒロシは?」
「そうだね。きのうはシフトの後、入試のじゅんびをした。今日もつづけようと思っている」
ヒロシはさいきん勉強にむちゅうになった。しんがくの試験について話すと、すぐなやんでいる顔をした。
「あっ、たしかにね。10月の何日でしたっけ?」
「試験は10月15日、めんせつは16日」
「そっか。まだ時間があるから、がんばってね。おうえんするよ」
ヒロシはわらいながら、うなずいた。
ベレンはぎゃくにまだ勉強できなかった。新学期のはじまりに間にあわなかったから。アルゼンチンの学年は3月にはじまる。なので、来年の3月には入学できるけど、今年はもうむりだ。それはしかたがなくて、待つしかないとベレンは思った。その時まで日本にのこれたらよかったのだけど。
「バイトはどうだった?」
「さいあく」ベレンはためいきをついた。
「カフェで働くのは楽しいことが多いけど、ホールの仕事は時々たいへん。今日、どうりょうのソフィアはある男にしつれいなことばかり言われたので、スタッフルームで泣き出したの。」
「へー、さいてい!」ヒロシはびっくりして、目を開いた。
「でしょ?」
「店長は何かしたの?」
「いや、何も。店長のしてんから見ると、大したことないのかも。せっきゃくだから、しょうがないって」
「でも、おたがいのそんけいが大事だね」
たしかにヒロシが言った通り、それが大事だ。でも、カフェで働くと、しつれいな客が多い。店長は何もしないと、スタッフの側からかいけつしなければならない。
「ソフィアはだいじょうぶ?」
「うん。あの男が去った後、ホッとした」
そんなふうにヒロシとほぼ毎日話していた。話せない場合、かんたんでもメッセージのやりとりをした。毎朝「おはよう」、毎晩「おやすみ」というメッセージはしゅうかんとなった。
数日後、しぜんのけしきを見ながら、ベレンは姉とこうえんをさんぽしていた。春のにおいがした。もうコートとかを着なくてもよかったけど、まだ少しすずしかった。なので、ベレンはあたたかい赤いセーターを着ていた。今日の天気にピッタリ。
「ね、ヒロシは元気?」と姉はテーマをかえた。
「うん。元気だと思うけど、さいきん勉強で忙しくなった」
「なるほど。あなたは?」
「…?」ベレンは目をまるくした。
「えんきょり恋愛ってむずかしいでしょ」
「むずかしいけど、思ったよりだいじょうぶかな。すごく会いたいけどね」
「そっか」
「もう2か月ぐらいたったけど、きょりかんとかあまりないし。しかも、彼はお正月にアルゼンチンに来るつもりだから」
「それはいいね!私もヒロシに会いたいよ」
「うん。りょうしんもそう言ってた」
それを聞いて、姉はわらった。
「りょうしんらしいね。私とカルロスがつきあいはじめた時から、母さんはいつも紹介してってしつこくくりかえしていた」
「たしかにね。カルロスってただの彼氏じゃなかったからだ」
「うん。まじめなおつきあいだね。ヒロシもそうだろ」
「まあ、そうかも。たしかにそんなに長いおつきあいってはじめてだ」
姉とカルロスはもう3年間くらいつきあっている。ベレンとヒロシは6か月しかつきあってない。そして、姉とカルロスは同じ国、同じ町に住んでいる。母語も同じだ。ベレンとぜんぜんちがう。ヒロシとのかんけいはまじめなおつきあいと言えるのか。そういえば、まじめかどうかっていうのは、どのようにきまっているのか。おつきあいの長さに左右されるの?おたがいのきぼう、恋のふかさに?きょうつうのもくひょうに?もしまじめではないなら、アルゼンチンにもどる前に、別れたほうがよかったじゃないか。でも、二人とも別れたくなかった。しょうらいの計画もなんとなく作ったし。やっぱりお正月まで後4か月ぐらいだけど、また会えるなら、かちがある。このえんきょり恋愛ってきっとうまくいけるとベレンは思った。ほんとうの愛なら、何でものりこえられるから。きょりは問題にはならない。
「今日は何をした?」
スマホの画面にヒロシの顔が映った。実際にベレンにとってはまだ「今日」だったけど、ヒロシにとっては「昨日」だった。時差が12時間で、ヒロシの月曜日の朝なら、ベレンのところではまだ日曜日の夜だった。ベレンはまるで過去に生きていたようだ。
「まあ、午前中はバイトだった。その後は姉と公園へ花を見に行った。それから両親とバーベキューをした。めっちゃ春の雰囲気だね」
「なんか慣れないな」とヒロシは笑った。
「9月なのに、アルゼンチンには春っていうことに?」
「うん。アルゼンチンの季節は逆だと知っているけれど、やっぱり実際に聞くと不思議な感じ」
いつの間にかベレンの留学の期間が終わった。ヒロシと付き合って半年くらいだったけど、先月アルゼンチンに帰国した。日本にいた間、ほとんど毎日ヒロシに会ったり、メッセージ交換をしたりした。ヒロシとの日々は愛に溢れて、幸せな時間だった。アルゼンチンに戻ってからも、何も変わらなかったとベレンは感じた。いつも通り、毎日メッセージやビデオコールで連絡をとっていた。
「ヒロシは?」
「そうだね。昨日はシフトの後、入試の準備をした。今日も続けようと思っている」
ヒロシは最近勉強に夢中になった。進学の試験について話すと、すぐ悩んでいる顔をした。
「あっ、確かにね。10月の何日でしたっけ?」
「執筆試験は10月15日、面接は16日」
「そっか。まだ時間があるから、がんばってね。全力で応援するよ」
ヒロシは微笑みながら、頷いた。
ベレンは逆にまだ勉強できなかった。新学期の始まりに間に合わなかったから。アルゼンチンの学年は3月に始まる。なので、来年の3月には入学できるけど、今年はもう無理だ。それは仕方がなくて、待つしかないとベレンは思った。その時まで日本に残れたら良かったのだけど。
「バイトはどうだった?」
「最悪」ベレンはため息をついた。
「カフェで働くのは楽しいことが多いけど、ホールの仕事は時々大変。今日、同僚のソフィアはある男に失礼なことばかり言われたので、スタッフルームで泣き出したの。」
「へー、最低!」ヒロシはびっくりして、目を開いた。
「でしょ?」
「店長は何かしたの?」
「いや、何も。店長の視点から見ると、大したことないのかも。接客だから、しょうがないって」
「接客でも、お互い尊敬し合うことが大事だね」
ベレンは黙って頷いた。確かにヒロシが言った通り、お互いの尊敬が大事だ。でも、接客業では失礼な客が多い。店長は何もしないと、なんとかホールの側から対応して、解決しなければならない。
「ソフィアは大丈夫?」
「うん。あの男が去った後、ホッとした」
そんな風にヒロシとほぼ毎日話していた。話せない場合、簡単でもメッセージ交換をした。毎朝「おはよう」、毎晩「おやすみ」というメッセージは習慣となった。
数日後、自然の景色を見ながら、ベレンは姉と公園を散歩していた。春の匂いがした。もうコートとかを着なくてもよかったけど、まだ少し涼しかった。なので、ベレンは暖かい赤いセーターを着ていた。今日の天気にピッタリ。
「ね、ヒロシは元気?」と姉はテーマを変えた。
「うん。元気だと思うけど、最近勉強で忙しくなった」
「なるほど。あなたは?」
「…?」ベレンは目を丸くした。
「遠距離恋愛って難しいでしょ」
「難しいけど、思ったより大丈夫かな。すごく会いたいけどね」
「そっか」
「もう2か月ぐらい経ったけど、距離感とかあまりないし。しかも、彼はお正月にアルゼンチンに来るつもりだから」
「それはいいね!私もヒロシに会いたいよ」
「うん。両親もそう言ってた」
それを聞いて、姉は口元が緩んだ。
「両親らしいね。私とカルロスが付き合い始めた時から、母さんはいつも紹介してってしつこく繰り返していた」
「確かにね。カルロスってただの彼氏じゃなかったからだ」
「うん。真面目なお付き合いだね。ヒロシもそうだろ」
「まあ、そうかも。確かにそんなに長いお付き合いって初めてだ」
ベレンは顔を背けた。姉とカルロスはもう3年間くらい付き合っている。ベレンとヒロシは6か月しか付き合ってない。しかも、姉とカルロスは同じ国、同じ町に住んでいる。母語も同じだ。ベレンと全然違う。ヒロシとの関係は真面目なお付き合いと言えるのか。そういえば、真面目かどうかっていうのは、どのように決まっているのか。お付き合いの期間に左右されるの?あるいは、お互いの希望、恋の深さに?共通の目標の有無に?もし真面目ではないなら、アルゼンチンに戻る前に、別れたほうがよかったじゃないか。でも、二人とも別れたくなかった。将来の計画もなんとなく作ったし。やっぱりお正月まで後4か月ぐらいだけど、また会えるなら、価値がある。この遠距離恋愛ってきっとうまくいけるとベレンは感じた。真実の愛なら、何でも乗り越えられるから。距離は障害にはならない。
スマホの画面にヒロシの顔が映った。実際にベレンにとってはまだ「今日」だったけど、ヒロシにとっては「昨日」だった。時差が12時間で、ヒロシの月曜日の朝なら、ベレンのところではまだ日曜日の夜だった。ベレンはまるで過去に生きていたようだ。
「まあ、午前中はバイトだった。その後は姉と公園へ花を見に行った。それから両親とバーベキューをした。めっちゃ春の雰囲気だね」
「なんか慣れないな」とヒロシは笑った。
「9月なのに、アルゼンチンには春っていうことに?」
「うん。アルゼンチンの季節は逆だと知っているけれど、やっぱり実際に聞くと不思議な感じ」
いつの間にかベレンの留学の期間が終わった。ヒロシと付き合って半年くらいだったけど、先月アルゼンチンに帰国した。日本にいた間、ほとんど毎日ヒロシに会ったり、メッセージ交換をしたりした。ヒロシとの日々は愛に溢れて、幸せな時間だった。アルゼンチンに戻ってからも、何も変わらなかったとベレンは感じた。いつも通り、毎日メッセージやビデオコールで連絡をとっていた。
「ヒロシは?」
「そうだね。昨日はシフトの後、入試の準備をした。今日も続けようと思っている」
ヒロシは最近勉強に夢中になった。進学の試験について話すと、すぐ悩んでいる顔をした。
「あっ、確かにね。10月の何日でしたっけ?」
「執筆試験は10月15日、面接は16日」
「そっか。まだ時間があるから、がんばってね。全力で応援するよ」
ヒロシは微笑みながら、頷いた。
ベレンは逆にまだ勉強できなかった。新学期の始まりに間に合わなかったから。アルゼンチンの学年は3月に始まる。なので、来年の3月には入学できるけど、今年はもう無理だ。それは仕方がなくて、待つしかないとベレンは思った。その時まで日本に残れたら良かったのだけど。
「バイトはどうだった?」
「最悪」ベレンはため息をついた。
「カフェで働くのは楽しいことが多いけど、ホールの仕事は時々大変。今日、同僚のソフィアはある男に失礼なことばかり言われたので、スタッフルームで泣き出したの。」
「へー、最低!」ヒロシはびっくりして、目を開いた。
「でしょ?」
「店長は何かしたの?」
「いや、何も。店長の視点から見ると、大したことないのかも。接客だから、しょうがないって」
「接客でも、お互い尊敬し合うことが大事だね」
ベレンは黙って頷いた。確かにヒロシが言った通り、お互いの尊敬が大事だ。でも、接客業では失礼な客が多い。店長は何もしないと、なんとかホールの側から対応して、解決しなければならない。
「ソフィアは大丈夫?」
「うん。あの男が去った後、ホッとした」
そんな風にヒロシとほぼ毎日話していた。話せない場合、簡単でもメッセージ交換をした。毎朝「おはよう」、毎晩「おやすみ」というメッセージは習慣となった。
数日後、自然の景色を見ながら、ベレンは姉と公園を散歩していた。春の匂いがした。もうコートとかを着なくてもよかったけど、まだ少し涼しかった。なので、ベレンは暖かい赤いセーターを着ていた。今日の天気にピッタリ。
「ね、ヒロシは元気?」と姉はテーマを変えた。
「うん。元気だと思うけど、最近勉強で忙しくなった」
「なるほど。あなたは?」
「…?」ベレンは目を丸くした。
「遠距離恋愛って難しいでしょ」
「難しいけど、思ったより大丈夫かな。すごく会いたいけどね」
「そっか」
「もう2か月ぐらい経ったけど、距離感とかあまりないし。しかも、彼はお正月にアルゼンチンに来るつもりだから」
「それはいいね!私もヒロシに会いたいよ」
「うん。両親もそう言ってた」
それを聞いて、姉は口元が緩んだ。
「両親らしいね。私とカルロスが付き合い始めた時から、母さんはいつも紹介してってしつこく繰り返していた」
「確かにね。カルロスってただの彼氏じゃなかったからだ」
「うん。真面目なお付き合いだね。ヒロシもそうだろ」
「まあ、そうかも。確かにそんなに長いお付き合いって初めてだ」
ベレンは顔を背けた。姉とカルロスはもう3年間くらい付き合っている。ベレンとヒロシは6か月しか付き合ってない。しかも、姉とカルロスは同じ国、同じ町に住んでいる。母語も同じだ。ベレンと全然違う。ヒロシとの関係は真面目なお付き合いと言えるのか。そういえば、真面目かどうかっていうのは、どのように決まっているのか。お付き合いの期間に左右されるの?あるいは、お互いの希望、恋の深さに?共通の目標の有無に?もし真面目ではないなら、アルゼンチンに戻る前に、別れたほうがよかったじゃないか。でも、二人とも別れたくなかった。将来の計画もなんとなく作ったし。やっぱりお正月まで後4か月ぐらいだけど、また会えるなら、価値がある。この遠距離恋愛ってきっとうまくいけるとベレンは感じた。真実の愛なら、何でも乗り越えられるから。距離は障害にはならない。