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心の旅
後悔しないように
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ドキドキしたベレンはうちを出た。アカリとヒロシが恋人関係ではないということを知って、ヒロシに必ず自分の気持ちを伝えることにした。そして、アカリと相談したおかげで、かなり自信がついた。「ほんとうにそばにいたいなら、しっかり好きって伝えないとね。じゃないと後でこうかいするよ」とアカリの言葉だった。ずっとその言葉がベレンの頭の中でくり返されていた。絶対にこうかいしたくない。だから、きのうヒロシにメッセージを送って、一緒にお花見を見に行こうとさそった。
公園の入り口のとなりに黒のメガネをかけていて、柔らかな笑顔のヒロシがいた。彼の顔をみて、ベレンも思わずほほえんだ。
「今日は天気がいいね。お花見にピッタリ」
久しぶりに聞いたようななつかしい声だった。
「ならよかった」
この間あまり連絡を取らなかったけど、きょりを全然全然感じなかったヒロシとベレンは話しながら、公園に入った。世界はピンクになったみたい。周りがすべてさくらだった。すっかり開いたさくらはまるでピンクの雲のようだった。ベレンにとって初めての光景だ。もちろん春がきてから、あっちこっちでさくらの木を見たけど、今のさくらと全然違う印象だった。ヒロシと一緒のさくらと。
席を見つけて、一緒に美しいさくらを見ながら、話し続けていた。目を合わせた二人はほほえみあった。
「さそってくれてありがとう」とヒロシが言った。
「会えてうれしい」
「私もうれしい」とベレンが答えた。
「最近いろいろあって、連絡はちゃんと取らなくてごめんね。」
「えっ?なんで急に。別にあやまらなくてもいいよ。時々だれでも忙しい時があるでしょ」とヒロシの優しい声だった。
「どうかしたの?」
「ううん。ただ考えなくてはいけないことがあって」
「たとえば?」
「まあ、将来のこととか」とべレンは少し考えてから答えた。
「数か月後、アルゼンチンに帰るね。」
ヒロシは目をふせて、うなずいた。
「しかも、アルゼンチンでは大学を卒業しないといけないね。卒業してから進学するかしゅう職するかまだ決めていないし。とにかく、日本にまた行けるかどうか、わからない。もちろん家族や友だちがなつかしくて、会いたいけど、今はもう少し長く日本にいたらいいなと思っているの」
「そうか。難しいんだね」ヒロシは真面目そうな顔をした。
「日本にいたいっていう特別な理由があるの?」
ベレンが静かになった。心臓が大きく鳴っている。理由って。君の側にいたいからと答えたら?
「あるかもしれないし、ないかもしれない」とベレンの答えだった。
「将来のことを心配しているから、どうすればいいか決められない。何もできないっていう感じかな」
「わかる?」
ヒロシは何かを考えているようだったが、少しだまってから、そう答えた。
「わかるよ。将来のことってやっぱり難しいよね。だが、将来ははっきりしない点が多くて、コントロールもできないから、今悩んでも、意味がないんじゃないか」
「過去も同じだ。もう変わらないので、心配しても、しなくても、結果は同じ」
「だから、実際にコントロールできるのは現在のことだけなんだ。いつも将来について心配すれば現在の人生はどうなるか。」
「今、ここでの人生に集中しなければならないとぼくは思っている」
ベレンはだまったままヒロシが言っていることを聞いた。確かに「今・ここ」に生きているのは大事だ。
二人はまた目を合わせた。
「ありがとう」とベレンが答えた。ヒロシの顔は明るくなった。
夕方になったので、こう園はだんだん暗くなってきた。明るく光っている星と月が出てきた。さくらの並木はもうあまり見えなくなったのに、ベレンとヒロシはさくらの木の下で話し続けていた。ヒロシは空を見て小さな声で言った。
「星空がすごくすてきだな」
ベレンは少しだまってから、彼のほうに顔を向けた。
「ね、ヒロシ」
「ん?」
「月がきれいですね」
時間が止まったようで、世界には二人しかいない感覚になった。ヒロシは月を見ずに、答えた。
「死んでもいいよ」
二人は手をつないで、そのままさくらの木の下に座っていた。
公園の入り口のとなりに黒のメガネをかけていて、柔らかな笑顔のヒロシがいた。彼の顔をみて、ベレンも思わずほほえんだ。
「今日は天気がいいね。お花見にピッタリ」
久しぶりに聞いたようななつかしい声だった。
「ならよかった」
この間あまり連絡を取らなかったけど、きょりを全然全然感じなかったヒロシとベレンは話しながら、公園に入った。世界はピンクになったみたい。周りがすべてさくらだった。すっかり開いたさくらはまるでピンクの雲のようだった。ベレンにとって初めての光景だ。もちろん春がきてから、あっちこっちでさくらの木を見たけど、今のさくらと全然違う印象だった。ヒロシと一緒のさくらと。
席を見つけて、一緒に美しいさくらを見ながら、話し続けていた。目を合わせた二人はほほえみあった。
「さそってくれてありがとう」とヒロシが言った。
「会えてうれしい」
「私もうれしい」とベレンが答えた。
「最近いろいろあって、連絡はちゃんと取らなくてごめんね。」
「えっ?なんで急に。別にあやまらなくてもいいよ。時々だれでも忙しい時があるでしょ」とヒロシの優しい声だった。
「どうかしたの?」
「ううん。ただ考えなくてはいけないことがあって」
「たとえば?」
「まあ、将来のこととか」とべレンは少し考えてから答えた。
「数か月後、アルゼンチンに帰るね。」
ヒロシは目をふせて、うなずいた。
「しかも、アルゼンチンでは大学を卒業しないといけないね。卒業してから進学するかしゅう職するかまだ決めていないし。とにかく、日本にまた行けるかどうか、わからない。もちろん家族や友だちがなつかしくて、会いたいけど、今はもう少し長く日本にいたらいいなと思っているの」
「そうか。難しいんだね」ヒロシは真面目そうな顔をした。
「日本にいたいっていう特別な理由があるの?」
ベレンが静かになった。心臓が大きく鳴っている。理由って。君の側にいたいからと答えたら?
「あるかもしれないし、ないかもしれない」とベレンの答えだった。
「将来のことを心配しているから、どうすればいいか決められない。何もできないっていう感じかな」
「わかる?」
ヒロシは何かを考えているようだったが、少しだまってから、そう答えた。
「わかるよ。将来のことってやっぱり難しいよね。だが、将来ははっきりしない点が多くて、コントロールもできないから、今悩んでも、意味がないんじゃないか」
「過去も同じだ。もう変わらないので、心配しても、しなくても、結果は同じ」
「だから、実際にコントロールできるのは現在のことだけなんだ。いつも将来について心配すれば現在の人生はどうなるか。」
「今、ここでの人生に集中しなければならないとぼくは思っている」
ベレンはだまったままヒロシが言っていることを聞いた。確かに「今・ここ」に生きているのは大事だ。
二人はまた目を合わせた。
「ありがとう」とベレンが答えた。ヒロシの顔は明るくなった。
夕方になったので、こう園はだんだん暗くなってきた。明るく光っている星と月が出てきた。さくらの並木はもうあまり見えなくなったのに、ベレンとヒロシはさくらの木の下で話し続けていた。ヒロシは空を見て小さな声で言った。
「星空がすごくすてきだな」
ベレンは少しだまってから、彼のほうに顔を向けた。
「ね、ヒロシ」
「ん?」
「月がきれいですね」
時間が止まったようで、世界には二人しかいない感覚になった。ヒロシは月を見ずに、答えた。
「死んでもいいよ」
二人は手をつないで、そのままさくらの木の下に座っていた。
ドキドキしたベレンはうちを出た。アカリとヒロシが恋人同士ではないということを知って、ヒロシに必ず自分の気持ちを伝えることにした。そして、アカリと相談したおかげで、大分自信がついた。「ほんとうにそばにいたいなら、ちゃんと好きって伝えないとね。じゃないと後で後悔するよ」とアカリの言葉だった。ぐるぐるとその言葉がベレンの頭の中で繰り返されていた。絶対に後悔したくない。なので、きのうヒロシにメッセージを送って、一緒にお花見を見に行こうと誘った。
公園の入り口の隣に黒縁メガネをかけていて、柔らかな笑顔のヒロシがいた。彼の顔をみて、ベレンも思わず微笑んだ。
「今日は天気がいいね。お花見にピッタリ」
久しぶりに聞いたような懐かしい声だった。
「ならよかった」
この間あまり連絡を取らなかったけど、距離を全然感じなかったヒロシとベレンは話しながら、公園に入った。世界はピンクになったみたい。見渡す限り桜だった。満開の桜の樹冠はまるでピンクの雲のようだった。ベレンにとって初めての光景だ。もちろん春がきてから、あっちこっちで桜の木を見たけど、今の桜と全然違う印象だった。ヒロシと一緒の桜と。
席を見つけて、一緒に美しい桜を見ながら、話し続けていた。目を合わせた二人は微笑みあった。
「誘ってくれてありがとう」とヒロシが言った。
「会えて嬉しい」
「私も嬉しい」とベレンが答えた。
「最近いろいろあって、連絡はちゃんと取らなくてごめんね。」
「えっ?なんで急に。別に謝らなくてもいいよ。時々誰でも忙しい時があるでしょ」とヒロシの優しい声だった。
「どうかしたの?」
「ううん。ただ考えないといけないことがあって」
「たとえば?」
「まあ、将来のこととか」とヘレンは少し考えてから答えた。
「数か月後、アルゼンチンに帰るね。」
ヒロシは目を伏せて、頷いた。
「しかも、アルゼンチンでは大学を卒業しないといけないね。卒業してから進学するか就職するかまだ決めていないし。とにかく、日本にまた行けるかどうか、わからない。もちろん家族や友だちが懐かしくて、会いたいけど、今はもう少し長く日本にいたらいいなと思っているの」
「そうか。難しいんだね」ヒロシは真面目そうな顔をした。
「日本にいたいっていう特別な理由があるの?」
ベレンが静かになって、心臓がバクバクした。理由って。君の側にいたいからと答えたら?
「あるかもしれないし、ないかもしれない」とベレンの答えだった。
「将来のことを心配しているから、どうすればいいか決められない。何もできないっていう感じかな」
「わかる?」
ヒロシは思案顔で何かを考えているようだったが、少し黙ってから、そう答えた。
「わかるよ。将来のことってやっぱり難しいよね。だが、将来は曖昧な点が多くて、コントロールもできないから、今悩んでも、意味がないんじゃないか」
「過去も同じだ。もう変わらないので、心配しても、しなくても、結果は同じ」
「だから、実際にコントロールできるのは現在のことだけなんだ。いつも将来について心配すれば現在の人生はどうなるか。」
「今、ここでの人生に集中しなければならないと僕は思っている」
ベレンは黙ったままヒロシが言っていることを聞いた。確かに「今・ここ」に生きているのは大事だ。
二人はまた目を合わせた。
「ありがとう」とベレンが答えた。ヒロシの顔は明るくなった。
夕暮れになったので、公園はだんだん暗くなってきた。キラキラ光っている星と月が出てきた。桜の並木はもうあまり見えなくなったのに、ベレンとヒロシは桜の木の下で話し続けていた。ヒロシは空を見て小さな声で言った。
「星空がすっごい素敵だな」
ベレンは少し黙ってから、彼のほうに顔を向けた。
「ね、ヒロシ」
「ん?」
「月が綺麗ですね」
時間が止まったようで、世界には二人しかいない感覚になった。ヒロシは月を見ずに、答えた。
「死んでもいいよ」
二人は手を繋いで、そのまま桜の木の下に座っていた。
公園の入り口の隣に黒縁メガネをかけていて、柔らかな笑顔のヒロシがいた。彼の顔をみて、ベレンも思わず微笑んだ。
「今日は天気がいいね。お花見にピッタリ」
久しぶりに聞いたような懐かしい声だった。
「ならよかった」
この間あまり連絡を取らなかったけど、距離を全然感じなかったヒロシとベレンは話しながら、公園に入った。世界はピンクになったみたい。見渡す限り桜だった。満開の桜の樹冠はまるでピンクの雲のようだった。ベレンにとって初めての光景だ。もちろん春がきてから、あっちこっちで桜の木を見たけど、今の桜と全然違う印象だった。ヒロシと一緒の桜と。
席を見つけて、一緒に美しい桜を見ながら、話し続けていた。目を合わせた二人は微笑みあった。
「誘ってくれてありがとう」とヒロシが言った。
「会えて嬉しい」
「私も嬉しい」とベレンが答えた。
「最近いろいろあって、連絡はちゃんと取らなくてごめんね。」
「えっ?なんで急に。別に謝らなくてもいいよ。時々誰でも忙しい時があるでしょ」とヒロシの優しい声だった。
「どうかしたの?」
「ううん。ただ考えないといけないことがあって」
「たとえば?」
「まあ、将来のこととか」とヘレンは少し考えてから答えた。
「数か月後、アルゼンチンに帰るね。」
ヒロシは目を伏せて、頷いた。
「しかも、アルゼンチンでは大学を卒業しないといけないね。卒業してから進学するか就職するかまだ決めていないし。とにかく、日本にまた行けるかどうか、わからない。もちろん家族や友だちが懐かしくて、会いたいけど、今はもう少し長く日本にいたらいいなと思っているの」
「そうか。難しいんだね」ヒロシは真面目そうな顔をした。
「日本にいたいっていう特別な理由があるの?」
ベレンが静かになって、心臓がバクバクした。理由って。君の側にいたいからと答えたら?
「あるかもしれないし、ないかもしれない」とベレンの答えだった。
「将来のことを心配しているから、どうすればいいか決められない。何もできないっていう感じかな」
「わかる?」
ヒロシは思案顔で何かを考えているようだったが、少し黙ってから、そう答えた。
「わかるよ。将来のことってやっぱり難しいよね。だが、将来は曖昧な点が多くて、コントロールもできないから、今悩んでも、意味がないんじゃないか」
「過去も同じだ。もう変わらないので、心配しても、しなくても、結果は同じ」
「だから、実際にコントロールできるのは現在のことだけなんだ。いつも将来について心配すれば現在の人生はどうなるか。」
「今、ここでの人生に集中しなければならないと僕は思っている」
ベレンは黙ったままヒロシが言っていることを聞いた。確かに「今・ここ」に生きているのは大事だ。
二人はまた目を合わせた。
「ありがとう」とベレンが答えた。ヒロシの顔は明るくなった。
夕暮れになったので、公園はだんだん暗くなってきた。キラキラ光っている星と月が出てきた。桜の並木はもうあまり見えなくなったのに、ベレンとヒロシは桜の木の下で話し続けていた。ヒロシは空を見て小さな声で言った。
「星空がすっごい素敵だな」
ベレンは少し黙ってから、彼のほうに顔を向けた。
「ね、ヒロシ」
「ん?」
「月が綺麗ですね」
時間が止まったようで、世界には二人しかいない感覚になった。ヒロシは月を見ずに、答えた。
「死んでもいいよ」
二人は手を繋いで、そのまま桜の木の下に座っていた。