Coming soon!
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山本博士は石川先生からエマの話を聞いて、びっくりしました。そして、ぜひエマの話を聞きたいと言いました。エマは、コンピューターをとおして山本博士と話すことができました。
「エマさん、お話を聞きました。私の仮説のように、剣が平泉にあったのですね。」
「はい。金色のはこに入っていました。金色のはこは三つありました。」
「そうですか。手紙のことは何かわかりましたか。」
「いいえ、手紙のことはわかりませんでした。けれども、義経が剣を平泉に持ってきたといううわさは、おばさんから聞きました。」
「そうですか。エマさんの話からかんがえると、私の仮説はかなり正しそうですね。」
「はい。私は博士の仮説を信じます。」
「いえ、そう言いきらないほうがいいですね。エビデンスがありませんから。」
「でも、博士はこの仮説が正しいと思って発表されたんですよね。」
「100%正しいとは思っていません。歴史の研究では、エビデンスがなければ、やはり正しいとは言えないでしょう。それに、エビデンスがあっても、あとでちがうエビデンスが出てくることもあります。そして、エビデンスをどのようにかんがえるかは人によってちがうこともあります。」
「では、100%正しい歴史はないのでしょうか。」
「きびしく言えば、そういうことになります。ですから、歴史を勉強する人はとくにそれをよくかんがえて、研究をつづけなければなりません。」
「そうなんですね。よくわかりました。」
「私もエマさんのふしぎなけいけんが聞けて、よかったです。この仮説から、さらに研究をすすめたいと思います。」
「博士のおかげで、鎌倉時代についてもっときょうみが出てきました。私も研究してみたいと思います。」
「それじゃ、ときどきいっしょに研究しませんか。」
「えっ、いいんですか?」
「もちろんです。」
「うれしいです。ぜひよろしくお願いします。」
エマは博士から歴史の見方を聞いて、とても勉強になったと思いました。そして、いっしょに研究できることを本当にうれしいと思いました。
そのあと、紙や字の専門家たちが義経の手紙をしらべて、本物だと言えそうだと言いました。それで、歴史学者たちも歴史の新しい見方ができるかもしれないと言うようになりました。山本博士は名前にきずがつくことはありませんでした。
エマは源頼朝(みなもとのよりとも)や義経(よしつね)について、ふかく研究するようになりました。義経が書いたお経(きょう)などもさがしています。石川先生にアドバイスをもらったり、山本博士とコンピューターをとおして話し合ったりしています。このようにして研究していくうちに、エマはだんだん歴史の研究のしかたがわかってきました。少しずつ自信(じしん)がついてきました。
山本博士が言ったように、博士の勇気(ゆうき)のある発表から研究が広がっていったのです。
エマがむかしの平泉の中尊寺金色堂で見た剣はどうなったのか――このことは今もまだわかっていません。剣の秘密(ひみつ)はまだ解(と)き明かされていないのです。けれども、いいえ、だから、エマはむかしの平泉のことを思い出しながら、今日もいろいろな資料(しりょう)をさがして研究しています。あの時、どうして急にむかしの平泉に行ったのか、剣があるところにつれて行ってくれたけむりは何だったのか、とふしぎに思いながら……