Coming soon!
Coming soon!
5日後、体育館のドアを開けて、迷彩服に身を包んだ人がハキハキと叫んだ。
「お待たせしました!陸上自衛隊、第十三普通科連隊です!」
ついに南側の道路が開通し、自衛隊車両が救援にやってきたのだ。各部で道が寸断しており、大型車両が救援に来られるようになるまでに随分時間がかかった。
小谷小学校の避難所を見た連隊長が、驚いたように話した。
「今までいくつも災害救援をしてきましたが、避難所の人たちがこれほどまでに自主的に生活基盤を構築しているのは初めて見ました」
「何より驚いたのが、避難所の人々があまり家に帰っていない、という点です。停電はしていても、やはり落ち着いた家で過ごしたい人が多いはずですが、ここはそうではないようですね。それだけこの避難所が居心地の良い場所、ということでしょうか…」
その通りだった。皆で協力して食料や物資を集め、皆で調理し、ご飯を食べる。たったそれだけのことで避難者たちは団結し、数日間も共同生活を営んできたのだ。
被害も落ち着いてきたし、明日には停電も解消されるということで、家への帰宅を促しても、
「いやあ、もちろん家もいいんだけど、ここも中々よくて…何より飯が美味いから…」
そう言って家への帰宅を渋る人たちが多い。
「ったく、しょうがねえなあ…」
ヤスさんはそう言ってニヤニヤと笑うと、紙にさらさらと何か書いてベレンに渡した。
「手間かけて悪いんだが、これ、放送しといてくれ」
中身を一通り読んだベレンは、クスっと笑ってヤスさんに言った。
「了解です!放送してきます」
『避難所の皆さん、ここで重要な連絡です。この避難所の料理長、村一番の料理人であるヤスさんが営業する食堂「まんぷく」が明日から営業再開します』
『帰れる人はちゃんと家に帰って、美味しいご飯が食べたいときはいつでも「まんぷく」に来てください。待ってます!なお、これが避難所としては最後の放送になります。皆さんお元気で!』
体育館では、どこからともなく拍手が上がった。
その日の夕方には、殆どの人が避難所から自宅へと帰った。
皆で助け合って危機を乗り越えたこの村は強い。きっと、台風の爪痕が残る現状からも、力強く復興するだろう。
ベレンはふと、そんな風に思った。
山間の村を、夏の風が吹き抜けた。