Coming soon!
「わぁ!すてきなアパートですね」とベレンは高橋の新しい部屋を見ながら、言った。
「ほんとう?うれしい」と高橋はふだん通り、ねこのようにほほえんだ。
鬼女がきえた時から、2か月ぐらいすぎた。高橋はやっと東京に引っこしできたので、ベレンはあそびに行った。彼女たちはお茶を飲んだり、イチゴのケーキを食べたりしながら、話した。
「村は今どうですか」とベレンはたずねた。
「みんな元気だよ。ベレンのおかげで」
「いやいや」
「ほんとうのことを言うだけさ。とてもあぶなかったけれど、ベレンのおかげで、のろいがなくなったんだよ」
ベレンはあの夜を思い出した。やっぱり、佐那とともにのろいもきえてしまった。そして、ベレンがむすんだけいやくも切れた。
「でも、高橋さんは力をうしなってしまいましたね」
「それはいいことじゃん。もういらないから。そして、やっと村からはなれるようになったんだよ」
「あのう、森でくるしんでいたたましいはどうなったと思いますか」
「きっとじゆうになったと思うよ。ベレンもそれをかんじたでしょ。けいやくがむこうになったこと」
ベレンはうなずいた。それから、森で見た血のなみだだらけの男の人、土をほっていた女の人、鬼女をさがしている旅館からの奥さんについて考えた。じゆうになることができて、へいわを見つけられたらいいなとベレンは思った。
「ちなみに、私は村の人にすべて教えてあげた。佐那のストーリーも、ベレンがしたことも。多くの人は佐那のかなしいうんめいについてあまり知らなかったから」
「そうなの?」
「うん、のろいと鬼女について知った人はいたけれども、かこにあった出来事について知っている人はむかしのころからいなくなって。人はね、時間がたてばたつほど忘れてしまうだろ。だから、そもそも佐那は鬼女になる前に人だったって知っていた人、そもそも鬼になった理由を知っていた人はいなかったかも」
「そっか」
「だから、しんじつを知った村の人は、佐那の家のそばに、小さな記念碑(きねんひ:特別なことをわすれないために建てた石)を建てることにした。みんなわすれないように」
「それはいいですね」
高橋はためいきをついて、手で顔をかくした。
「どうかしましたか」とベレンは心配そうに言った。
「いや、べつに。しあわせだもん。これから人生がはじまるって気がするよ」と高橋の目からなみだがおちて、彼女はほほえんだ。
「わぁ!素敵なアパートですね」とベレンは高橋の新しい部屋を見学しながら、言った。
「本当?うれしい」と高橋は普段通り、猫のように微笑んだ。
鬼女が消えた時から、2か月ぐらい経った。高橋はやっと東京に引っ越しできたので、ベレンは遊びに行った。彼女たちはお茶を飲んだり、イチゴのケーキを食べたりしながら、話した。
「村は今どうですか」とベレンは尋ねた。
「みんな元気だよ。ベレンのおかげで」
「いやいや」
「そんなに卑下しないでね。非常に危なかったけれど、ベレンのおかげで、呪いがなくなったんだよ」
ベレンはあの夜を思い出して、ため息をついた。やっぱり、佐那とともに呪いも消えてしまった。そして、ベレンが結んだ契約も切れたと感じた。
「でも、高橋さんは超能力を失ってしまいましたね」
「それはいいことじゃん。もう要らないから。そして、やっと村から離れるようになったんだよ」
「あのう、森で苦しんでいた魂はどうなったと思いますか」
「きっと解放されたと思うよ。ベレンもそれを感じたでしょ。契約が解除されたこと」
ベレンは頷いた。それから、森で見た血の涙だらけの男の人、永遠に土を掘っていた女の人、鬼女を探している旅館からの奥さんの姿が頭の中に浮かんだ。解放できて、平和を見つけられたらいいなとベレンは思った。
「ちなみに、私は村人にすべて教えてあげた。佐那のストーリーも、ベレンがしたことも。多くの人は佐那の悲劇についてあまり知らなかったから」
「そうなの?」とベレンは首をかしげた。
「うん、呪いと鬼女の存在について知った人はいたけれども、過去にあった出来事について知っている人は昔のころからいなくなって。人間はね、時間が経てば経つほど忘れてしまうだろ。だから、そもそも佐那は鬼女になる前に人だったって知っていた人、そもそも鬼になった理由を知っていた人はいなかったかも」
「そっか」
「だから、真実を知った村人は、佐那の家の側に、小さな記念碑を建てることにした。みんな忘れないように」
「それはいいですね」
高橋はため息をついて、手で顔を隠した。
「どうかしましたか」とベレンは心配そうに言った。
「いや、別に。幸せだもん。これから人生が始まるって気がするよ」と高橋の目から涙がこぼれて、彼女は微笑んだ。