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心の旅
はじまり
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Coming soon!
ベレンが蝉の鳴き声にいやになりながら大学のキャンパスを散歩していると、とあるポスターが見えた。国際交流イベントがあります!来てください。それにはスペイン語で話すことのできるイベントもあった。丁度ベレンは日本に来て3週間目で、日本にも慣れてきた。だから何か始めたいと考えていた。よし、これにしよう。すぐに、スペイン語の国際交流イベントの下に書いてある電話番号に電話をかけて、イベントに出ることにした。
「もしもし」
「もしもし」
声の低い女の声だった。
「こんにちは。スペイン語の国際交流イベントに出たいと考えているのですが。どういったイベントですか?」
ベレンは楽しみと心配でドキドキしていた。ジェスチャーなしで、日本語で伝えられるかが心配で仕方がなかった。
「スペイン語を勉強している学生とスペイン語を話すことのできる学生が、1週間に一度集まってスペイン語や日本語で会話をしながら違う文化を理解していくイベントです。日本語の勉強になります。」
「是非、出たいです」
ベレンはやる気を出してそう言った。
「わかりました。名前と学年と学部を教えていただけますか?」
「国際総合学類3年生のベレンです」
「留学生の方でしょうか?」
「はい。アルゼンチンから来ました」
「では、ベレンさんはスペイン語を話すことができるのでしょうか?」
「はい。そうです」
「わかりました。次のイベントは今週の木曜日の午後3:00からです。来ることができますか?」
「はい!」
「準備するものは何も無いです」
「はい」
「では、国際棟 3階で待っています」
「失礼します」
このように上手くいくとは思っていなかった。楽しみすぎるベレンは頭の中でどんなことを話そうかと笑顔になった。
とうとう、国際交流イベントに出る木曜日になった。ベレンは、いつもよりやる気を出して朝の準備をし、バスに乗った。会場に向かったが降りるバス停を間違えてしまったのだろうか、場所はここであっているはずなのに会場をなかなか見つけることができない。あと10分で始まってしまう。ベレンはどうしたものかと道の真ん中で、行ったり来たりしていた。すると、向こうから来たスピードの出し過ぎた自転車に乗った男から
「じゃま!横に行って」
とベルをチリンチリン鳴らしながら怒られた。ベレンは急いで道の横の方によった。ベレンの気持ちは曇り始めた。スマホの地図を見るとここが国際棟のはずだ。どうすることもできなくて困っていると、向こうから自転車に乗った男が来た。その男が
「何か困っていることがありますか?」
と話してきた。その男は、機械でわざと日焼けしたのではないかと思うほど色黒で洗練された黒縁メガネをかけていた。白い歯がますます目立っている。
「国際棟の場所がわからないので、教えてもらえませんか」
「おれもちょうど行こうとしていました」
ベレンは少しあやしく思った。その男はベレンの気持ちを読むように、
「今日スペイン語の国際交流イベントに出るんです。もしかすると、あなたもそうなんじゃないですか?」
「そうです」
「やっぱり。そうだと思いました。国際棟はここから、まっすぐ進んで、右にある薄い黄色の建物です。」
「ありがとうございます。」
日本人は冷たい人ばかりだと思っていたけれど、そうではないのかもと気持ちが晴れた。
ベレンは時間をかけながら、イベント会場についた。会場にはもう20人ぐらいの人が集まっていて、5〜6人くらいのグループで席に座って話し始めていた。ベレンは人が足りないグループに入れてもらった。ベレンこの会に出ながら、久しぶりに聞くスペイン語でこきょうのことを考えていた。家族にも会いたいけれど猫のココにも会いたいな……。会は、40分ぐらいで終わった。終わって、一休みするとすぐに親切な男が話してきた。
「今日、道で会いましたね。おれは、理学部化学科3年のヒロシです。
よろしくお願いします」
ベレンは、
「私は、アルゼンチンから来ました。国際総合学科の3年生です。留学生です。よろしくお願いします」
と少しあわてて答えた。
すると、ヒロシのとなりにいた短い髪の女が
「私は、文学部ラテンアメリカ文化科の3年生のアカリです。しゅみは、野球を見ることです。よろしくお願いします」
と明るい声で言った。
ヒロシは、
「アカリが、今日道でベレンさんに会ったことを話したら、ベレンさんと話したいって。」
と言った。
「後ろの席だから、ベレンさんがアルゼンチンから来たと聞こえて。アルゼンチンからの留学生が今日来るとこのイベントの人から聞いたんだ。」
「なるほど。」
「同じ学年だね。よろしくね。アルゼンチンの美味しい料理について教えて欲しいな。」
「ええと」
ベレンは急に聞かれてどう答えていいのか迷った。けれどすぐに、笑って話し始めた。
「アルゼンチンには美味しいものがたくさんあります。例えば、エンパナーダはすごくおいしいです。パイで肉、魚、野菜、チーズを包んで食べるんです」
ベレンは、自分で作ったエンパナーダの写真をアカリとヒロシに見せた。
「すごく美味しそう。」
「日本の美味しいご飯は何かありますか?」
ヒロシは少し迷いながら、
「みんなが言うと思うけど、スシかな?」
と言った。
「何それ。すごく普通。私は、茶碗蒸し!」
と、アカリはつよく話す。
「スシですか?名前は聞いたことはありますが、食べたことはないです」
ベレンは、白いご飯に魚がのった料理を考えた。
「じゃあさ、今度一緒にスシ食べにいかない?スシ食べながら、アルゼンチンについて色々教えてよ」
ベレンは、日本についてもっと知りたかったし、アカリとは気が合いそうだと思って
「いいよ!」
と、とても笑って答えた。
「じゃあ、連絡先を教えて!」
3人はSNSの友達登録をした。ベレンは、スマホの新しい友達にアカリとヒロシの名前があるのを見て、楽しい気分になった。
「もしもし」
「もしもし」
声の低い女の声だった。
「こんにちは。スペイン語の国際交流イベントに出たいと考えているのですが。どういったイベントですか?」
ベレンは楽しみと心配でドキドキしていた。ジェスチャーなしで、日本語で伝えられるかが心配で仕方がなかった。
「スペイン語を勉強している学生とスペイン語を話すことのできる学生が、1週間に一度集まってスペイン語や日本語で会話をしながら違う文化を理解していくイベントです。日本語の勉強になります。」
「是非、出たいです」
ベレンはやる気を出してそう言った。
「わかりました。名前と学年と学部を教えていただけますか?」
「国際総合学類3年生のベレンです」
「留学生の方でしょうか?」
「はい。アルゼンチンから来ました」
「では、ベレンさんはスペイン語を話すことができるのでしょうか?」
「はい。そうです」
「わかりました。次のイベントは今週の木曜日の午後3:00からです。来ることができますか?」
「はい!」
「準備するものは何も無いです」
「はい」
「では、国際棟 3階で待っています」
「失礼します」
このように上手くいくとは思っていなかった。楽しみすぎるベレンは頭の中でどんなことを話そうかと笑顔になった。
とうとう、国際交流イベントに出る木曜日になった。ベレンは、いつもよりやる気を出して朝の準備をし、バスに乗った。会場に向かったが降りるバス停を間違えてしまったのだろうか、場所はここであっているはずなのに会場をなかなか見つけることができない。あと10分で始まってしまう。ベレンはどうしたものかと道の真ん中で、行ったり来たりしていた。すると、向こうから来たスピードの出し過ぎた自転車に乗った男から
「じゃま!横に行って」
とベルをチリンチリン鳴らしながら怒られた。ベレンは急いで道の横の方によった。ベレンの気持ちは曇り始めた。スマホの地図を見るとここが国際棟のはずだ。どうすることもできなくて困っていると、向こうから自転車に乗った男が来た。その男が
「何か困っていることがありますか?」
と話してきた。その男は、機械でわざと日焼けしたのではないかと思うほど色黒で洗練された黒縁メガネをかけていた。白い歯がますます目立っている。
「国際棟の場所がわからないので、教えてもらえませんか」
「おれもちょうど行こうとしていました」
ベレンは少しあやしく思った。その男はベレンの気持ちを読むように、
「今日スペイン語の国際交流イベントに出るんです。もしかすると、あなたもそうなんじゃないですか?」
「そうです」
「やっぱり。そうだと思いました。国際棟はここから、まっすぐ進んで、右にある薄い黄色の建物です。」
「ありがとうございます。」
日本人は冷たい人ばかりだと思っていたけれど、そうではないのかもと気持ちが晴れた。
ベレンは時間をかけながら、イベント会場についた。会場にはもう20人ぐらいの人が集まっていて、5〜6人くらいのグループで席に座って話し始めていた。ベレンは人が足りないグループに入れてもらった。ベレンこの会に出ながら、久しぶりに聞くスペイン語でこきょうのことを考えていた。家族にも会いたいけれど猫のココにも会いたいな……。会は、40分ぐらいで終わった。終わって、一休みするとすぐに親切な男が話してきた。
「今日、道で会いましたね。おれは、理学部化学科3年のヒロシです。
よろしくお願いします」
ベレンは、
「私は、アルゼンチンから来ました。国際総合学科の3年生です。留学生です。よろしくお願いします」
と少しあわてて答えた。
すると、ヒロシのとなりにいた短い髪の女が
「私は、文学部ラテンアメリカ文化科の3年生のアカリです。しゅみは、野球を見ることです。よろしくお願いします」
と明るい声で言った。
ヒロシは、
「アカリが、今日道でベレンさんに会ったことを話したら、ベレンさんと話したいって。」
と言った。
「後ろの席だから、ベレンさんがアルゼンチンから来たと聞こえて。アルゼンチンからの留学生が今日来るとこのイベントの人から聞いたんだ。」
「なるほど。」
「同じ学年だね。よろしくね。アルゼンチンの美味しい料理について教えて欲しいな。」
「ええと」
ベレンは急に聞かれてどう答えていいのか迷った。けれどすぐに、笑って話し始めた。
「アルゼンチンには美味しいものがたくさんあります。例えば、エンパナーダはすごくおいしいです。パイで肉、魚、野菜、チーズを包んで食べるんです」
ベレンは、自分で作ったエンパナーダの写真をアカリとヒロシに見せた。
「すごく美味しそう。」
「日本の美味しいご飯は何かありますか?」
ヒロシは少し迷いながら、
「みんなが言うと思うけど、スシかな?」
と言った。
「何それ。すごく普通。私は、茶碗蒸し!」
と、アカリはつよく話す。
「スシですか?名前は聞いたことはありますが、食べたことはないです」
ベレンは、白いご飯に魚がのった料理を考えた。
「じゃあさ、今度一緒にスシ食べにいかない?スシ食べながら、アルゼンチンについて色々教えてよ」
ベレンは、日本についてもっと知りたかったし、アカリとは気が合いそうだと思って
「いいよ!」
と、とても笑って答えた。
「じゃあ、連絡先を教えて!」
3人はSNSの友達登録をした。ベレンは、スマホの新しい友達にアカリとヒロシの名前があるのを見て、楽しい気分になった。
ベレンが蝉の鳴き声にうんざりしながら大学構内を散歩していると、とあるポスターが目に映った。国際交流イベント開催!参加者募集中。それにはスペイン語対応のイベントもあった。丁度ベレンは日本に来て3週間目で、日本にも慣れてきたところだったので何か始めたいと考えていた。よし、これにしよう。早速、スペイン語の国際交流イベントの下に載っている電話番号に電話をかけて、申し込むことにした。
「もしもし」
「もしもし」
声の低い女の声だった。
「こんにちは。スペイン語の国際交流イベントに参加したいと考えているのですが。どういったイベントですか?」
ベレンは期待と不安でドキドキしていた。ジェスチャーなしで、日本語で意思疎通ができるのかが不安で仕方がなかった。
「スペイン語学習者とスペイン語話者が、週に一度集まってスペイン語や日本語で会話をしながら異文化理解を深めていくイベントです。日本語の勉強になりますよ。」
「是非、参加したいです」
ベレンは身を乗り出してそう言った。
「わかりました。名前と学年と所属組織を教えていただけますか?」
「国際総合学類3年生のベレンです」
「交換留学生の方でしょうか?」
「はい。アルゼンチンから来ました」
「では、ベレンさんはスペイン語が喋れるのでしょうか?」
「はい。そうです」
「わかりました。次の活動は今週の木曜日の午後3:00からです。来れますか?」
「はい!」
「準備するものは何も無いです」
「はい」
「では、国際棟3階でお待ちしております」
「失礼します」
こんなに上手くいくなんて。楽しみが抑えられないベレンは頭の中でどんなことを話そうかと自然と笑みがこぼれた。
ついに、国際交流イベント開催曜日の木曜日がやってきた。ベレンは、いつもより張り切って身支度をし、バスに乗った。会場に向かったが降りるバス停を間違えてしまったのだろうか、場所はここであっているはずなのに会場が一向に見当たらない。あと10分で始まってしまう。ベレンはどうしたものかと道の真ん中で、右往左往していた。すると、向こうからやってくる猛スピードの自転車に乗った男から
「邪魔!端によって」
とベルをチリンチリン鳴らしながら怒鳴られた。ベレンは慌てて道の端の方によった。ベレンの気持ちはどんよりとし始めた。スマホで、確認するとここが国際棟のはずだ。どうしようもなくて途方に暮れていると、向こうから自転車に乗った男がやってきた。その男が
「何か困っていることがありますか?」
と話しかけてきた。その男は、日焼けサロンに行っているのではないかと思うほど色黒でモダンな黒縁メガネをかけていた。白い歯が一層際立っている。
「国際棟の場所がわからないので、教えてもらえませんか」
「俺もちょうど行くところです」
ベレンは少し怪訝に思った。その男はベレンの気持ちを見透かすように、
「今日スペイン語の国際交流イベントに参加するんです。もしかして、あなたもそうなんじゃないですか?」
「そうです」
「やっぱり。そんな感じがしました。国際棟はここから、まっすぐ進んで、右にあるクリーム色の建物です。」
「ありがとうございます。」
日本人って冷たい人ばかりだと思っていたけど、案外そうではないのかもと気持ちが晴れた。
ベレンはなんとかして、イベント会場についた。会場には既に20人程度の参加者が集まっており、5〜6人くらいのグループで席に座り交流を始めていた。ベレンは人が足りないグループに入れてもらった。ベレンは交流会に参加しながら、久しぶりに聞くスペイン語で故郷のことを考えていた。家族にも会いたいけど猫のココにも会いたいな……。交流会は、約40分で終わった。終わって、一息つくとすぐに親切な男が話しかけてきた。
「今日、道で会いましたね。俺は、理学部化学科3年のヒロシです。よろしくお願いします」
ベレンは、
「私は、アルゼンチンから来ました。国際総合学科の3年生です。交換留学生です。よろしくお願いします」
と少しドギマギして答えた。
すると、ヒロシの隣にいた短髪の女が
「私は、文学部ラテンアメリカ文化科の3年生のアカリです。趣味は、野球観戦です。よろしくお願いします」
と明るい声で言った。
ヒロシは、
「アカリが、今日道でベレンさんに会ったことを話したら、ベレンさんと話したいって。」
と言った。
「後ろの席だから、ベレンさんがアルゼンチンから来たって聞こえて。アルゼンチンからの交換留学生が今日来るってこのイベントの代表から聞いたんだ。」
「そうなんですね。」
「同学年だしよろしくね。アルゼンチンの美味しい料理について教えて欲しいな。」
「うーん」
ベレンはいきなり聞かれて少し戸惑った。けれどすぐに、笑顔で話し始めた。
「アルゼンチンには美味しいものがたくさんあります。例えば、エンパナーダなんてすごくおいしいですよ。パイで肉、魚、野菜、チーズを包んで食べるんです」
ベレンは、自分で作ったエンパナーダの写真をアカリとヒロシに見せた。
「すごく美味しそう。」
「日本で、おすすめのご飯は何かありますか?」
ヒロシは少し悩みながら、
「すごく鉄板だけど、スシかな?」
と首をかしげながら言った。
「何それ。すごく普通。私は、茶碗蒸し!」
と、アカリはつよい口調で話す。
「スシですか?名前は聞いたことはありますが、食べたことは一度もないです」
ベレンの頭の中に、白いご飯に魚がのった料理が浮かんできた。
「じゃあさ、今度一緒にスシ食べにいかない?スシ食べながら、アルゼンチンについて色々教えてよ」
ベレンは、日本についてもっと知りたかったし、アカリとは気が合いそうな感じがして
「いいよ!」
と満面の笑顔で答えた。
「じゃあ、連絡先教えて!」
3人はSNSの友達登録を済ませた。ベレンは、スマホの新しい友達にアカリとヒロシの名前が表示されるのを見て、心が浮き立った。
「もしもし」
「もしもし」
声の低い女の声だった。
「こんにちは。スペイン語の国際交流イベントに参加したいと考えているのですが。どういったイベントですか?」
ベレンは期待と不安でドキドキしていた。ジェスチャーなしで、日本語で意思疎通ができるのかが不安で仕方がなかった。
「スペイン語学習者とスペイン語話者が、週に一度集まってスペイン語や日本語で会話をしながら異文化理解を深めていくイベントです。日本語の勉強になりますよ。」
「是非、参加したいです」
ベレンは身を乗り出してそう言った。
「わかりました。名前と学年と所属組織を教えていただけますか?」
「国際総合学類3年生のベレンです」
「交換留学生の方でしょうか?」
「はい。アルゼンチンから来ました」
「では、ベレンさんはスペイン語が喋れるのでしょうか?」
「はい。そうです」
「わかりました。次の活動は今週の木曜日の午後3:00からです。来れますか?」
「はい!」
「準備するものは何も無いです」
「はい」
「では、国際棟3階でお待ちしております」
「失礼します」
こんなに上手くいくなんて。楽しみが抑えられないベレンは頭の中でどんなことを話そうかと自然と笑みがこぼれた。
ついに、国際交流イベント開催曜日の木曜日がやってきた。ベレンは、いつもより張り切って身支度をし、バスに乗った。会場に向かったが降りるバス停を間違えてしまったのだろうか、場所はここであっているはずなのに会場が一向に見当たらない。あと10分で始まってしまう。ベレンはどうしたものかと道の真ん中で、右往左往していた。すると、向こうからやってくる猛スピードの自転車に乗った男から
「邪魔!端によって」
とベルをチリンチリン鳴らしながら怒鳴られた。ベレンは慌てて道の端の方によった。ベレンの気持ちはどんよりとし始めた。スマホで、確認するとここが国際棟のはずだ。どうしようもなくて途方に暮れていると、向こうから自転車に乗った男がやってきた。その男が
「何か困っていることがありますか?」
と話しかけてきた。その男は、日焼けサロンに行っているのではないかと思うほど色黒でモダンな黒縁メガネをかけていた。白い歯が一層際立っている。
「国際棟の場所がわからないので、教えてもらえませんか」
「俺もちょうど行くところです」
ベレンは少し怪訝に思った。その男はベレンの気持ちを見透かすように、
「今日スペイン語の国際交流イベントに参加するんです。もしかして、あなたもそうなんじゃないですか?」
「そうです」
「やっぱり。そんな感じがしました。国際棟はここから、まっすぐ進んで、右にあるクリーム色の建物です。」
「ありがとうございます。」
日本人って冷たい人ばかりだと思っていたけど、案外そうではないのかもと気持ちが晴れた。
ベレンはなんとかして、イベント会場についた。会場には既に20人程度の参加者が集まっており、5〜6人くらいのグループで席に座り交流を始めていた。ベレンは人が足りないグループに入れてもらった。ベレンは交流会に参加しながら、久しぶりに聞くスペイン語で故郷のことを考えていた。家族にも会いたいけど猫のココにも会いたいな……。交流会は、約40分で終わった。終わって、一息つくとすぐに親切な男が話しかけてきた。
「今日、道で会いましたね。俺は、理学部化学科3年のヒロシです。よろしくお願いします」
ベレンは、
「私は、アルゼンチンから来ました。国際総合学科の3年生です。交換留学生です。よろしくお願いします」
と少しドギマギして答えた。
すると、ヒロシの隣にいた短髪の女が
「私は、文学部ラテンアメリカ文化科の3年生のアカリです。趣味は、野球観戦です。よろしくお願いします」
と明るい声で言った。
ヒロシは、
「アカリが、今日道でベレンさんに会ったことを話したら、ベレンさんと話したいって。」
と言った。
「後ろの席だから、ベレンさんがアルゼンチンから来たって聞こえて。アルゼンチンからの交換留学生が今日来るってこのイベントの代表から聞いたんだ。」
「そうなんですね。」
「同学年だしよろしくね。アルゼンチンの美味しい料理について教えて欲しいな。」
「うーん」
ベレンはいきなり聞かれて少し戸惑った。けれどすぐに、笑顔で話し始めた。
「アルゼンチンには美味しいものがたくさんあります。例えば、エンパナーダなんてすごくおいしいですよ。パイで肉、魚、野菜、チーズを包んで食べるんです」
ベレンは、自分で作ったエンパナーダの写真をアカリとヒロシに見せた。
「すごく美味しそう。」
「日本で、おすすめのご飯は何かありますか?」
ヒロシは少し悩みながら、
「すごく鉄板だけど、スシかな?」
と首をかしげながら言った。
「何それ。すごく普通。私は、茶碗蒸し!」
と、アカリはつよい口調で話す。
「スシですか?名前は聞いたことはありますが、食べたことは一度もないです」
ベレンの頭の中に、白いご飯に魚がのった料理が浮かんできた。
「じゃあさ、今度一緒にスシ食べにいかない?スシ食べながら、アルゼンチンについて色々教えてよ」
ベレンは、日本についてもっと知りたかったし、アカリとは気が合いそうな感じがして
「いいよ!」
と満面の笑顔で答えた。
「じゃあ、連絡先教えて!」
3人はSNSの友達登録を済ませた。ベレンは、スマホの新しい友達にアカリとヒロシの名前が表示されるのを見て、心が浮き立った。