Coming soon!

　すぐに一週間が過ぎた。
　ルシアがアルゼンチンに帰る日がやってきた。

　それで帰る前の日に、二人で浅草寺せんそうじに遊びに行こうとベレンが提案ていあんした。
　「またいつ来るかもわからないから、せめて帰る前に楽しく過ごそう。」
　「いつか、今回日本に来た時のことを思い出すとき、花火大会はなびたいかいで大喧嘩おおげんかしたことしか思い出せないって言ってほしくないから。」
　ベレンは冗談じょうだん半分に言った。　
　すると、ルシアはやわらかく笑った｡
　｢わかった､そうしよう｡｣

　そして今回の旅の最後に、二人は浅草寺せんそうじを訪おとずれた。

　東京都台東区とうきょうとたいとうくにある浅草寺せんそうじは、1400年以上の歴史れきしを持つ東京都で最も古いお寺てらであり、有名な観光地かんこうちのひとつでもある。浅草寺と言えば、「雷門かみなりもん」を想像そうぞうする人が多いだろう。実際は、お寺てらの中には「雷門かみなりもん」のほかに、五重塔ごじゅうのとうや伝法院でんぼういんなど、歴史れきしを感じられる場所もたくさんある。そのうち、飲食店いんしょくてんやお土産屋みやげやなど90以上のお店がならんでいる「仲見世通なかみせどおり」もある。毎年日本や海外から3000万人以上の人が訪おとずれている。

　「こんなに人が…」
　「さすがだね…」
　目の前の人混ひとごみに、ルシアは思わずおどろいたような声を出した。
　浅草寺はいつも観光客かんこうきゃくが多いことを知っていたので、二人はあえて平日に来たのだが、それでもこの状況じょうきょうは想像以上そうぞういじょうだった。
　「人気のある場所だから仕方ないね。」
　「日本の中だけでなく、海外から来る人も多いんだから。」
　「まあゆっくり回ろう。」
　ルシアはうなずいた。

　ベレンと打ち解け、長い間気になっていたことがスッキリしたようで、ルシアはいつもより機嫌きげんがよさそうだった。しばらく歩くと、ルシアの手にはすでに人形焼にんぎょうやきや吉備団子きびだんご、アルゼンチンに持って帰るお土産みやげがいっぱいだった。
　「帰る前に買ったら？これから参拝さんぱい（お寺てらに行き、神様においのりすること）にいくからじゃまじゃない。」
　「問題ない！」
　「これ食べる？人形焼にんぎょうやきっていうみたいだけど、すごくおいしいの！」
　ルシアは言いながら、手に持っている人形焼にんぎょうやきをベレンに差し出した。
　「私はいいんだ。ルシアは食べな。」
　なんか、今日は楽しい一日になりそう。
　そう思うと、ベレンも気分がかるくなった気がする。

　しばらく歩いた後、二人はようやく本堂（お寺の中心となる場所）についた。
　「参拝さんぱいの作法さほう、まだおぼえている？まずお賽銭さいせん（お寺に納おさめるお金）を入れて、それから手を合わせてお辞儀じぎ、もう一度かるくお辞儀じぎ。順番通じゅんばんどおりにやらないと。」
　「あと、願ねがいごともわすれないでね！」
　「わかってる。」
　ベレンの話が終わる前に、ルシアはすでに用意していたお金を賽銭箱さいせんばこに投げて入れた。
　これからもベレンとずっと友達でいられますように。
　ルシアは手を合わせて目を閉じ、心の中で謙虚けんきょにいのった。

　「はい！終わり！」
　ルシアは目を開けた。
　「何を願ねがったの？」
　「教えない！」
　ルシアはベレンに向けてあかんべえをし、走って行った。

　その後、二人はおみくじ所に向かった。
　「もし凶きょうとか出たらどうしよう…」
　ルシアは緊張きんちょうしながら、おみくじが入っている筒つつを見つめた。
　「もし凶きょうが出たら、あそこに結べばいい。」
　「弱気よわきにならないで。」
　ベレンは軽くルシアの背中をたたいた。
　普通、お寺や神社じんじゃでおみくじを引く時、「吉きち」なら家に持って帰り、「凶きょう」なら決められた場所に結んでのこすのが習慣しゅうかんだ。
　「大丈夫だいじょうぶだから、早く引いて！」
　すると、ルシアはしかたなく、こわがりながら筒つつを手に取ってふった。
　「37…」
　「ここだ。」
　ルシアは棒ぼうを筒つつにもどし、37と書いてある引き出しを開け、一枚のおみくじを取った。
　「どう？」
　ベレンは頭を寄せてきた。
　「半吉はんきち…」
　「これはどういう意味？いいのか？悪いのか？」
　ベレンもわからないようだ。
　「どうだろう…悪くないっていうことかな？」

　おみくじのうらにも文字が書かれているので、ルシアはおみくじのうらをめくって英語の説明を読んだ。そして、にやりと笑みを浮かべた。
　それを見ると、ベレンは気になって尋たずねた。
　「どうした？何が書いてあるの？」
　ルシアは少し笑いながら首をふり、おみくじを後ろに置いた。
　「どうやら私の運も悪くないみたい。」

　あっ需、ルシアの手にはすでに人形焼きや吉備団子、アルゼンチンに持ち帰るお土産がいっぱいだった。
　「帰る前に買ったら？これから参拝にいくから邪魔じゃない。」
　「問題ない！」
　「これ食べる？人形焼きっていうみたいだけど、めっちゃおいしいの！」
　ルシアは言いながら、手に持っている人形焼きをベレンに差し出した。
　「私はいいんだ。ルシアは食べな。」
　なんか、今日は楽しい一日になりそう。
　そう思うと、ベレンも気分が軽くなった気がする。

　しばらく歩き回った後、二人はようやく本堂についた。
　「参拝の作法、まだ覚えている？まずお賽銭を入れて、それから手を合わせて一礼、さらに軽く一礼。順番通りにやらないと。」
　「後、願い事も忘れないでね！」
　「わかってるって。」
　ベレンの話が終わる前に、ルシアはすでに用意していた硬貨を賽銭箱に投げ入れた。
　これからもベレンとずっと仲良しでいられますように。
　ルシアは手を合わせて目を閉じ、心の中で敬虔に祈った。

　「はい！終わり！」
　ルシアは目を開けた。
　「何を願ったの？」
　「教えない！」
　ルシアはベレンに向けてあかんべえをし、走り去った。

　その後、二人はおみくじ所に向かった。
　「もし凶とか出たらどうしよう…」
　ルシアは緊張しながら、おみくじが入っている筒を見つめた。
　「もし凶が出たら、あそこに結べばいい。」
　「ビビるな。」
　ベレンは軽くルシアの背中を叩いた。
　普通、お寺や神社でおみくじを引く時、「吉」なら家に持ち帰り、「凶」なら指定された場所に結んで残すのが習わしだ。
　「大丈夫だから、早く引いて！」
　すると、ルシアはしかたなく、びくびくしながら筒を手に取って振った。
　「37…」
　「ここだ。」
　ルシアは棒を筒に戻し、37と書いてある引き出しを開け、一枚のおみくじを取った。
　「どう？」
　ベレンは頭を寄せてきた。
　「半吉…」
　「これってどういう意味？いいのか？悪いのか？」
　ベレンもわからないようだ。
　「どうだろう…悪くないっていうことかな？」

　おみくじの裏にも文字が書かれているので、ルシアはおみくじの裏をめくって英語の説明を読んだ。そして、にやりと笑みを浮かべた。
　それを見ると、ベレンは気になって尋ねた。
　「どうした？何が書いてあるの？」
　ルシアは微笑みながら首を振り、おみくじを後ろに置いた。
　「どうやら私の運も悪くないみたい。」